一の野望
~とある会議室~
「兄さん、予定通り御影さんは『キューブ』入りました。今癒杉教諭がフェリスとの交渉に成功し、次の交渉に移っています」
種次が兄である一に報告している。
そう、種次は最初から知っていた。フェリスの依頼でキューブに行く事を。
一の確率的には半々だと予測していたが、上手く行ったようだ。
最も、今回失敗しても二重三重の策は用意していたが、一回で成功するのに越したことはなく、一は、机の上にひじをつき、手を組み、顎を乗せ笑みを深める。
今回の作戦で一番重要なのは、いかにして御影を、誰にも相談することなく『キューブ』に行かせることだった。
種次から御影の情報を報告され、一が五ヶ月前から準備していた作戦。
根回しや、一や種次の思惑だとばれないよう入念に痕跡を消すのにそれだけの期間がかかった。
本当は、天音を確実に消すための策だったが、一の予測から、急遽御影を入れることに方針転換となった。
御影は自分の弱点を理解しており、滅多な事では知ダンジョンには行かない。
転送先が『キューブ』だと知れば、行かないか、行く状況になったとしても必ず舞先生に相談する。
それは一と種次は分かっていたので、いかにして誰にもいわずに行かせるかを焦点に当てた。
最初の策は岬を使うこと。
それは一石四鳥の策で、舞先生派の不協和音も狙えるし、御影をダンジョンに行かせることができる。
そして、一人勝ちだった舞先生派を弱体化させることができ、さらに・・・・・・。
岬や舞先生派の情報は一が入学したときから徹底的に調べており、とある人物に依頼し、上手くやってくれたようだった。
さすがは・・・・・・と言ったところか。
今回の取り分は、フェリスがメダル六枚と三千万円、一がメダル二枚、協力者がメダル二枚。
一の正体を隠すため代理人がフェリスと契約したとき、協力金三千万円のみだったが、がめついフェリスはメダルに価値があると分かり自分の分をいれるため多くぶんどったのだ。
それも予測にはいっていたのだがね・・・・・・何ともみるに耐えないのだよ。
そんな契約者と契約してしまった点は、一は御影に同情していた
岬との交渉は協力者に任せてあるため知らないが、概ねここまでは最高に近い着地点だ。
「うむ、概ね予想通りなのだよ。くっくっくっ、もうすぐ第二段階の交渉が始まり・・・・・・決定的な契約が結ばれる。それからは血を血で洗う五大派閥同士の争いに移る。これがどういうことかわかるか弟よ」
一はおもしろくて仕方がなかった。
もうすぐ目的が達成されるのだ。子供の頃からの夢だった、両親から夢にででくるほど言われた一族の悲願と栄光を。自分の代で達成するのだ。
これも御影と・・・・・・の御陰だ。
御影が来なかったら、一の野望は一つしか達成できなかったであろう。
「僕には兄さんの様に長規模の予測は無理です。でも、兄さんがそれだけ嬉しがっているのなら、とうとういけるのですか」
種次は崇拝の眼差しで一を見ていた。
種次も一族の夢と一の野望のことは知っていた。
幼少時から種次は一の後ろをついて回って、完璧超人の兄の事を、憧れ尊敬し、いつか自分もこうなるたいと目標にしていた。
種次は一の為にできることは何でもやってきた。
本来なら0クラスになるはずはなかったが、兄の言いつけで0クラスで入学した。
御影のクラブに情や愛着がないわけではない。それ以上に一の命令の方が優先されるのだ。
そして一の野望がとうとう達成される。
種次にとって嬉しくないはずはなかった。
一は眼鏡の中心を押し上げる。
「今日は気分が良い、お前にも分かるよういってやろう。私の予測が言っている。今月上位十五席のうち半数が死亡する。そして、来月・・・・・・がなったと同時に五大派閥の一つが崩れ落ち、私が・・・・・・になる」
一は、未来の自分を想像し、まるで王者の風格を漂わせている様な、そんなドヤ顔だった。
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