ニャルコ参上!!とダンジョンの正体


「このくそったれにゃ~~~」


 クルリと回転しシュタッと着地した女は、頭から生えている猫耳をピンとたて、尻尾を逆立たせ罵倒する。


 その光景を見た御影は思う。この国の人間ではないと。


 御影のいる桜花国は獣人差別があり、獣人的特徴は出さないよう幼い頃から訓練している。


 耳を動かせないことや、尻尾をスカートやズボンの中に隠したり。


 特徴をだしたときの罰則はないが、それだけで暴力を振るわれたり苛められることが多い。


 だから尻尾を堂々と見せ、感情そのままに動かしているので御影は確信した。


 御影は相手が落ち着くのを待って背後から話しかける。


「すまない、教えてもらいたいことがある」


「みゃー、何でこんなとこに人がいるのにゃー」


 女はびっくりして、大きく飛び上がる。


 女はここは何処か知っていて、それで誰もいないだろうと思っていた。


 何故なら大半は三時間以内に死ぬからだ。


 女はおそるおそる振り返る。


 女の顔立ちは、猫の獣人で、獣の血が濃いのか、顔は下顎から額まで薄毛で覆われ、目は大きくちょっと垂れ目な猫目、両頬に三本の髭が立っている。


 身長は145センチぐらいで、スレンダーだが、しなやかな感じに御影は見えた。


 プゥ以上に足が速くなかなかやりそうだな。


 御影はそう分析する。


「驚かせてしまってすまんな。俺の名前は御影友道、桜花迷宮学園の一年である人物にはめられて、昨日からここにいる。ここが何処かもわからない状態なんだが教えてもらえないか」


「にゃー凄いにゃー、にゃーはニャルコにゃー、獣森国の獣王学園から来たにゃー。一年生でにゃーも同じで、はめられてきたにゃー。ここは知ダンジョンレベル四十九、通称『キューブ』と呼ばれる所にゃー。にゃーはそんなに頭が良くないから助かったにゃー」


 獣森国の場所は旧北海道の全域で、桜花国と真逆で、人間を差別している。


 ニャルコはそんな感情は全くなく、強面な御影の顔も気にすることなく、尻尾をぶんぶん振り回し、尊敬の眼差しで御影を見ていた。


 それはニャルコが御影が問題を解ける人だと思っているからだ。


 ニャルコ的には、ここの罠を作動させて生きているなんてあり得ないからだ。


 絶望的だったけどラッキーだったにゃー。


 そんな事をニャルコは思っていたが、次の御影の言葉で再度絶望にたたき落とされる。


「期待している所悪いが、俺も問題は解けない。昨日からずっととこの部屋にいた」


「みゃー、あり得ないにゃー、最低でも三時間に一度罠は発動しているはずにゃー」


「ああ、罠は魔法と身体能力で防いでいる」


 御影の返答に、ニャルコの耳と尻尾は垂れ下がり、がっくりとしていた。


 御影は期待させて悪いとは思いつつも、キューブの事を書かれた本について思い起こしていた。


 知ダンジョンレベル四十九『キューブ』


 致死的な罠と、一癖も二癖もあるレベル四十代のダンジョンの中で、トップクラスの難易度を誇る。


 このダンジョンは千以上からなる部屋と幅広く一級品の知識を持ってないとクリアは不可能であり、各部屋に扉は四つあり、扉の前にある問題を間違えると、致死性の罠が発動する。


 罠が発動する条件は


〇問題に間違えたとき


〇解答がないまま三時間経過したとき。


〇入ってから四日経過すると無条件に一時間経過した時


〇入ってから七日間経過すると無条件に十五経過したとき


 罠は扉の近くに退避すれば避けることは可能だが、何処から罠が出てくるのかランダムであり、確率は二分の一である。


 問題は一時間ごとに変わり、二十四時間ごとにリセットされる。問題パターンは千種類ほど存在し内容は多岐に渡る。


 入ってから一日経過するとペナルティが発生する。


〇二日目:魔法と気が八十パーセントまでに制限される


〇三日目:魔法と気が四十パーセントまでに制限される


〇四日目:魔法と気が使えなくなる。罠の強制発動の時間が一時間に短縮される。


〇五日目:気温が四十℃に上昇する。罠の強制発動時間が四十五分に短縮される。


〇六日目:気温がマイナス二十五℃まで低下する。罠の強制発動時間が三十分に短縮する。


〇七日目:気温五十℃とマイナス三十℃が一時間ごとにランダムで発生する。罠の強制発動が十五分に短縮される。


〇八日目:気温が六十度とマイナス四十℃が一時間ごとにランダムで発生する。罠の強制発動は常時。


 尚、同じ部屋に違うパーティーが入ってきた場合、ペナルティがあるパーティーの場合、より重いペナルティをもつほうになる。


 クリア報酬は、このダンジョンの知識と・・・・・・。



 どうするかな。


 御影が思う、レベル六十未満の中で最悪のケースだった。


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