第247話

「それじゃあ、頑張ってくださいね」

「うん、ありがとう」


 敗者である斎藤さいとうくんはここで退場。勝った50人だけがその場に残り、体育館中央へと集められる。


紅葉くれはも残ったんだね」

「ええ、相手がミスしてくれたおかげだけど」

「向こうにノエルもいる。でも、麗華れいかの姿が見当たらないね」

「負けたんじゃない? 勝負は時の運とも言うし、こればかりは仕方ないわね」

「へぇ、笑わないんだ」

「私をなんだと思ってるのよ。私だってギリギリなのよ、笑うのは優勝してからにするわ」


 2人がそんな会話をしている間、デュエル用の机へ残っているプレイヤー達が描かれた支援者カードが投入され、シャッフル機能を利用した対戦相手決めが行われた。

 カードが排出されて来た順番でランダムに座席を振り分けられ、瑛斗えいとは紅葉と別れて指定のイスに腰を下ろす。


「こちら、新たな支援者カードです」


 そう言って係の人が手渡してきたカードをに目をやると、何故か2枚重なっていた。ここにいないのは麗華だけのはず、渡し間違えたのかな。


「あれ、斎藤くんのカードだ」


 よく見てみれば、先程対戦した斎藤くんが描かれていた。一体どう言うことなのかと混乱していると、またデバイスから声が聞こえてくる。


『2回戦に進出した奴ら、よく聞いておけ。今渡されたカードは、お前らがさっき倒したやつの支援者カードだ』

『つまり、自分の支援者でなくても倒せば手に入るってことですね♪』

『ちなみに、自分の支援者を倒した場合は、同じ支援者カードが2枚手に入る。仲間同士が当たっても悪くはないってことだな』


 なるほど、と瑛斗は心の中で頷いた。

 例えるなら彼が斎藤くんの能力を吸収したようなもの。なかなか男子小学生が喜びそうな展開である。


【何事も学習 斎藤 貴史】

 Cランク 4コスト

 攻撃力300/防御力400

『その手は読めています』

 以下の中からひとつの効果を選択し、次の相手のターン開始時に発動する。


 ・コスト6以上のカードの使用禁止

 ・コスト5以下のカードの使用禁止

 ・敵モンスター一体に状態『混乱』を付与する

 ・ドロー禁止


 これらの効果は相手のターン終了時に消滅し、同時にこのカードは墓地へ送られる。


「これが斎藤くんの能力、使う場面は見極めないとね」


 さすが、支援者カードとテラルクスのコンビネーションを魅せてくれただけある。いかにも策略系の能力だ。

 瑛斗はそのカードを大事にデッキの中へ入れると、2枚目のカードを見て首を傾げた。

 確かに絵に描かれているのは麗華で間違いない。が、名前が何故か麗子れいこになっているのだ。


【勝つためには手段を選ばない 白銀 麗子】

 Sランク 7コスト 設置系

 3ターンの間、1枠を埋める代わりに自分のターン開始時にサイコロを振ることが出来る。その出目によって、以下の効果を発揮する。


 ・出目が2or4の場合

『あなたごとき、私に敵うとお思いで?』

 敵モンスター1体を指名して墓地へ送る。


 ・出目が3or5の場合

『私、オムライスが得意なんですよ?』

 ランダムで自身、もしくは相手のライフを1000回復する。


 ・出目が6の場合

『持たざる者のためにする努力は好みません』

 敵モンスターを1体指名して、対象の防御力をこの試合が終了するまで1000下げる。もしもこの効果で対象の防御力がゼロに場合、そのモンスターは即座に墓地へ送られる。


 ・出目が1の場合

『上辺だけの友達なんて必要ない、ですよね?』

 使用するまで効果未判明。


 尚、3ターン終了時、このカードは墓地へは送らずに引っくり返して再度設置する。


 麗華が麗子になっているのは手違いだろうか。それともわざとだろうか。ひっくり返すというシステムも引っかかるし、手札に来たらなるべく使ってみることにしようかな。


「確認は終わった?」

「ああ、今ちょうど終わったとこ……って……」

「やっと気づいたの? 先輩遅いよ〜♪」


 声をかけられて顔を上げた先にいたのは、なんとカナだった。まさか次の対戦相手が顔見知りだとは思わなかった彼は緊張して――――――――。


「カナ相手なら、すごく楽しめそうだね」

「ふふ、期待は裏切らないからね〜♪」


 ―――――――いや、やる気に満ち溢れていた。

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