第11話 異世界転移者
「遺跡調査の件なんですが、遺跡内にモンスターの生息はなく、財宝と呼べるものも見つからなかったんですけど見たこともない文字で書かれてるこの本だけが見つかりました」
「分かりました、今回の遺跡調査は今のところ危険性は無しということで大丈夫ですね。それでは報酬の銀貨20枚です」
遺跡で見つけた古い本を受付のお姉さんに渡し、報酬の銀貨20枚を受け取った。
ジョセフ達が持っている冒険者カードはクエストをこなすことでランクアップすることができて、赤、黄色、緑、青、銅、銀、金、白金の順で分けられており、ジョセフ達は赤から、黄色へと今さっきランクアップしたばかりなのだ。
ゲームと似たようなシステムで最初はランクアップしやすいのだけどランクが上に行けば行くほど高難易度のクエストを受けないと上がりにくくなるということらしいのだ。
簡単なクエストだけやられても組合側も困るだろうしそうするのは自然の道理ではある。
それから遺跡はというと今のところ危険性はないということが分かったのだが、もしかしたらまだ遺跡の謎が残っているのかもしれないということで国の正式な調査団を送り調査することになったのだが、調査団の話によると隠し扉が見つかったらしくそこにはあの本と同じ日本語で書かれていた本や道具が沢山見つかったらしい。
「やはりあの神様は結構な手違いで転生又は転移させたりしているに違いない……でも何かおかしい気がするんだ、本当に手違いだけでそんなにむやみやたらと異世界なんかに送り込む必要性があるのか?」
ジョセフは未だに理解できずにいた。
ラノベだと日本でトラックとか車に引かれたり神様が手違いで雷落として死んだ冴えない社会人や学生とかをわざわざ危険な異世界に送るよりも記憶を消してまた普通に赤ン坊から転生させるのではだめなのか?そんなことを考えながらジョセフは宿の部屋で日記を書いていた。
ジョセフは内心、自分以外にも転移させられた人間がいることを確信してはいたがどうも腸が煮えくり返りそうな気分でいっぱいでいた。
他の転移、転生者は何の考えもなしにチート能力を授かり、無双してハーレムなんて生活を当たり前の如く全て自分の力で築き上げたものだと己の力を過信している勘違い野郎がのさばっているのかと考えるととても気に入らない。
かといって、ジョセフ自身あまり人のことをとやかく言える立場ではないため自分以外にもいるってのは少し嫌な気持ちでいた。
実際神様からこの世界の読み書きができるようにしてもらったのだって一種のチートみたいなものだけどそれが俺TUEEEEでハーレム生活ができる絶対条件ではない。
ジョセフはこの世界に来て改めて思ったことはリサのようにジョセフの人柄に惚れた傾向だってある。
リサは心がとても綺麗で誰にでも気配りができる優しい女の子ではあるのだがジョセフに異常なまでに依存していることが玉に傷である。
「一途に愛してくれているとはいえリサはまだ13歳、色んな恋愛を知っておいた方がいい年頃だぞ……」
いくらジョセフ達よりも若いうちから結婚ができるからって流石に結婚したいて思う順序が速すぎるのは良くないことだと思うわけで、ラノベのハーレム主人公みたいに急展開でモテるなんてことをジョセフは求めていない。
寧ろ真剣に恋をして、友達から始めてそこから二人の絆が結ばれた時にこそ結婚するものだとジョセフは考えている。
トントントン、日記を書いているとドアをノックする音が聴こえた。
「ジョセフ様、今大丈夫ですか?」
「今は日記書いているところだからまた後ででもいいかな?」
「分かりました、また後で声をおかけします」
リサは自分の部屋に戻っていったようだな。
部屋が隣にあるからってそんなに毎回来られるもんだからゆっくりと日記を書く暇がなかった。
ジョセフはたまにはこうやって日記をゆっくり書きたいと思っていたのだがいつまでもリサに俺の真実を隠すわけにもいかず、次来た時には本当のことを話そうと考えていた。
「こんな時にスマホがあれば向こうの世界の情報とか得ることができるんだけどなぁ…侑、仁、ジョナサン、ジョニー、ジョージ、親父、おふくろ達、そして小学生の頃の初恋の女性エミリーは今頃元気にしてるのかなぁ…」
そんなことを呟きながらジョセフは紙にイラストを描いていた。
ジョセフは小学校の頃はイラストを描いたりして楽しんでおり、中学になってからはイラストよりも喧嘩にばかり明け暮れていて碌な記憶がなかった、これも全て異世界に転移させられたのはそうゆう人生を楽しく過ごせなかった人間が理想の生活を手に入れるために神様がやっているのかと今なら思えるのだがジョセフは異世界に来る前は神の存在を信じていなかった、神なんて人間が作りだしたエゴから生み出されたもので全ては他の人間を洗脳するためにあるものだとばかり思っていたが実際に神様は存在してはいるが神様は全ての人間に平等を与えることはなかった。
本当に平等であるならばこんなにも格差というものがある筈がないからだ。
前いた世界でもスクールカーストとか中小大企業とか学歴差別、社内での虐め、パワハラ等が頻繁に行われているのだ。それはいつの時代、どの世界で起こりうるものなのだろう。
ジョセフは自分の部屋を出て隣にあるリサの部屋へと向かった。
「リサ、入っていいか?」
「どうぞ」
ジョセフは扉を開けてリサの泊っている部屋に入った。
「どうしたんですか?ジョセフ様からお声をかけてくださるなんて」
リサは急に部屋に来たジョセフを珍しく思い、嬉しそうにしていた。
「実は話しておきたいと思ったことがあったんだ」
「どんな話ですか?」
「俺は…信じてくれるかは分からないけどこの世界とは違う別の世界から来たんだ…」
「私、前から知っていました」
ここなら普通「そんなデタラメ……」とばかり言うとジョセフは思っていたのにあっさりとリサは信じてくれたのだ。
「ゴブリンから私を救ってくれた時からジョセフ様の心を読んでいたので分かっていました」
「最初から心を読んでいたって?」
「はい、ジョセフ様は見ず知らずの人間の為に勇敢に立ち向かい、他人を心配する思いやりのある黄金のように光り輝く精神から別の世界の人間だと分かり、それだからこそ持ち合わせることができる優しさがあるのだと察することができましたわ」
(そういうことか、最初からリサは俺の秘密を知ったうえで結婚したいと思うようにもなったのか、そうならそうと最初からそう言えばいいものを……)ジョセフは内心知っていたのならと心の中で嘆いていた。
こうやってちゃんとリサと会話をしたことがなかったジョセフは、いつもクエストの話しかしなかったからなのかこうやってゆっくりと会話もしようとも思ってもいなかったためリサと会話することを新鮮に感じていた。
「俺以外にもこの世界に来た人間がいるってことがここ最近で分かったのは」
「ジョセフ様以外にも?」
「ああ、まずは浮気調査の時の依頼主のアーサー・サカモトの先祖とこの前の遺跡調査の時にマリーが読んでいたあの日記を書いた人だ、もしかしたらこれからもこの世界に転生、転移者が出現するかもしれない」
ジョセフが今推測しているのは、この調子だとこれからも日本から人が来る可能性があることなどをリサに話した。神様が手違いで異世界に転移させるものを召喚してしまったということを言っていたからだ。確実に他の日本人がこの世界にやってくることは確定と言ってもいいだろう。
リサもジョセフという人間がいたからなのか話をすぐに飲み込むことなんて容易いことだったのだ。
そしてこの世界の人間は妙に日本にいた頃に聞いたことのあるような名前だったり固有名詞が出てきたりと地球と共通のものがあるみたいだがここは本当に異世界なのか疑問に思うところだ。もしかしたら異世界であることに関しては間違いないのだろうがそれを確証できるものがなければそれを解明することができないのだ。
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