第90話 兵器改修

エルザスのことは気にかかるものの、まずは追加要件である鎧のゾームへの対策を検討しなければならない。

ヒロは臨時会議を開き、プロジェクトメンバーと共に対策を考えた。


ヒロが行ったように、腐食の魔法を鎧にかければよいわけだが、前回と同じ課題が浮かび上がった。


サンダーボルトをどうやってゾームに刺さった矛に当てるのか。

それと同様に、腐食の魔法もゾームの鎧に照準を合わせることが、魔道具では簡単にはできないのだ。


前回の議論同様、メグとマーテルの知識、技能を存分に生かせば、ロックオンの魔法を用いた複雑な処理を行うことはできる。

だが、やはりメンテナンスが困難になってしまう。

結果的に、運用コストが上がる。


ということで、矛と魔道具を直接つないでサンダーボルトを直に流すような、シンプルな方法が必要となった。


ランペルツォンの発案で、単純に矛の射出威力を上げることにした。

鉄を貫くほどの射出力を、魔道具か物理的な細工で追加する。

これなら、兵器に対しての改良はとてもシンプルである。


また、会議の中でヒロはエルザスについて分かったこと皆に伝えた。

メグはその話の間、ずっと俯いていた。

手を見ると、ぎゅっと拳を握りしめており、怒りや悲しみをこらえているかのように、ヒロには思えた。


会議の後、ヒロはメグに声をかけた。


「心境は、どうでしょうか…?

 エルザスは逃がしましたが、重傷を与えました。

 きっと、次の満月には万全の状態とはいかないはずです」


「とても、とても落ち込んだ。

 あいつを逃してしまったことを」


「メグさんの気持ちは、きっと私のような平和に生きてきた人間には100%分かりません。

 でも、憎いとか悔しいという思いは、想像を絶するものだと思います…」


メグは、黙ってうなずいた。

ヒロは言葉を続ける。


「エルザスを倒すには、協力が必要です。

 一人の力では、きっと難しい」


「そうかもしれない。

 私も、一人で戦ってあいつに殺されそうになった」


「私には、あの時のメグさんは冷静さを失っているように見えました。

 仇なんですから、無理もありませんが…次は1人で立ち向かわないように、お願いします。

 私はメンバーを失いたくありません」


これまで死傷した討伐隊のメンバーがヒロの脳裏に浮かんだ。

再び、メグは小さくうなずいた。

そして、ポツリとエルザスのことを話し始めた。


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