第6話 食堂は酒場でもある

ガチャンガチャンガチャン、ガシャッ


静かな店内に武器や防具の擦れる音が響く。


「客が誰もいねえようだが本当にこの店でいいのか、おい?」


「おう、ここだここだ。ギルドの酒場で聞いた話だから間違いねえ。エールと食いもんが超うめえっていう評判だぜ」


「おい、そこの姉ちゃん!席は適当で良いのか?」


如何にも冒険者風の厳つい三人組の男達がアイラさんを呼びつける。現代では完全に〈やから〉客に当たるんだろうけど、異世界の酒場ではごく日常的な風景である。


「いらっしゃいませーっ、宿泊の方以外はテーブルチャージをいただいてますが、お席は自由ですよ〜」


初級とはいえ既に冒険者のアイラさんは、全く臆することもなくフレンドリーに話しかける。


「さすがに綺麗な姉ちゃんがいる店はひと味違うな、まっ構わねえよ今日は稼いだからな。とりあえずエールを三つ貰おうかっ!」


「毎度あり〜、ユーゴ君エール三つねーっ!」


「はい喜んでーっ!」


「アハハ何それっ?変だよ」


(しまったっ!緊張してつい居酒屋風に答えてしまった〜、恥ずっ。)


「はい、ただいまーーっ」


飛空亭は料理が有名なのは勿論だが、エールにも父のちょっとしたこだわりが表れている。当然冷蔵庫はないので日本のビールの様にキンキンに冷やすことは出来ないが、いわゆる常温よりも少しだけ冷たい。


イギリスのパブと同じく、地下室からエールを汲み上げている為だ。季節によって若干変わるが大体7°Cから13°Cくらいで提供している。


冷蔵庫のないこの世界でこんなやり方を考えつくとは、やはり先祖である発明家ジエリ・トマスの血は争えない。さらに陶器のジョッキがきめ細やかでクリーミーな泡を作り出す。


「お待たせしました〜」


カチャカチャ、ゴトッ


「よっしゃあ〜、来たーーっ」


「それじゃあお前ら、今日のクエスト成功に〜っ」


「「「かんぱーーーーいっ!」」」


ゴクっ、ゴクっ、ゴクっ?、ゴキュっ!?


「「「ーーーーーーーぷはあああっっっ」」」


ドンッ、ドドンッ!


「「「何じゃこりゃあーーーっ!?」」」


「旨すぎるだろっ」


「マジかよっ」


「お代わりっ!」


「俺もっ!」


「俺もだっ!!」


「お代わり三ついただきましたーっ!」


客席のアイラさんからエールの追加オーダーが入る。そしてこの後アイラさんに乗せられ、期待のボルテージが上がった三人は大量に料理を注文するのであった。


ーーーーーーーーーーーー


このテーブルのお客さん達、見た目は厳ついけど気前の良い人達で飲むわ食うわ。一時間弱で大銀貨2枚と銀貨4枚のお会計であった。


最高のエールと旨い料理で気分が良くなったのか、たいして接客しなかった僕までチップを貰ってしまった。とは言っても大銅貨5枚だけど。


貨幣価値がまだ染み付いてないので、僕は暫定的に日本円に換算することにしている。


銅貨が10円、大銅貨が100円、銀貨が1,000円、大銀貨が1万円、金貨が10万円だ。普段使う機会はまず無いだろうが大金貨と白金貨まであるらしい。


大銀貨2枚と銀貨4枚だと一人あたり8,000円のお会計になるので、かなり単価の良いお客さんだったと言える。


ちなみにアイラさんは最後は友達の様にハイタッチをしており、しっかりとチップに銀貨を3枚も貰っていた。エールを注ぎまくっていたのは僕なのに……食いしん坊の戦士とはいえ、やっぱり可愛い女子は特だ。


絶対に将来、異世界キャバクラを開いて儲けてやろうと僕は密かに心に誓ったのだった。


「んっ?何か言った?」


「いえっ!何も言ってません!」


どんなに可愛くともさすが戦士、その勘は侮れない。


一見さんが会計を済ませる頃、冒険から帰った宿泊客や常連客でごった返し、店はあっという間に満席になっていた。


ーーーーーーーーーーーーーー


参考価格


テーブルチャージ 大銅貨5枚 500円

こだわりのエール 大銅貨8枚 800円

つまみ 大銅貨5枚〜 500円〜

アイラのスマイル 結果、銀貨3枚 3000円


10円 銅貨

100円 大銅貨

1000円 銀貨

10000円 大銀貨

10万円 金貨

100万円 大金貨

1000万円 白金貨

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