第13話 プロジェクト現る
グレンダールが話始めた。
「一ヵ月前の夜。シュテリア王国領内の一つの村が、壊滅した。
モンスターの仕業と思われる」
ヒロが眉をしかめつつ、答えた。
「壊滅…ですか」
「村の人間は、ほぼいなくなるか、体が部分的にしか残っていなかった。
モンスターによって、食い殺されたのではないかと考えている。
村には、生きている人間は確認できなかった。
目撃者は一人。たまたま、村への移動が予定より遅くなり、村につくのが夜遅くなった結果、災禍を逃れたようだ。
道中で、遠くで村が襲われるのを見たらしい」
悲惨な状況を想像して、ヒロはさらに顔をしかめた。
「…その村の周辺に、凶悪なモンスターがいるのですか?」
「いや、南に湿地帯があり、そこに多少のモンスターはいるが、人を積極的に襲うようなことはなかった。
キラーマンティスが最近森に現れたことも、もしかするとこのモンスターが現れたがゆえに、逃げてきたのかもしれない。
村には王都から送った兵および魔導士もいたにもかかわらず、モンスターの死骸はなかった。
一方的に全滅させられたということだ。
私は総指揮官として、国の防衛を任されている。
凶悪なモンスターがいるのだとすれば、対処せねばならない。
ただ、一ヵ月このモンスターについて調査をしたが、有効な情報が得られなかった。
…さらに、隣国との緊張関係があり、大きく兵を動かすことができないのだ。
他国を刺激し、戦争になるとモンスターではなく、人との争いで多くの人が命を落とすことになる。
よって、王国兵団だけでは対応できないものと考え、ギルドに依頼をしたのだ」
確かに、隣国とは関係が良くないらしい。
それはヒロも知っていることだった。
「なるほど。
その、依頼内容というのは、具体的には何になるのでしょうか?」
「この、未知のモンスターの脅威を無くすことだ」
ヒロはたじろいだ。
謎のモンスターに対しての対策を打て、もっと言えば無力化せよ。
何から手を付ければよいか分からない。
依頼慣れしているジュドーが困るのも無理はないと思えた。
「な、なんと…。
今わかっているモンスターの情報、他にありますか?」
ヒロがそう尋ねると、王国側が調べた情報が提供された。
唯一の目撃者も、モンスターを近くで見ていないため、どんな外見であるかは分からなかったらしい。
だが、数多くの赤い光がうぞうぞと動き、多足のモンスターのように見えたという。
以前から、村の南の湿地帯で満月の夜には赤い光を見たという人が多数いたらしい。
村が襲われたのは同じく満月の夜であったため、そのモンスターは満月の夜に活発化するのかもしれないと思われた。
その情報から、モンスターの文献を王国側が調べたところ、”ゾーム”というモンスターの情報が見つかったという。
湿地を好むモンスターで、ここ百年以上シュテリア王国に現れた記録がないモンスターである。
赤い目で、集団で行動し、人間を含めなんでも襲う。満月の夜に活発化する。
だが、外見や特徴などの詳細は文献では分からなかったらしい。
総指揮官グレンダールが情報をひとしきり述べた後に、最後に付け加えるように言った。
「ヒロ殿にモンスターを倒してほしと言うわけではない。どうすればこの危機に対処できるかの、知恵が欲しいのだ」
ジュドーは熱いまなざしでヒロを見る。
ランペルツォンはお前に何ができる、というまなざしをヒロに向けている。
グレンダールも、迫力のある目でヒロをじっと見た。
ヒロは、どう回答すべきかを考える最中、次のことが頭をよぎった。
これは、プロジェクトだ。
正確には、プロジェクトにすべき案件だ。
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