第89話 神と誠(その1)

 神界に『エニィウェアゲート』が開かれ神様は何事かとお茶の入ったの湯のみをコタツテーブルへと置く。


 「まさかお前さんがここに来るとはのう……」


 「いつかは神様に顔を見せようと思っていましたので」


 驚いた神様に誠はどうやら挨拶に来ていたようだ。神様は相変わらずマイペースな感じでお茶をズズズと音を立てながら飲んでいた。


 「どうじゃ、お前さんも」


 「すみません、ありがとうございます」


 神様はテーブルに置いていた急須に入っているお茶に誠の分の湯飲みに入れる。


 「いただきます」


 誠は湯飲みを手に取りお茶を飲み干す。そのお茶の味は日本にいた頃と同じ味で恐らく日本でも高級茶であることは間違いないだろう。誠はこのお茶を一気に飲んでは失礼だと感じたからなのか畳に置いてあった座布団に正座をする。


 「そんなに固くならんでもいいのじゃけどな……」


 「いえいえ、僕がそうしたいだけですので。それに僕のおじいちゃんの家ではこうやってお茶を飲んでいましたので」


 誠は祖父の家でお茶を飲むときは大抵正座していた。祖父からは茶道を叩きこまれているためその習慣が抜け切れていないのだろう。誠の祖父は茶道、剣道、柔道、空手、合気道に古武術等かなり長けている存在らしいのだ。


 「そうじゃったな、お前さんをあの世界で転生させた後お前さんの過去の経歴をゆっくりと調べていたのじゃがお前さんの血族はかなりのエリートのようじゃな。父親は芸能プロダクションの社長で母親はマンガ家と両親の方もかなり成功しているみたいじゃがお前さんはごく普通の一般……いやっ、高校卒業した後の進路を考えても社長になれるほどの器量はあるみたいじゃな」


 誠の父親は芸能プロダクションの社長であり草凪財団の創設者でもある。草凪プロダクションは数々の芸能分野に貢献をしており、今の芸能界があるのも草凪プロダクションがあってこそと言ってもいいだろう。誠は父親の企画資料等を時々見せてもらったりしているのだがその中には”アイドルファイト!スチューデントアイドル育成計画”なるものがある。父親から聞いた話によれば高校生を対象としたアイドルの大会でありプロアマ問わず出場できるようでその中から次世代の芸能界に必要な逸材を見つけるためのプロジェクトだとのことだ。


 アイドルファイトなる大会は日本では一年後に開催される予定であり、スチューデントアイドルの応募者を募集中だとのことだ。この大会自体は恐らくではあるのだが数年後には全国から沢山のスチューデントアイドルが輩出されることは間違いなしと誠もそのプロジェクトに参加する予定だったみたいだ。

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