第121話 迷宮(その1)
迷宮を次々と攻略し魔物もゴブリン、リザードマン、キメラ程度の低レベルの魔物以外にもベヒーモス、ゴリラもどき、大蛇などの強力な魔物が出現したりとかなり苦戦していた。
流石の誠でも戦闘に関しては苦戦を強いられていることを考えるとベルという男の強さというのはかなりのものであることは予測できていた。
「『ファイヤースピア』!」
誠の掌から炎の槍状の細身の物体が放出される。
「ウリィヤアァァァァァァ!」
ジョセフは『スパーク』ラッシュをベヒーモスに打ち込みベヒーモスの巨体は肉塊となり血飛沫をあげる。血分の残った肉塊から血液を『ブラッドサッカー』で吸血し魔力を回復し『浄化』で体内で循環している血液を綺麗にしていた。
「それにしても呪文名を唱えずに魔法を発動できること自体が人間とは到底思えないんだけど……」
「神様には何か聞いていないのか?そういう人間がいたとか」
「残念ながらそういう情報は一切聞いていなくて……ジョセフ、君の役に立てなくてごめん……」
誠は俯きながらジョセフに謝罪をする。
通常は詠唱をしなければ魔法は発動できなかったりするのに対してジョセフの場合は脳内で魔法の呪文名が浮かび上がりそれを発動するという感じの方式で行い『スパーク』ラッシュを連続で打ち込むという原理なのだがラッシュ時は脳内を加速することで発動している。
ジョセフ以外の通常の人間がジョセフのように脳内で魔法を発動しようとしても脳に多大な負担が掛かったりと危険性も増すだろう。
これも全て先程瀕死し、復活してから脳内で魔法を発動することが可能になっていたりとどこかしら体に異常がきたしているのではとも思えるが今の状況を考えるならジョセフは(もう二度と昔の自分には戻れない)と内心そんな気がしていた。
「ジョセフ様……後ろ向きに考えるのはめっ、です!」
「リサ、心の中を読んだな……」
「ごめんなさい、でもやっぱりジョセフ様があまりにも深刻な顔をしているから……」
「俺こそ済まないな、心配かけちまって……」
ジョセフは人間であるかを疑問に感じていることはリサの心に不安を感じさせていることにも繋がるためこれ以上自分は人間かどうかを考えるよりも今の自分自身と向き合うことを考える方が最良であるのは間違いないと判断した。
「それにしてもリサも心が読めるのは分かるけどジョセフは色眼鏡かけてるのによく表情なんて分かるよね……」
ジンジャーは少しやきもちを妬くような表情でリサに言うと「ジョセフ様のことを心から愛していますので」とリサはえへっと笑みを浮かべる。
ジョセフはリサの笑顔を見て何故か少しホッとしていた。もしかしたらこの戦いで死ぬかもしれないっていうのに。
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