第106話 エピローグ

日差しが強い日だ。

ジュドーはギルドへ入った。

受付のレインがいつものように対応する。


「あら、ジュドーさんいらっしゃい!」


レインはジュドーが持つ、魔物の角をみて言葉を続ける。


「依頼の達成報告ですね。

 さすがジュドーさん、仕事が早い」


にこやかなレイン。

ジュドーが言葉を返した。


「おう、ゾームに比べりゃ、この辺の魔物の討伐なんて簡単なもんだ。

 レインちゃん、元気そうだな。

 最近は、大きめの依頼を取りまとめて、冒険者に依頼達成の仕方を伝えてるんだって?」


「ええ!

 プロジェクト・マネジメントですよ!」


「プロジェクトか…

 ヒロは、元気でやってるかな…」


「ギルドからいなくなって1か月ですもんね…」


「ああ、ヒロには助けてもらったからな。

 メグも、見違えるように元気になったし」


「あ、そういえば、今日メグちゃんたちが来るって、連絡ありましたよ。」


レインがジュドーの後方の入り口を見た。


「…噂をすればというやつですね」


ジュドーも後ろを振り向き、入り口に目をやった。


「どうも、こんにちは」


そこには、青年が立っていた。隣にメグがいる。


「レン君。体の調子はどうだ?」


ジュドーは青年に話しかけた。

レン。メグの兄である。


「おかげさまで、もう万全です。

 王宮で仕事ももらえて、とても満足してますよ。

 いろいろジュドーさんもレインさんも、こんな私のために王国に口をきいてくださってありがとうございました。

 ほら、メグも挨拶しな」


そう促されて、メグもジュドーとレインに頭を下げる。


「兄さんが王宮仕えになったのは、兄さんの魔法が優秀だったから。

 ジュドーとレインは関係ない」


メグのその言葉に、レンは困った顔をした。

ジュドーがフォローする。


「相変わらず兄のことになると、厳しいな!

 仲良さそうで、何よりだよ」


メグが、少し顔を赤らめた。


「だって、兄さんは本当にすごい魔導士なんだから…」


レンがメグに言い返す。


「その、兄さんって言い方もどうかと思うんだよ。

 僕は5年間死んでいたんだ。

 5年間歳をとってないから、もうメグと同じぐらいの年齢だよ。

 兄って年じゃないよ」


「ダメ。兄さんは兄さん。」


レインが微笑ましげに言う。


「メグちゃん、良かったね!

 お兄さんが戻ってきて」


メグがうなずいた。

ジュドーが話に入った。


「二人は、今日は何しに来たんだ?」


レンガ答える。


「私の命の恩人を、王宮から連れてきました」


ギルドの入り口から、さらに一つ、人影が現れた。

ジュドーがすかさず声をあげた。


「ヒロ!」



ヒロはこの世界にとどまった。

代わりに、残りの魔力を使って可能な限りの人間を生き返らせた。

ゾームに食べられてしまった人々だ。


ゾームの中に、ヒロの世界で言う遺伝子のようなものが残っており、復元して助けることができた。

助けることができたのは数十人であり、全ての犠牲者、とはいかなかったが。

レンも、助けることができた人間の一人だ。


ヒロはエルザスを倒した後、元の世界に戻るか悩んだ。

だが、泣き崩れるメグを見て、魔力を犠牲者を助けることに使った。

後悔が無いわけではない。

だが、死と隣り合わせのプロジェクトの成功を、ヒロは楽しいと感じてしまったのだ。


もっとこの世界でプロジェクトを…。


そうして、ヒロはとどまる決意をした。

その時、女神ファシュファルが人知れずガッツポーズをしたのは言うまでもない。



「王国の特別プロジェクトの計画が大変で…

 なかなか外に出る暇がなかったんですよ」


そう言ったヒロにレンが続けた。


「ヒロさんはすごいですね。

 聞いたことないような知識で、物事を進めていきます。

 今回の王国の特別の依頼、国王もヒロさんに全面的に任せてますから」


レインが興味津々で話しかける。


「で、ヒロさん!

 どんなプロジェクトなんです?」


「それが、国家の危機でして。

 また、みなさんの力を借りたいんです」


一同、新たなプロジェクト…未知への挑戦の始まりに、不安と期待に包まれた。


★終わり★

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界×プロジェクトマネジメント 爽一郎 @bonzinkun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ