第77話 チートすぎるだろ!(その7)
ジョセフ達の中でまともに戦闘できるのがマリーを除けばテレサとジンジャーだけであるため時間稼ぎとして逃げることも可能なのだろうけど誰も逃げようと思うものはいなかった。当然ながらジョセフ自身踵を返そうと思うことはなかったが恐怖心というものが植え付けられそうになる程とても禍々しく淀んだ空気が洞窟内で漂い始める。
「今までのゴブリン達とも違う気迫に気圧されそうだ。それぐらい今回はハードモードだということだ」
ジョセフは異世界で鍛えられた五感を、感覚を研ぎ澄ませながらドラゴンかそれ以上の何かが潜んでいることを推測していた。
「もしかしてドラゴンなわけないよな……こんな洞窟の中にドラゴンが入れそうな場所なんてなかったし」
「この気はドラゴンなんかじゃないわ!恐らく魔人族の中でも上位種よ」
佐藤夏樹は怖気づいたからなのか声を震わせ、マリーはドラゴンではなく魔人族であることを推測する。ファンタジー作品で言えば洞窟の最深部に入ったわけでもないのにボスクラスの敵が出現することなんてのはそうないだろう。だが、ここはゲームの世界ではなくて現実であり、ゲームやアニメとは違う予測できないイレギュラーが生じても何らおかしくはないのだ。
「無属性魔法『未来視』で今どんな敵と戦うのか未来を見ていたけど真っ向勝負なんてしようものなら確実に死ぬわよ。あたしと誠って人以外は……」
深刻そうな顔で死の警告をし始めたマリーが言葉を発する。今まで涼しい顔をしていたマリーが珍しく言葉を発するのだ。(ジョセフは『パープルサンダー』を使ったとしても勝てるか怪しい……)ジョセフは自分が死むのではないかと薄々感ずいていた。
「『未来視』って魔法を使ったみたいだけどいつの間にそんなの発動したんだ?」
ジョセフはマリーに疑問を感じながら尋ねる。
「この魔法は詠唱しなくても発動できる固有魔法だから声に出さなくても発動は可能よ」
マリーは親切に教えてくれたのだが長く会話をさせてくれる猶予も与えてくれないようで一人の魔人族が少しずつ近づいてくる。
「よくぞこの洞窟に無事侵入できたものだな。だがそれもここで終わりだ。」
魔人族はいきなりゆっくりと拍手をしながら不気味な笑みを浮かべる。見た目自体はジョセフ達人間と大差変わらず黒髪短髪で瞳は黄色、そして中二病を彷彿させるロングコートを纏っている。
「……僕のイメージしている魔人族とは違うみたいだね」
誠は今から殺されるかもしれないという状況でも顔色一つ変えずにしており、ジョセフ達は唖然とする。
「いや、てかお前こいつに殺されるかもしれないってのによくそんな余裕でいられるな?チート日本人だから『僕は死なないよ』とかいうんじゃないだろうな?」
「別にそんなことはないよ。ただ魔人族っていうからツノあるのかなって思って」
「ツノ生えてるイコール魔人族なわけないだろ!このハーレム野郎!」
誠は佐藤夏樹のキレのあるツッコミをボケで返す。ここでお笑いコントしている場合じゃないのに場の雰囲気を和ませようとしている誠にはジョセフ自身度肝を抜かれてしまう程だ。
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