二人の覚悟01

「えらく、分からない関係だぞ」


 入ってきた二人を見て、舞先生はいささか驚く。


 二人の派閥も違うし、学校では上司と部下の関係だが、それほど接点はなかった。


 二人は意志のこもった瞳をしていた。


「よくここに来られたものだぞ岬・・・・・・というのは冗談だ。よく来てくれたぞ岬」


 舞先生の表情は穏やかだ。


 ここは舞先生の本拠地だ。誰に見られて、聞かれている場所ではなく、秘匿できる場所だ。


「えっ、怒っていたんじゃないのですか」


 岬は困惑した表情だ。


 この前は、えらい剣幕で怒られたのだ。そう思うのも無理はない。


「あそこには、今回御影を罠にはめ、私の派閥に攻撃を仕掛けた一味がいた。だからそう思わせる方に誘導したのだぞ。むしろ私の方がすまないぞ、八月初めから魔法にかけられていたのは知っていた。黒幕を探るためにあえて放置していたが裏目にでてしまった。すまないな巻き込んでしまって」


「私の方こそすいません。御影さんを止められませんでした」


 良かった今日来て、本当に良かった。


 岬は嬉し泣きを隠すように手で顔を覆う。


 舞先生は元々岬に罰を科す事など考えてなかった。放置してしまったのは自分の責任だ。だから、だれかに罰を与えるのではなく自分で責任をとる。


 もう少し早くいえば良かった。だけど成長したな。


 舞先生は今の岬を見てそう思う。一皮剥けたと。


 それはレータにも見て取れた。


「さて、お前は確かフェリスの所の事務科の職員だな」


「はい、レータと申します。この度は、フェリス様のご無礼、誠に申し訳ありません。御影さんを救うのに、私ができることがあるなら何でもします」


 レータは深々と頭を垂れる。


「お前がフェリスに逆らえないのは、分かっていたぞ。だから怒りもせんさ。息子が治って良かったと思うぞ。全く御影はお人好しがすぎる」


 罠にかかると分かった上で、ダンジョンに行く前に治しに行くとは、いかにも御影らしいと、舞先生は思う。仕方ない奴だなとも。


 

「おもしろい話をしてやるぞ。契約書一枚で、クラブ派はこちらの要求通りでメダル五枚で契約してくれたが、学園長派はなにを要求したと思う」


 取れるときにとっておくというのは世の中の常識だ。しかし、引き際を見誤れば対立する。


「舞さんの譲歩できる、最大限の要求をしたのですか」


 それに不蔑の笑みで舞先生は答える。


「答えは、メダル七枚と私の派閥と交わした契約の破棄、さらに私の派閥に所有権がある、占有ダンジョン二つと転移魔法陣一つの譲渡だ」


 なぁ!?


 

 二人のの予想を超えて稀にみる暴挙だ。


 そこまで要求したとは考えられなかった。しかし舞先生がすぐに分かる嘘をつく理由もない。


「フェリス以上にとことん人を虚仮にした契約だ。見せたかったぞ、議論が進むにつれ、勝ち誇った笑みを浮かべる二人を、滑稽で傑作だったぞ。フェリスは御影の契約主だ。今は『敵対』できない、御影ともそういう契約をかわしているからな。だが、学園長派は必ず潰す。黒幕もろともな」


「黒幕は誰なんでしょうか」


「黒幕はまだ分かっていないが今回仕掛けた一派は黒幕以外分かっている。生徒会副会長種次の兄の一、種次、フェイカー家の一人であるユズリア、そしてプゥだ」


 舞先生は事の顛末を語り始めた。


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