第55話 遠方からの来訪者(その3)

 「リサにジョセフよ、帰ってきていたか」


 「それで王様、一体何のご用件で?」


 ジョセフは単刀直入に王様に質問をする。


 「実はだな、そなたが無報酬でクエストを二度もこなしたことが同盟国でもあるホームズ王国の方にも噂が広まってな。今からホームズ王国の冒険者がここに来るそうなのだよ」


 ジョセフは王様が何を言っているのか一瞬分からずに佇んでいた。そこで状況を整理し、要するにジョセフがゴブリンを無報酬で討伐したことが他の村や街でも話題になってることが原因であることが判明した。それはまあ分かったがわざわざ他国に来る必要はあるのか?ジョセフはそれが理解できずにいた。


 「陛下、ホームズ王国の冒険者と王女様がやってきました!」


 「冒険者がくることは聞いていたが王女様身自らおいでになられるとは」


 ホームズ王国の王女様まで来訪されることまでは王様も情報は聞いていなかったようだがその王女様がくるってことはジョセフは相当やばいことをやらかしてしまったのか?と少し心配してしまった。


 「失礼します」


 扉の向こう側から細い声が透き通るように聴こえてきた。


 ジョセフはそのホームズ王国の王女とその冒険者とやらを拝見させていただくことにした。外からリサと同い年くらいの少女が4人と黒髪の日本人?と思わしき人物が入室したのだ。


 「お久しぶりです、ワトソン国王陛下。そしてこの3人は私達と共に旅をしている冒険者と私の従妹のマギーです」


 「初めまして、僕は草凪誠といいます。そしてこちらのお二方はリンとトキで僕と最初に出会った双子の姉妹です」


 「そして私がレイラの従妹のマギーです」


 草凪誠という名前からしてジョセフはすぐさま日本からやってきた転生者か転移者であることを察することができた。そしてジョセフはマギーという少女はどことなくアイリスとどことなく似ている気がした。


 「数年ぶりにワトソン王国に来てみてどうかな?」


 「はい、街の人達はとても親切でこのまま平和が続けばと思っています。えっと、あちらの方は?」


 ホームズ王国の王女様はジョセフの方を見て王様に尋ねた。


 「そうだったな、あちらにいるのは余の娘リサ姫と婚約している…」


 「ジョセフ・ジョーンズと申します。以後お見知りおきを」


 「ジョセフさんと言うのですか、自己紹介が忘れていましたね。私はホームズ王国王女のレイラと申します」


 レイラと名乗る少女は丁寧に自己紹介を済ませソファーへと上品に腰を掛ける。


 ジョセフが一番気にしているのはレイラの傍らにいる草凪誠という男である。ジョセフは誠からは佐藤夏樹とは違う何かを感じていた。この気配はジョセフをこの世界に転移させた神様にも似た気を感じたからだ。強さに関してはおそらく俺TUEEE!チート的な何かを持っているのだろうがジョセフは今はそんなことを考えるまでには至らなかった。


 「失礼かもしれませぬがレイラ姫と申されましたかな?今回は何用でワトソン王国にやってこられたのでございますか?」


 延々と長話をされる前にジョセフはレイラ本人に直接尋ねることにした。


 「実は、ワトソン王国の冒険者がゴブリンを無報酬で討伐したものがいるとお聞きしまして…」


 「それなら俺がしました」

 

 ジョセフの発する一言によりホームズ王国から来た王女と草凪誠、双子とマギーは口に含んでいたお茶を勢いよく口から吹き出し始めた。

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