第72話 チートすぎるだろ!(その2)

 「それでドラゴン討伐なんだがドラゴンてのはどこにいるんだ?」


 「ドラゴンはこの領域に現れているみたいなんだけど正確な位置までは分かっていないんだよ」


 誠は地図を出しドラゴンが出現した場所を指さすもワトソン王国がどの位置にあるかも分からないジョセフからしたら何が何だか分からない状態だ。誠という男の言葉の一つ一つが薄っぺらで何も感じることがないのだから。


 テレサ達が不愉快に思うのも無理はないがあそこまで露わにしているとジョセフ自身同じ気分になりそうでいた。


 「すまん、ワトソン王国とホームズ王国の領地がどの辺だとかそういう地理関係が分かっていないから地図で教えられてもって感じなんだが……」


 「そうだったんだ、それはちょっと悪いことしちゃったなあ……」


 誠は軽く謝罪の言葉を述べジョセフに頭を下げる。ジョセフは別に謝らなくてもいいのにと思いながらもドラゴンを討伐できるほどのランクに達していないのに特例で討伐することになったことには未だに違和感を拭えない。昨夜の決闘にしろ誠はまだ何か隠していることがあるに違いないとジョセフは察していた。


 間違いなくジョセフにわざと負けてジョセフをプロデュースするつもりでいるのだろうけどジョセフは誰かに命令されるような生き方を異世界でまでするつもりはなかった。ジョセフはただ自由気ままに生きたいだけであり、最近このように何かに巻き込まれやすいことに悪霊に憑りつかれているのではと思うようになっていた。


 (最近魔王が復活したとかで魔人族も行動が活発になったりとしているらしく冒険者ギルドの張り紙にも魔人族討伐依頼などがあったけど全て誠一人で解決できる内容じゃないのか?)みねうちとはいえジョセフの攻撃をわざと食らっていたがそのおかげでジョセフの心は軽く抉られたというのに誠はそんなことを微塵も考えてはいないのだろう。


 誠にとってはそれが最良な考えなことなのだろうけどジョセフはプライドを傷つけられていたことに腹を立てていた。


 (ラノベ主人公特有の鈍感な性格っていうのは本当に嫌になってしまうよ……)ジョセフは内心そう思うとリサからは「ジョセフ様も人のことは言えません!」とツッコミを入れられた。


 マリーの誠を見る目がかなり殺意的で佐藤夏樹は嫉妬から生じたからなのかずっと睥睨としており、ジョセフのメンバーには毒のようなものだである。テレサとジンジャーもいけ好かない顔しており誠との関りはジョセフ自身これっきりにしたかった。


 リサはジョセフの心を読んでいるからなのか心配した眼差しでジョセフのことを見つめ話しかけようとするも気遣いからなのか何も言えずにいた。アイリスはというと辺りをキョロキョロとしながら外に出られると修学旅行ではしゃぐ学生みたいにわくわくとドキドキが止まらないみたいだ。『エニィウェアゲート』見たことのある場所ならどこへでも移動できるチート魔法なのだがまさにラノベ主人公って感じであり、何でもありな展開はもはやギャグの領域だとしか思えない光景であった。

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