第89話 大きなリスク
キラーマンティスをほぼヒロ一人で討伐したため、浮いた費用をゾーム討伐に回すことができる。
レインの奇策で、鎧のゾームへ対策も、無理なく行えることになった。
ヒロをうまく利用したのか、天然なのかはヒロにはわからないが、レインはやはりすごい人材だ。
ヒロはレインに感謝の気持ちを抱きながら、王宮でリーガルから承諾を得た。
その後、王宮に来たついでというわけではないが、賢者ケルンとエルザスについて話した。
ケルンは豊富な知識を持つ。
彼と話すことで、エルザスの謎が少しずつ解けてきた。
エルザスは、ゾームたちを「自分の分身」と言っていた。
ゾームは、エルザスが生み出したものと言うことだ。
ケルンが推測する、エルザスがこの5年で行ったことは、次のようなものだ。
コロシアムで格闘家をしていたが、何らかの理由でパラサイトスペクターに寄生されながらも、エルザスは自我を保った。
そして、メグの兄をさらい、食らったのだろう。
ジャイアントスパイダーを倒し、これまた捕食。
この時点で、ゾームの姿になった。
その後、体の大きなトロールやオーガを捕食。
体を大きくし、さらに自分の個体を増加させるスライムを捕食したのかもしれない。
普通、こんなに多くの特性を得ることはできない。
だが、エルザスはパラサイトスペクターの力が増加する満月の夜を狙って、捕食を繰り返したのだろう。
そうすれば、多くの特性を得られてもおかしくないとケルンは言った。
また、スライムの特性を得たとは言え、こんなに数多くの個体を増やすことはできない。
これもまた、満月の夜に個体数を増やしているのかもしれない。
何にせよ、エルザスの力が最大化し、ゾームたちをうまく操ることができるのはのは、満月の夜なのだろう。
だから、満月の夜に襲撃してくる。
ケルンに礼を言い、ヒロはギルドに戻った。
博識なケルンのおかげで、推測が立った。
エルザスはゾームのボス的存在ということだ。
かつ、プロジェクトとしては大きなリスクである。
なぜなら、エルザスは元々は人間であり、知能がある。
戦略を練って来るかもしれない。
ゾームの討伐方法を要件定義したが、それは陳腐化してしまうかもしれない。
実際、鎧をまとってくる、という追加要件が発生した。
エルザスを何とかしない限り、プロジェクトを終えることはできないように思えた。
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