第95話 運用フローと手順を明確にすべし

ヒロは運用について、話を続けた。


「この『ゾームを討伐する仕組み』を維持するために、どんな運用作業が発生するかを考え、それぞれに対して運用フローと手順を明確にしておくこと。

 これが、運用設計と言います。


 兵器や討伐隊を定期的に使っていくと、どんな作業がいると思いますか?」


ランペルツォンが口を開いた。


「そうだな…

 まずはゾームを倒すために兵器を使う、という作業があるな。

 討伐隊も、メンバーは毎回兵士から選別する必要があるだろう。

 ゾームを倒すため、討伐隊のトレーニングも必要だ。


 あとは…

 兵器の定期検査も必要だな。

 いざと言う時に壊れていては目も当てられない」


ヒロはランペルツォンが言った項目を記載していった。

・兵器を使う

・討伐隊のメンバー選定

・討伐隊のトレーニング

・兵器の定期検査



「少なくとも、4つ出ましたね。

 この項目一つ一つについて、次の3つのことをします」


ヒロは再び書き出した。

①作業のトリガーを明確にすること

②作業の運用フローを明確にすること

③手順を明確にすること

 

「まずは作業を開始するトリガーを明確にしましょう。

 トリガーとは、何を条件にこの作業を始めるか、です。

 例えば、『兵器を使う』のトリガーは満月の夜、になります。

 もっと明確には、満月日の16時に開始、とかですね。


 『討伐隊のメンバー選定』であれば、例えば満月の夜の一ヵ月前、とか。

 今回は時間的なトリガーが多いですが、トリガーは他にもいろいろあります。


 例えば、誰かからの依頼、とか。

 もし今後、別の町でゾームが現れれば、兵器を貸し出すようなこともあるかもしれません。

 そうなれば、トリガーは『他の町からの依頼』となる『兵器貸出』という運用作業がでてくることになります」


ランペルツォンがコメントした。


「なるほど。

 何をきっかけに、その作業を行うか、ということだな」


「はい。

 そして、次は運用フローですね。

 運用フローとは、その作業を、誰が、どうすすめるか?を定義した資料です。

 トリガーで発生した仕事をこなす担当やチームを明確にしておきます。

 そうでなければ、作業発生時に、誰がやるんだっけ?ということになってしまいます。

 例えば、『満月の夜の前の点検作業』を例にしましょう。

 トリガーは”満月の夜の3日前になったら”とかになりますね。

 そして、王国兵団の点検担当者がそのトリガーに応じて、手順通りに点検作業をします。

 その時に、不具合、例えば魔道具の魔力が底をついている、などがあれば、魔道具の手配担当に連絡をする、という運用フローを書くのです

 手順は、作業内容をわかるように記載しておくことです。

 兵器を使う、であれば兵器の使い方。マニュアルですね。

 兵器の定期点検も、どんな項目をどう点検するか?を記載します。


 トリガー、運用フロー、手順。

 この三つがそれぞれの運用作業で明確になっていれば、『ゾーム討伐の仕組み』を維持するために誰がいつ何をどうすればよいのか?明確になります。

 これらができたら、王国兵団へ引継ぎ、ということになります」


ランペルツォンが口を開いた。


「プロジェクトが終わった後のことまで考える…

 それが運用と言うことか」


「平たく言えば、そういうことですね。

 プロジェクトが作ったものは、ずっと使える状態でなければ意味はないのですから」


「恐れ入った。

 みな、作るだけ作ってあとはほったらかしだ。

 私は、そういうものだと思っていたが…。

 こんな考え方もあったんだな」


そうして、運用設計も進んでいった。


3度目の満月の夜は、すぐそこまで迫ってきていた。

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