第20話 二人目の婚約者

 ジョセフはかなり深刻に悩んでいた。


 (やべえよ…あのアイリスって子なんか急に目がうるうるし始めたよ、くそぉっ、こうなったらもうロリコンと言われようが関係ねぇ!)もうジョセフは考えるのを辞め苦渋の決断をした。


 「分かりました、アイリス様が俺を婚約者に指名するのであればこちらこそよろしくお願いします」


 アイリスはパーッと顔の表情が明るくなり、公爵も大喜びした様子であった。


 「それではジョセフ殿、娘のアイリスを任せる」


 「はっ、はぁ…」


 ジョセフにとってもう何もかもどうでもよくなってきたのだ。


 (この年で婚約なんてめんどくさいけどここで断って恨みとか持たれたくねえしなぁ)とジョセフの顔は憔悴しきっており、その姿は終末期が近づく老人そのものだった。


 一夫多妻も認められてるわけでちゃんと婚約をしていればリサに浮気だ不倫だと騒がれずに済むだろうとジョセフは考える。


 (アイリス達とお茶会をしていたのだが早く終わってくれないかなぁ……)ジョセフはずっと見つめてくるしアイリスとのお茶会を終わらせたいと思っており、佐藤夏樹は横からジョセフの顔見てニヤけていた。


 ジョセフは自分がロリコン認定されそうで一秒でも早く元の世界に帰りたいと帰宅願望すら生じていた。


 日本に帰れないことは分かってはいるものの。


 マリーのに実は日本という場所から来ましたので元の世界に転送してくださいなんて頼もうとも試みたのだがマリーがまずジョセフが別の世界から来た人間だなんて信用する確率も低いだろうしそもそもそんな魔法って存在するのか?なかったら確実に恥をかくだけで、ジョセフがこの物語の主人公である以上日本に帰ったら物語終わっちまうからだ。


 いっそのことジョセフの物語は第一部で終わらせ、佐藤夏樹を第二部で新主人公にするってのも悪くないかもと頭に浮かべていた。


 問題は佐藤夏樹がハーレムやってくれるかどうかが疑問だった。オタクは基本ハーレムにロマンを抱くものだと思っているから少なくともハーレム願望はあるはずとジョセフは無理やり考える。


 「なぁ、佐藤夏樹…」


 「なんだよ?」


 「お前、ハーレムしたいとか思ったことあるか?」


 「したいとは思ったことあるけど、やっぱり好きな女性一人を追いかけたいなぁ……」


 (マジかよ、こいつ結構一途に女性を愛するタイプかよ。困ったわぁ、マジでこれ

……俺マジで異世界でハーレム生活充実させなかったらこれはタイトル詐欺になってしまう……)ジョセフは日記にもタイトルを書いてしまい、ハーレム願望に興味のない佐藤夏樹では主人公は務まらないことに肩を竦め俯いた。


 ジョセフ自身が何とかしてハーレム生活を充実させるしかなくなり、もうロリコンと思われようが関係ないとも思った。アイリスとリサくらいの年頃の女の子がジョセフに好意を寄せるならもう拒む必要はないと思考が退行しかかっていた。


 「ただいまぁ~」


 「あっ、ジョセフ様おかえりなっ…」


 (そりゃ驚くよなぁ、アイリスまで婚約者になってるんだから)ジョセフはリサは発狂することをかなり恐れていた。


 「アイリス、何でジョセフ様と一緒に?」


 「私はジョセフの婚約者だから~」


 (やっ、こいつなんてことをストレートに!そこはオブラートに包んで何とかしなきゃ!)ジョセフは空気を読まないアイリスに心の中でツッコミを入れる。


 「ジョセフ様って、やっぱり年下の子が好きだったんですね?」


 「俺がそんなことで婚約者にしたとでも思うか?」


 「違うんですか?」


 「リサの時みたいにほぼ強引だよ、


 「そっ、そんな…私、強引にしたつもりは…」


 (うわぁ~そんな悲しい瞳で俺を見つめないでくれ~、俺が泣かせたみたいに思われるだろ……)焦燥感に駆られたジョセフは口をグググっとへの字に曲げながら俯く。


 「おいおいジョセフ、女の子を泣かせてんじゃねーよ」


 「別に泣かせてねーよ…」


 リサが大袈裟にとらえたのが原因でジョセフは佐藤夏樹にまで誤解された。


 「ジョセフ~、リサは涙もろいからあんまり言いすぎないようにするのだぞ~」


 「それ最初から言って…」


 「ふぅ~っ、やれやれだぜ」


 ジョセフはため息を吐き俯く。


 アイリスがメンバーに加わることになったため宿の部屋が余ってないか再び確認してみるが今のところ空き部屋が無いためジョセフの部屋に泊まると言い始めたが流石にそうなると完全にロリコン認定されるではと思ったジョセフはそれは拒否してリサの部屋で泊まってもらうことにした。

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