御影の現状とフェリスとの交渉01
御影がダンジョンに入ってから六時間が経過した。
あれから分かったことは、一回間違えると、問題が変わるまで答えられない事。このダンジョンは人気がないことだ。
暇だったので、探知魔法で千個以上ある部屋全部を把握したが、人の反応は無い。
ついでにダンジョンのクリア部屋も分かったが、そこに行くのに四問正解しなければならない。
クリア部屋まで比較的近場で、スタート地点として運が良かったが、今のところ一問も分かる問題がない。
あてずっぽでこれまで三回答えたが、案の定全部失敗で、猛毒の霧に包まれたり、酸が降ってきた。
普通なら即死級だが、御影は無傷だ。
しかしここからでる手立てがない。
水のほうは魔法で何とかできるが、問題は食糧だ。
亜空庫に二日分の食料をいれてあったが、何日かかるか分からない今、非常に心許ない。
こんな事なら・・・・・・に渡さなければよかったな。
異世界時代、亜空庫に大量の食料をストックできる魔道具を持っていたが、帰還前に大部分をあげ、残った物はとある事情で今は無い。
あげるのをもう少し遅くすればよかったと後悔するが、無くなった物は仕方ない。
御影は気持ちを切り替え考える。
どれだけ節約しても五日で尽きる。
食事ができないと身体や精神に支障をきたす。
誰かが助けにくるのを待っているが、一週間後ならもってられるが、一ヶ月後、二ヶ月後ならかなりきつい。
それに学園の事もある。昇格試験に間に合わなくなるし、こないだみたいに誰かが危険な目に遭うかもしれない。
やばいな。
自分ではどうすることもできない。
久しぶりだな・・・・・・誰かに委ねるのは。
異世界では周りが敵だらけだった。仲間が一夜あければ敵になったり、何度も寝込みを襲われた。
信じられるのは自分だけ。そんな日が何年も続いた。
やがて、心は磨耗し、レジストを失敗し人形になり果て、ある人物に救われた。
その結果、人間以外の部隊を率い、転移した屑国を倒した。心にぽっかりと穴が開いたまま。
ここにきてからも思い出さない日はない。
でも、思い出す時間は少なくなっている。
というのも、この世界に来てから忙しく、良い出会い、ダンジョン、敵、退屈に事欠かない。
心に開いた穴も徐々に埋まりつつある。
それに御影自身も驚いていた。
しかし心の奥底、根本的な部分は変わらない。
『あの言葉』に囚われたままだ。
体力温存のため御影はゆっくりと目を閉じる。
頼みましたよ・・・・・・舞さん。
「もう一度言ってみろ」
御影がダンジョンに入ってから丸一日経過した。舞先生は根回しし、事務科の個室でフェリスと護衛の剛我とジュリと会合に望んでいた。
始めに、フェリスが事務科と結んだ契約の破棄と御影の救助要請をお願いするためだ。
これがないとアクションを起こせない。
破棄で、月一回の枠を戻し、救助要請で後々の色々な手続きで役に立つ。
逆に言えば、最低でも破棄がないと一ヶ月動けない。
そして、その事でフェリスが出した要求は。
「何度でも言ってやるの。やってもいいけど、メダル十枚を要求するの」
このメダルはフェイルゲームで使われるメダル。
教会の裏エース輝義を、教会派にメダル三枚で取り引きした結果、教会側が輝義を追放したことを考えると信じられないほど望外な値段だ。
「御影の契約主は貴様だ。本当なら取り引きする必要もなく、率先して協力するはずだぞ」
心の内を悟られないよう、舞先生は、無表情で努めて冷静にふるまう・・・・・・が爆発寸前だった。
「別に居ても居なくてもどっちでもいいの。ストレス解消が居なくなるだけなの。どこでのたれ死んでも関係ないの、むしろクラスを降格したり死ねばいいの」
「屑だな貴様は。御影に口止めされていたが言ってやろう。御影がこれまで貴様をどれだけ助けたと思っている。最初は初級ダンジョンのクリア、妨害が入る前に貴様の最後(三回目)のダンジョン予約に尽力し、貴様が気を失っている間にボスは御影が倒した。六月に貴様は暗殺者に狙われていた。覚えがあるだろう、『偶然の事故』で危なかったのを。そして、なにがなんだか分からずに助けられた。それは御影が事前に危険探知防御魔法を付与したからだ。暗殺者が直接手を出せなかったのは御影が見張っていたからだ。そして暗殺者は御影が倒した。七月の事件は貴様等も知っての通りだ。そして今も狙われている。貴様には御影が必要だと思うぞ」
舞先生は御影がどれだけフェリスにとって有用なのかを説明する。
御影が欲しい舞先生にとって、本当は隠したかったことだが、ここにいたっては仕方がない。
ここで御影の有用性を示せば、フェリスの性格からして必ず値をつり上げる。
そう思えば、ここで失うのが惜しくなる。
それを舞先生は狙った。
そして、フェリスの返答は。
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