第13話 真一と優香 高校2年目の春…いきなりの波乱

3学期も終わり、あっという間の春休みも過ぎ去った4月、入学式の翌日、始業式が行われた。

真一は2年生になっても、白木、浅田達と他愛もない話に花が咲く。

優香も村田・加藤・滝川、それに同じクラスの生徒とも仲良くしていた。


2年生になると、普通科目の授業は1年よりもやや少なくなり、専門学科の授業が増える。実習も週1で引き続き組まれている。

また、各種工業系のコンテスト等も2年生がメインで出場する。生徒会も2年生が中心となり、2年の2学期の始め頃から1年間が任期となる。また資格取得も1年から取得できるものがあるが、本格的には2年生からとなる。2年生の終わり頃には進路を考えなくてはならない。


2年生になっても坂本は相変わらず他のクラスの女子に告白したもののフラれた。傷心期間が始まった。クラス中、この話に持ちっきりだった。真一は感知していなかった。

この頃から真一は先生の手伝いや高山が所属する科学部の部活の手伝いを手広くしていた。真一が多忙の時は真一がお願いして高山や佐野山が代わりに手伝っていた。白木はオーディオ部や生徒会、先生の手伝いに実習に専念…とこちらも手広くしていた。そのため、下校時間も夜になることはたびたびあった。


放課後、図書館で男連中が話している。


藤岡「坂本、またフラれたって」

白木「またかいな」

寺岡「アイツももうちょっと相手の事考えたらいいのに…」

白木「どうせ、一目惚れみたいな感じやったんか?」

藤岡「それはわからんけど、おそらくその可能性は高いやろ」

浅田「アイツももうちょっと女子について勉強せんとなぁ」

佐野山「若いっていいよなぁ…」

浅田「佐野山、ホンマにお前、どの口でそんな白々しい言葉発するかなぁ。やらしいわ(笑)」


夕方、高校駅で真一と白木、優香と村田・加藤・滝川が同じ電車で帰ろうとしていた。 電車に乗り、こちらも話題は坂本の事だった。


白木「坂本、フラれたらしいな」

真一「らしいな。詳しくは知らんが、聞くところによるとあんたとこのクラスの子らしいな」

白木「◯◯やろ」

真一「あ、そう。その子知らんけど」

白木「ちょっとイケイケな奴やったと思う」

真一「あ、そう」

村田「フラれちゃったんか?」

真一「アイツ1年のときも白木のとこのクラスの子にフラれてたなぁ」

白木「2年連続やな」

優香「坂本くん、今どうしてんの?」

真一「ヘコんどってや。しばらくの間傷心期間やな」

優香「大変やね…」

真一「大変やと思うか? 全然思ってないやろ?(笑)」

優香「私、薄情者やからね」

真一「あ、そう」

白木「そうなん? コイツ(真一)はどうなんや?」

優香「手先が不器用やんなぁ?」

真一「悪いか?」


優香と真一はお互いをジッと見る。

白木は2人のやりとりにニヤニヤ笑う。

村田達も笑う。


優香「じゃあ真一くん、ガムちょうだい」

真一「なんや? 別にあげるけど」

優香は真一からガムをもらった。

優香「ガムは食べていいよ」

真一「は?」

優香「私が欲しいのはガムをくるんでいる銀紙」


そして優香はおもむろに銀紙をアルミ部分とガムが入っていた側の白い紙とに剥離させた。


優香「ほら❗」

と優香はどや顔で真一を見て、真一に剥離した紙を渡す。


優香「できるか?」


それを見て白木たちは大爆笑。


優香「出来んやろ?」

真一「やったろやないかい」


真一がムキになった。ガムを食べ、優香がやったように銀紙と白い紙とに剥離させようとするが、剥離するキッカケがない。イライラしてるのを優香は知っている。そして…


真一「こんなことせんでも(しなくても)生きていける」


と文句をいって諦めた。優香は真一が持っていたガムの包み紙をとって、またいとも簡単に剥離させた。

白木たちは大爆笑。真一はここでまた『手先が不器用』を披露したと同時に優香の『手先が器用』を披露したのだった。優香も思わず笑う。

電車が梅沢駅に到着し、村田・加藤・滝川が下車して帰っていった。

真一、優香、白木が空いたボックス席に座る。


白木「堀川、加島には勝てんなぁ(笑)」

真一「あんなん、別に生活で困ることやないやろ。別に出来んでもええねん」


優香は笑う。


優香「負け惜しみやん❗(笑)」

真一「うるさいなぁ…、そんな女の子やなかったのに、そんなにオレのアホを踏み台にして笑いたいんか?」

白木「まぁまぁ、そうムキにならんでも…(笑)」

優香「そうやなぁ…。仕方ないもんなぁ。手先が不器用なのは今に始まったことやないからね。でもいつでも誰かが助けてくれるとは限らないよ。その時は自分でやるしかないやんか? だから、少しは練習とかしたらどう? 別にガムの紙じゃなくていいから…」

真一「絶対せえへん(やらない)❗ 『できないことはしない』って決めてるから。ええねん、もうほっといてくれるか❗」

優香「ゴメンゴメン。ちょっと冗談キツすぎたな…」

白木「まぁ、悪気があって加島も言った訳やないから、女の子やし許してやれよ。お前ら幼なじみなんやから」

真一「……」

優香「ホンマにゴメンね…」

真一「ホンマに悪いと思ってんの?」

優香「え、…うん」

真一「ウソやろ?」

優香「ホンマやって」

真一「いま一瞬考えてたやんか❗」

白木「お前も鋭いぞ。女の子なんやから、もう少し優しく言うてやれよ」

真一「今、めちゃくちゃ腹立ってんねん❗」

優香「真一くん、ホンマにゴメンな。私、やり過ぎた」

白木「許してやれよ」

真一「白木、ちょっと黙っててくれ」

白木「………」

真一「ホンマに悪いと思ってるんやな?」

優香「うん…」

真一「わかった」

優香「ゴメンね。今度おかし買ってあげるわ」

真一「おかしはいい(いらない)って」

優香「まぁいいから…」

白木「なんやなんや?」

優香「白木くんには教えなーい」

白木「何それ?」

優香「幼なじみだけの秘密」

白木「堀川、何か分かるか?」

真一「知らん」


予想外の展開に優香は焦っていた。真一も腹立ってしまうことに自分でも内心びっくりしていた。優香は『罪滅ぼし』をどう考えているのだろうか?


ある日の朝。

真一は坂本・白木と高校駅から一緒に登校。


白木・坂本「おはよう」

村田・加藤・滝川・優香「おはよう」

真一「おはよう」

村田・加藤・滝川・優香「おはよう」

優香「あ、しん…真一くん」

真一「え?」

優香「今日、放課後って忙しい?」

真一「何?」

優香「放課後空いてる?」

真一「どないしたん(どうしたん)?」

優香「ちょっと用事があるんやけど…」

真一「うん、わかった」


真一は優香と別れ、真一は白木・坂本と一緒に登校する。優香も村田たちと一緒に登校する。


白木「加島、何かあったんか?」

真一「いや、知らんけど」

白木「お前に用事があるんやないんか?」

真一「あるみたいや。何や知らんけど。後で…やって」

白木「昨日のこと、加島結構気にしてたぞ。けどお前ら、ホンマに仲良いなぁ…。羨ましいわ」

真一「なんで?」

坂本「そらぁ、相手は女の子…というよりも、何でも包み隠さずハッキリ話せる人って、同級生とか友達の中でもなかなかおらんぞ」

真一「そうか? こんなもんなんちゃうん?」

白木「それはお前と加島だけや」

真一「そんなことないって」


一方、優香たちは…


優香「昨日の帰りの電車の中でな、ガムの包み紙を剥離させて、堀川くんが不器用やってわかってて堀川くんがやってたやん?」

滝川「うんうん」

優香「で、3人が梅沢で降りたあと、実は私、堀川くんを怒らせてしまったんや」

加藤「なんで?」

優香「手先が不器用なのは今に始まったことやないからね。でもいつでも誰かが助けてくれるとは限らないよ。その時は自分でやるしかないやんか? だから、少しは練習とかしたらどう? 別にガムの紙じゃなくていいから…って言うたら、『絶対せえへん(やらない)❗ できないことはしないって決めてるから。ええねん、もうほっといてくれるか❗』って怒らせてしまったの」

加藤「そうなんや…」

優香「それで、すぐに謝ったんやけど、ホンマに怒らせてしまって、正直初めて怒らせてしまって、私、びっくりしてしまって…。慌てた」

村田「それで、堀川くん許してくれた?」

優香「今度、私が『埋め合わせ』することにした。堀川くんは『もういいから』って言ってくれたけど、それでは今度、私の気持ちが収まらんから…」

滝川「それでさっき堀川くんに声かけたんや」

優香「うん。時間つくってもらった」

村田「そうかぁ。で、何するの『埋め合わせ』って?」

優香「幼なじみだけの秘密」

村田「デートするんか?」

優香「しないよ」

加藤「何するの?」

優香「秘密」

滝川「お詫びのチューとか?(笑)」

優香「それは絶対ないわ❗」

村田「ゆうちゃん、堀川くんと幼稚園の時にキスしたことあるん?」

優香「あるわけないやん」

村田「これだけ仲良かったら、キスしてても違和感ないけどなぁ…」

優香「ないよ❗ そんなん堀川くんの耳に入ったら、また堀川くん怒るよ」

加藤「でも、ゆうちゃんは堀川くんの気持ち、よくわかるんやねぇ。私も幼なじみのお兄ちゃんが近所におってやけど、そんなことないよ」

優香「幼稚園の時、席が隣どうしやったからかなぁ? ずっと堀川くんがしゃべったわ(笑)」

村田「堀川くんがゆうちゃんのこと好きなんとちゃうか?」

優香「それはないわ❗ ただ隣の席やっただけで、たまたま話し込んでただけやし…」

滝川「これから先、何が起こるかわからんから、2人が付き合っても自然やと思うで」

優香「また妄想してるー❗」


女子の方は『恋の話』になりつつあった。


放課後、優香は図書館で真一を待っている。


優香「あ、高山くん、堀川くん見かけなかった?」

高山「あぁ、実習やったから制服に着替えてると思う」

優香「そっかぁ…。ありがとう」


しばらくすると、村田・加藤・滝川と寺岡・藤岡・佐野山が図書館に来た。


滝川「あれゆうちゃん、堀川くん待ってるの?」

優香「うん」


そのあとしばらくして真一が図書館にやって来た。

高山「おい堀川、加島さんが待ってるぞ」

真一「え?」

藤岡「堀川、幼なじみがお待ちですよ❗」

真一「何、何?」


しばらく考えて思い出した真一。


真一「あ、そうか。えーと用事って何やった?」

優香「ちょっといい?」

真一「あぁ」


優香は真一を連れて図書館を出る。


2人が図書館を出たあと、残った男女は真一と優香について話す。

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