第63話 帰還

次の日の放課後。武活動中キャロルが皆を集める。


「皆さんお待たせ致しておりました、新しい武具が皆の分完成致しましたので配りますわ。まずは沙耶。これをどうぞ」


キャロルは大きなアタッシュケースを沙耶に手渡す。


「ありがとう」


沙耶が開けると、中には新しい銃にナイフ、それにシューズが入っていた。


「今回の新しい武具は、氷雪会長に頂いたクラス3の龍鱗鉱を主に使い作成致しましたわ。銃は沙耶の出力に耐えられるように。双電刃も強化し以前のように簡単に砕けたりしません。靴はインラインスケートをベースに製作いたしましたわ。補助バッテリーを基本に使いつつ、沙耶の放つ電気量によって速度を調整して下さいまし」


「わかった。ありがとう」


「次は大地」


キャロルは大地に手の平サイズのスポンジのような物を渡す。


「何だこれ、スポンジか?」


「特殊培土ですわ。今までリュックに土を入れて、そこから出たツルを使って移動しておりましたが、重い上に土がこぼれてしまう危険がありますので、今度からこれを変わりに使って下さいまし。肥料が切れてたら再び吸わせてやれば何度でも使えますわ。調合は大地の方が詳しいと思いますので、色々試して下さいまし」


「へ~・・・なるほどなぁ・・・。さんきゅーキャロル」


「次は千里ですわ。これを」


キャロルはアタッシュケースを渡す。

その中には沙耶と同じタイプのシューズと手袋が入っていた。


「そのシューズは沙耶の物と同じタイプですが、動力元が熱量になっていますの。そして、その手袋は手の開き度合いによって魔力を集中させる事が出来る代物ですわ」


「あ・・・ありがとう。使ってみるね」


「あとは・・・楓」


「私にもあるの?」


「勿論ですわ。」


そう言って木箱を楓に手渡す。

木箱を開ける楓。


「何これ・・・? どんぐりみたいな・・・ドリル?」


「爆弾ですわ」


『爆弾!?』


皆、思わず大声を上げる。


「キャ・・・キャロルお姉ちゃん・・・私・・・爆弾なんて・・・」


「そのドリルを回転させドラゴンの鱗の隙間にねじ込み、そして中のスイッチを念で押す、そうすれば爆発しダメージを与えられますわ。これからはそれを高速回転させながら自由に動かす訓練をして下さいまし。超念動は強力ですが重い物を浮かすのは負担が大きいですので・・・」


「でも私・・・怖いです・・・」


楓はキャロルに木箱を返そうとするが、キャロルは受け取らない。


「楓。これはもしもの時、貴方自身を守るための物。使わなくても結構ですが、持っておいて下さいまし。もう一度言いますわ。使わなくても結構です」


楓はしぶしぶ引き下がる。


「以上ですわ」


「あれ? 俺のは?」


「守? ああ・・・」


キャロルは借りていたクラス5のガントレットを渡す。


「これをお返ししますわ」


「・・・これ以外は?」


「それ以上の物なんてありませんわよ。さ、皆さん早速使ってみてくださいまし」


「ちょっと待ってくれよ! 俺には何も無いのかよ!?」


「なっ・・・なんですの・・・?」


守はキャロルに詰め寄る。


「姫様に近づくな!」


突然後ろから大きな声がし、一同は振り向く。

そこにはボロボロの制服を着た剣が立っていた。


「剣!?・・・遅かったですわね。一体今までどこをほっつき歩いて・・・」


「離れて下さい姫!」


剣はキャロルと守の間に立ちはだかる。


「剣・・・落ち着いて下さいまし! これには訳が・・・って誰ですのその女性は」


刀を構える剣の背中には、女性が括り付けられていた。その女性はどうやら寝ているようだった。

そこへ誠と咲が現れる。


「何の騒ぎじゃ・・・? おおっ! 剣君ではないか!」


「これは神代元帥殿! その節は失礼致しました」


誠と咲が現れ、剣は跪く。


「良い良い。もう過ぎた事じゃ。それよりその娘は?」


寝ている女性は突然目を覚ます。


「お~・・・強者の臭い~」


「エルダ先生! 目を覚まされたのですか!?」


「降ろして~」


剣はエルダを降ろす。

あくびをしながら腰に下げた刀を抜き、優香に向かってその刀を突きつけた。


「ほう。あの刀は・・・これまた珍しい物を・・・」


その刀は激しく刃こぼれしていて、とても武器としては使い物にならないように見える。


「ええっ!? 私!?」


「ほっほっほ。相手して差し上げなさい優香君」


「・・・はい。」


「安心しろ優香ちゃん。もし殺しちまっても生き帰らせてやっからよ」


咲がニタリと笑う。


「そんな事しませんよ・・・」


優香はエルダに向かって拳を構える。

エルダもそれに対し刀を一度鞘に納めた後、抜刀の構えを取る。

その瞬間、先ほどの眠そうな表情は消え、辺りの空気が一瞬にてひりつく。


「ほう。あの若さで・・・」


「只者じゃねぇなあいつ」


少しの間にらみ合ったの後、エルダが一瞬にて間合いを詰め、優香の足元から真上に切りつける。


(早っ!?)


その一撃をかろうじてかわすが、流れるようにすぐさま真横から刀が迫る。

それをシールドを張った拳でかろうじて受け止めた。しかし、エルダはそのままコマのように回転し、再び同じ場所に切り付ける。

再びガードするが、先ほどの切る攻撃とは違い、刀の重みと回転による威力の上昇を利用した【打】の一撃により、優香の腕は高く跳ね上げられてしまった。


「しまっーー!」


がら空きになった優香の横腹を横薙が襲う。


(ガードが間に合わない!・・・ごめんなさいっ!)


優香は咄嗟に肘と膝で迫る刀を挟み、刀を砕いた。

エルダは一瞬驚くも、その短くなった刀で優香の喉元を狙ったが、その手を優香に摑まれ喉元を捕らえる事は出来なかった。


「そこまでじゃ!」


誠は終了の合図を出す。


「・・・ありがとうございました」


エルダは姿勢を正し、頭を下げる。


「ありがとうございました」


優香もお辞儀を返す。

エルダは座り込み、折れた刀を見つめながらポロポロと泣き出してしまった。


「ご・・・ごめんなさい。咄嗟に砕いてしまって・・・。弁償します。」


そう言って折れた刀身を拾い集めようとしたが、その折れた刀身の一部を持ち上げた優香はその重さに驚く。


(重い・・・これは・・・龍鱗鉱じゃない・・・。鉄?)


「うわ~ん! 又負けた~! どうせ私なんて雑魚剣にしか勝てないへたれなんだ~!」


「・・・エルダ先生! お気を確かに!」


剣が駆け寄りハンカチでエルダの涙を拭く。


「所でお主、その剣術は何処で会得したのじゃ? 最初の地面際からの切り上げる技、あれは抜刀からの横薙ぎが来ると思わせ、意表をついて真下から切り上げる技。【孤月こげつ】であろう?」


エルダはハンカチで鼻水をかみながら誠を見上げる。


「そうだよ・・・。父上が教えてくれたんだい」


「父? なら勘違いかのう・・・父の名を教えてはくれぬか?」


「知らない。でもママは トウゴウ って呼んでた」


誠はその名前を聞いた瞬間目を丸くし、顔に手を当てる。


「どうしたんだジジィ?」


「・・・ハーッハッハ! あやつが子供を作っておったとはな!」


常に冷静な誠にしては珍しく大声でを出して笑った。


「おい、ボケて頭おかしくなっちまったのか?」


エルダは誠を指差す。


「おい! ジジィ! 人の父上の名前を聞いて笑うなんて失礼な奴だな!・・・いてっ!」


咲はエルダの頭を殴り、胸倉を掴み顔を寄せる。


「ジジィをジジィつって良いのはこの俺だけだ。次言ったら殺すぞ」


「よせ咲。いや、これは失礼した。懐かしい名前を聞いたものでなつい。すまんかった。しかし、あやつが外国の方と子供を作るとはのう・・・。お主の母も一緒に住んでおるのか?」


その質問にエルダは少し戸惑うが、目を伏して言う。


「ママはもう居ないよ。13年前にイタリアでドラゴンに殺されちゃった。ママ、軍人だったから」


「そうか・・・悪い事を聞いたのう。お主の父とは古い知り合いでな。その妻の墓に花を供えてあげたいのじゃ。すまんが名前を教えてくれるかのう?」


「ソフィア・・・ソフィア・レオーネ」


その名前を聞いた誠の顔色が変わる。


「なんと! 【西洋の剣姫】と名高いソフィア・レオーネか!? 13年前イタリアに同時現れた2体のクラス4を撃退し自らも命を落としたイタリアの英雄ではないか! なぜそのような女性が守重と・・・歳の差もかなりのもの・・・」


「ほ・・・ほらなジジィ! 愛に年の差は関係ねぇんだぜ! だから俺と・・・」


顔を赤くする咲を無視し続ける誠。


「・・・と・・・にかく花を用意させてもらうぞ」


「無視かよジジィ!」


「ありがとう。ママお花好きだったから」


「・・・最後に一つ。お主の父は今何処に住んでおるのじゃ?」


「えっと・・・剣。あそこ何処?」


「青森のどこかだったと・・・すみません。正確な位置までは分かりません」


「そこまでわかれば良い。感謝する」


「・・・剣。疲れたおんぶして」


エルダは剣に向かって両手を差し出し、おんぶをせがむ。


「エルダ先生・・・少しは自分で歩いて下さいよ・・・」


「うっさーい! アタイの弟子なら師匠のいう事は黙ってきくもんだい!」


「弟子・・・? 剣! あなた・・・師である 藤原ふじわら 鉄斎てっさい師匠を差し置いて、その娘に弟子入りしましたの!? 何考えてますの!?」


剣はエルダをおぶったまま膝をつく。


「姫! これには訳があるのです! あの後、藤原師匠へ修行の申し出に行った所、青森の山奥に東郷という凄腕の剣士がいる、会えるか分からないが探してみろ。と言われまして、探しに探しやっと見つけたのですが、相手にしてもらえず、東郷先生からエルダに教えてもらえと言われましたので、弟子入りした次第です」


「で・・・何でここまで付いて来てますの・・・」


「それは・・・」


「うっさいなーお前・・・剣はアタイの弟子なんだから好きにしていいんだよバーカ!」


キャロルの眉間にシワが寄る。それと同時にすごい剣幕で剣がエルダに言う。


「先生! いくら先生でも姫の悪口は許しませんよ!」


「むぐぅ・・・。だって・・・だって・・・アタイの剣なのに・・・剣の馬鹿ー!」


エルダは剣の背中でヒックヒックと泣き始める。


「まるで子供ですわね・・・」


「はっ。色々と事情がありまして・・・所で姫。エルダ先生が付いて来たのは別にいいのですが・・・その、寝泊りする所が・・・」


「剣の師匠となれば仕方ないですわね・・・屋敷の開いている部屋を一つ使ってもよろしくてよ」


「あ・・・ありがとうございます! 良かったですねエルダ先生!」


「ぐすん。一緒の部屋・・・?」


『違います』


再び泣きそうになるエルダ。


「と・・・とにかく屋敷まで一度連れて行きますので、これにて失礼します」


剣はキャロルと誠に会釈をし歩き出す。


「ねー剣~。今日の晩飯はウサギがいいなー」


「兎肉なんて手に入りませんよ!」


「ヤダー! うーさーぎー!」


そんな会話をしながら立ち去って行った。


「・・・変わった方ですわね・・・」


大地がキャロルに歩み寄り肩を叩く。


「お前が言うなよな!」


「なんですって~・・・!?」


大地を追い回そうとするキャロルを誠が呼び止める。


「キャロル君。少しいいじゃろうか?」


「・・・はい」


グラウンドの端で何やら誠と話し込むキャロル。


「何話してんだろうな? 大地」


「さぁ? とりあえず殴られずに済んでよかったぜ」


「大地君はキャロルちゃんをからかいすぎだよ・・・そのうち嫌われちゃうよ?」


「大丈夫。皆に嫌われても私がいる」


沙耶は大地の袖を握る。


「ありがとな~沙耶!」


大地は沙耶の頭を撫でた。


「あーはいはい。訓練の続きしようぜ千里」


「うん」


「おい! お前ら冷たいな! 俺も訓練やるって!」


大地は駆け足で2人を追った。

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