第11話 晩秋~師走 友達と過ごす

9月の体育祭も終わって、今度は中間テストと文化祭。中間テストが終わると、早速文化祭の準備が始まる。


真一は高山が所属する科学部の部活での文化祭の出し物製作を手伝っていた。科学部は銅とスズを高温で熱し溶かしたもので青銅鏡を作ることにした。プロパンガスでは温度が低いため、ブタンガスを使って『るつぼ』で銅線とスズを熱して溶かす。銅線は電気学科が実習で使用済みの電線の被服を剥ぎ取って再利用した。大きい物を作るのに、石膏で型をとる。しかしなかなか難しかった。


白木はオーディオ部に所属しており、アンプスピーカーを製作していた。


佐野山と藤岡はラジコン部に所属し、ソーラーラジコンカーの製作中。


寺岡は実習で製作中の相撲協議ロボットの製作に専念し、文化祭でも展示する。


坂本は各部の雑用係に呼び出されていた。手が空いていれば科学部で手伝っていた。


一方で優香たちは特に部活は所属していないので、もっぱら帰宅部。村田は藤川と順調に交際してデートをくりかえしていた。


文化祭当日、各部活の出し物を見学。真一は優香にお願いして『サクラ』役を願い出た。優香が快く引き受けてくれ、村田たちにも手伝ってもらった。

文化祭も無事終わり、少しだけ化学実験室で打ち上げをした。

おやつを少し食べて、缶コーヒーまたはジュースを飲んで終了。


文化祭が終わると、また通常の学校生活に戻る。来月の期末テストが待っている。


ある日の帰り道、真一は久々に1人で電車に乗っていた。すると、真一の向かい側で同じ高校の女子2人が真一を見ているようだった。視線を感じた真一は、目を合わさないように向かい側の2人をチラ見した。すると、真一が知らない女子生徒だった。


真一(なんやねん、ゴミでも付いているんか…)


と、真一はさりげなく顔を拭ったが、何も付いていない。しかし向かい側の女子生徒2人は真一をずっと見ているようだった。

正面を向くと顔をあわせてしまう。顔合わせないようにしようと、他の席に移動しようとしても他の席は空いていない。仕方なく真一は腕組みをして寝た。

電車が南駅に着くと、真一の後ろに先程の女子生徒2人が南駅に下車、改札を出ようとしている。真一は気持ち悪くなり、そそくさと改札を出て、南駅から自転車に乗って帰っていった。


真一(何者やあの2人は…❗)


首をかしげながら駅を後にした。


期末テストも終わり、冬休みに入った。真一はクリスマスに風邪をひいてしまい、自宅で寝ていた。すると優香から電話がかかってきた。


母親「真一、優香ちゃんから電話」

真一「2階で電話とるわ」

真一は2階の部屋から電話をとる。

真一「もしもし」

優香「もしもし…クリスマスに風邪ひいて勿体ないで❗」

真一「しゃあない(仕方がない)やん。こればっかりは…」

優香「サンタさん来てくれへんで」

真一「サンタさんには何も頼んでないよ。何か頼んだんか?」

優香「別に…。もう子供やないから」

真一「実はぬいぐるみが欲しい…とか頼んでんのとちゃうの?」

優香「頼んでへんわ❗」


真一は笑う。


真一「で、何か用か?」

優香「風邪ひいたって、噂で聞いたから、大丈夫かどうか確認しただけや」

真一「心配してくれて、悪かったな…」

優香「別に心配してじゃないから」

真一「なんや、クリスマス寂しいんか?」

優香「ウチはお姉ちゃんも新次もいるから、にぎやかですぅ。しんちゃんは一人っ子やから、寂しいクリスマスなんでしょ?」

真一「クリスマス言うたら、ケーキ屋の陰謀やん。ケーキ食う日やんか」

優香「風邪ひいてて食べれるの?」

真一「だいぶ楽になったから、食べれる」

優香「そっかぁ…」

真一「わざわざ電話くれて悪かったな…」

優香「ううん、いいよ」

真一「どうした、様子が変やぞ」

優香「(周りの音が聞こえる)…もしもし、あのな、ここ最近忙しかったから、なかなかゆっくり話してへんかったから…」

真一「そういえば、そうやったなぁ。なんや、寂しかったんか?(笑)」

優香「暇やったから電話しただけ」

真一「家でクリスマスパーティーしてへんの?」

優香「したよ」

真一「よかったやんか」

優香「うん…。じゃあちょっと早いけど、また来年もよろしく」

真一「こちらこそ、来年も器用なことはよろしくお願いします(笑)」

優香「なにそれ❗」

真一「器用なことはできないので、優香ちゃんにお願いします」

優香「幼稚園の時に悪い癖つけてしもうたなぁ。あの時手伝わな良かった」

真一「コラコラ、そんな事言うたらアカン❗ そんな悪い子じゃなかったで、優香ちゃんは❗」


と、いつもの掛け合いがあったクリスマスの夜であった。

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