第68話 討伐準備(その5)

 そのまま寝室へと戻りジョセフが寝るベッドでリサは「ジョセフ様ぁ…私達の愛の結晶を作る準備はできていますわよ」と寝言を言いながら気持ちよさそうに眠っていた。リサの横にそっと仰向けになりそのまま眠りにつき明日テレサとジンジャーと婚約者にしていいか確認をしなければいけないので夜更かしはできないでいた。


 今日は珍しく眠気も強く、横にいるリサからはとてもいい匂いがしてその匂いにつられてジョセフはそのまま眠りについてしまった。ジョセフは日記を書き忘れたことを思いながらも無理に書く必要はないと思い、明日思い出せるところだけでも書けばいいと思った。


 異世界の夜は日本の夜と違い、ろうそくがないと周囲が見えないほどに暗くとても静かだ。その静けさもあってか安眠することができ、ジョセフは横にリサがいることでさらに気楽に過ごすことができる。


 この世界の月というのも日本にいた時のように黄色くとても美しく月見団子でも食べたい気分なのだがワトソン王国では米が無いため団子や餅、白米を食べることができない。日本人として白米が食べられないってのは一番辛いことだ。


 白米と味噌汁があるからこそ日本人なんだと実感できるのだがジョセフは血筋だけを考えれば完全に北欧系アメリカ人だけど日本に正式な手続きで帰化しているから細かいことは気にしないでほしいって感じであった。日本にいた頃は金髪碧眼が珍しいからと虐められたりしたがジョセフにとってだから何だって話である。


 ジョセフ達は日本人である以前に同じ地球人として何故神や目、肌の色が違うからと難癖付けられなければいけないのかが理解できない。そもそもが日本人は基本黒髪黒目で直毛が多いから髪型も統一しなきゃいけないなんてことが納得いかないからだ。ジョセフはそんな日本の古い体制が大嫌いである。


 ジョセフは髪が長かろうと色が違おうが他人様に迷惑をかけなければ別にいいと思っており、不良が普段から問題起こしてもそんなに周囲の奴らってのは叩かないくせに真面目な人間が不良をぶちのめしたら問題視されたりと理不尽すぎて嫌気さえさしてしまう。


 日本人というのはそういう人達を迫害するかのように促している。小学校の頃、授業の一環として人権学習というものを習っていたがそれをちゃんと真に受けている人間は多分殆どの人間は何とも思っていないのは結果として明らかだ。


 差別をしてはいけない、人権を大事にしろと言って自分達の意見に賛同しない人間にはことごとく冷たい態度で接したりと世の中は偽善者だらけだ。人権を守るのは当然大事なことではあるのだか、たった一時間の授業で教師が生徒達に論し生徒達は「人権というのがいかに大切で差別は良くないのかをこの授業を通してわかりました」と言いつつもそれを生真面目に実行する人などはないからだ。そんな偽善者がこの世の中心にいるのかと考えるとこの世界に神は存在しないと思っていたがジョセフは自分を異世界に転移させた神は何故、この実態を今まで放置していたのかは理解不能だ。

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