第125話 魔王ベル(その3)
マリーはふと佐藤夏樹と誠が魔王ベルと戦っている姿を見て師でもあるマーリンの予言を思い出した。
「お前さんはいずれわしがいた世界から一人の少年を召喚しその少年が迷宮で危機に迫った時……お前さんはその少年を庇って死を迎えるであろう」
マーリンが予言していた迷宮で現在、佐藤夏樹はベルと戦い危機に迫っている光景を目の当たりにしその予言が的中していたことにマリーは決心してその運命に身を委ねることにした。
マリーは一歩一歩佐藤夏樹達のいる方向へと近づき駆け寄る。
「まっ、マリー!」
ジンジャーがマリーに声をかけるとマリーはピタッと止まり後ろを振り向く。
「大丈夫よ、必ず帰ってくるわ……」
マリーは不安な表情を誤魔化しながらニコッと笑いベルに立ち向かうべく歩き始める。
「マリー、気を付けて……」
ジンジャーは嫌な予感がしておりもしかしたらマリーは本当に死んでしまうのではないかとすら思っていた。マリーはジンジャーに過去の話を全ては話してはおらず死の予言に関しては黙っていたのだ。
言えば確実に止められることはマリー自身分かっていたからだ。ジョセフのように止められても信念を貫ける自身がなかったため、ジョセフのようにマリーは自分の命を投げ捨ててまで叩く覚悟がなかった。
だが今のマリーは尊敬する師であるマーリンの予言に従うだけであり予言された未来を自分自身で選んだのだ。
「これが俺とお前の差だ、俺の仲間になるか死を選ぶかどっちかしかないぞ」
ベルは地面に倒れ込んだ佐藤夏樹に見下ろすような目で二択の選択を強いる。
「うるせえ!ダチを殺されたっていうのに何でテメエの仲間になんかならなきゃいけないんだよ!」
(ジョセフ君がいたからこそあたしはマーリン先生の予言に従う覚悟ができたのに……そのジョセフ君が死に今もなお佐藤夏樹君が死ねばあたしには何も残るものがない……だから、これ以上大切な仲間を死なせたくない!)マリーはジョセフの死を悔い同じ過ちを繰り返さないようにするべく牽制する。
「『レールアローガン』!」
マリーは今まで威力を抑えていたのだがこのまま出力を抑えていてはどの道全滅すると思ったのか出力を10~50パーセントまで威力をあげた。
当然ながらベルは右手を犠牲に躱したのだがベルにとっては大したダメージではなかったみたいだ。ベルは暫くの間欠損した右腕を押さえ低く唸るように咆哮をあげ欠損したはずの右手がトカゲの尻尾が生えるように再生したのだ。
「闇属性上級魔法『自己再生』?この魔法は禁術のはずなのに何故お前が……?」
マリーはベルに尋ねる。
「俺は全てを知り尽くした男だ。そのくらいの魔法を知っていて当然だ!だが光属性究極魔法『インドラ』、あれの体得方法は未だに知らないのだがな」
ベルは全てを知り尽くしたと言っている割には光属性究極魔法を体得できていないことを考えれば『インドラ』がどれほど凄いのかがよく分かる。
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