第22話:特命職員としての初仕事

「では、これからの話をしようか」


 私たちは今、ギルドの応接室に来ていた。特命職員の話を受けたので、契約内容を確認する為である。


「表向きは通常の冒険者扱いだ。ギルドカードには役職名を入れさせてもらうが、ギルドの受付の設備でしか見られないように細工をさせてもらう。そうすれば職員だとバレる事は無いので、普段はいつも通り冒険者をやっていてもらって構わない」


「はい」


 要は覆面職員扱いか。


「それと、これを渡しておこう。ギルド職員である事を示す紋章だ。万が一の時にこれを見せる事で、私が君たちの身分を保証する事の証明になる」


 目の前に置かれたものは、ギルドの紋章が刻まれたバッジだった。私はそれを受け取った。


「給料については、通常の職員よりも若干少ない。だが、私からの頼みを達成してくれればその分上乗せするよ」


 報酬も予想通りであった。指示がある時以外は普通に冒険者をやるのだ。それくらいで妥当だろう。


「では以上だ。解散」


「⋯⋯え?」


「ん?何か質問でもあるかね?」


「いやいや。雇用契約の書類とか書かなくて良いんですか?」


「必要無い。受付でカードを渡してくれれば契約は完了だよ」


「⋯⋯そんな簡単で良いんですか?」


「心配する事は無いだろう。それを聞いてくる時点で、君は悪人にはならないと分かる」


「⋯⋯⋯⋯」


「⋯⋯では、早速一つ頼まれてはくれないかな?それを達成する事で、契約の証としよう。君たちの実力も測れるしね」


「⋯⋯分かりました。受けます」


 それならまだ納得出来るか。


「よろしい。依頼内容は『巡回』だ。街外れの西にギルド管轄の迷宮ダンジョンがある。そこに行って異常が無いか見回ってきてもらいたい」


「⋯⋯迷宮の巡回ですか」


「うむ。あの迷宮は全十二階層。その最深部に出現する魔物が高価な鉱石を保有していて、それがとても希少価値が高いものなのだ。それを狙って迷宮を独占しようとする不届き者がたまに出るので、時々調査員を派遣しているのだが、それを今回は君たちにやってもらう。良いね?」


「はい。分かりました。受けさせてもらいます」


「期待しているよ」


 こうして依頼を受けた私たちは、早速迷宮へと向かった。

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