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「ふーむ。こうなったらやはり、レティスやツァドを使うほかないようですね――」
「いや、それは使うなって言ってんだろ!」
どごっ! 再び呪術バカの頭をゴミ魔剣で割りながら叫ばずにはいられなかった。なぜこいつはすべてを破滅させる方向に全力なのか。
「え? じゃあ、あのラファディさんはどうするんですか? あのまま放置しておくのは、本人のためにも周りのためにもさすがによくないでしょう。あきらかに異常な状態ですよ。早く僕たちがなんとかしてあげないと」
「異常者のお前に言われてもな……」
説得力がなさすぎる!
「はー、弱りましたねー。トモキ君の攻撃も、ヒューヴ君の攻撃も、僕の呪術も効かないんじゃあ、もう完全にお手上げですね。いやあ、困った困った。ここはやはり、レティスやツァド――」
と、呪術バカがまた物騒な単語を口走った瞬間だった。
「そこまでよ! ラファディ!」
背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
はっとして声がしたほうを見ると、そこには二人の女が立っていた。一人はサキ、もう一人はシェラだ……って、こいつら、今までどこ隠れてたんだよ。
さらに見ると、二人は背中合わせに身を寄せ合い、うっすらと体を発光させていた。まるで何かのエネルギーをため込んでいるような……。
と、直後、二人は手を前に突き出し、ラファディに向けて青白いビームを放った。うおっ! 俺はとっさにそれをよけた。
俺の攻撃を瞬時に無効化する反応速度を持つ液体魔剣ラファディも当然それをよける――が、その動きは突然ぴたっと止まった。突如周囲の空間に現れた無数の魔法陣によって動きを封じられたようだった。これも女たちが用意したものか。いつのまに……。
そして、青白いビームは静止した液体魔剣ラファディに命中した。しゅびびびびっ!
「グオオオオオオオッ」
直後、獣の咆哮のような絶叫がこだました。お、何か知らんが効いてる効いてる。
やがて光が消えたとき、そこにはもう魔剣の形をした液体はなかった。ただ氷の塊があるだけだった。
「なるほど。相手が水だけに、凍らせて片づけたってわけか。やるじゃん」
俺は拍手しながら二人の女に振り返った。二人ともかなり魔力を消耗したのか、疲れ切った様子で下にうずくまっていた。
「い、今のは、私の最強奥義、
シャラは青息吐息で語る。今まで一度も使ったことがない術なのに「私の最強奥義」ってなんだよ。
「まあ、よくわからんが、名前からして敵を氷漬けにして封印するものなのか? あの大氷結の間にいたやつらみたいに?」
「そうね。まさにそういう術よ」
と、答えたのはサキのほうだった。今はもう全裸に鎖といういつもの変態姿に戻っている。蛇は消えたか。
「実は私は、ラファディが自分の正体を明かした時から、ひそかにシャラさんと魔法の通信術で話し合って、この術を使う機会をうかががっていたの」
「えっ、いつのまに……」
ラファディが正体を明かした時って、この広間にやってきてすぐのときか? そんなときから、二人の女はこの術の準備をしていたって言うのかよ。
「じゃあ、お前たちが、それぞれあてがわれた敵に時間を取られて、俺たちのことはガン無視だったのも演技だったのか?」
「と、当然でしょう! あんな炎野郎に手こずる私じゃないわっ!」
と、シャラは声を震わせながら叫んだ。うーん、本当かなあ?
「ただ、この術は相当な魔力を必要とするもので、私たち二人の魔力も合わせても発動できるものではなかったから、足りない分はサンディーから吸わせてもらったわ」
「あ、そういえば、さっきまでなんか肩が重い気がしたんですよね。なるほど、サキさんたちに魔力を吸われてたせいだったんですねー。はは」
と、けろっとした顔で笑う呪術バカだった。この男、鈍いにもほどがある。
「ふーん? まあよくわからんが、結構手間がかかって大掛かりな術みたいだな。これならさすがの錬金クソ野郎もおしまいか。なんせ本体は水だしな。凍らされたら一巻の終わりだよな。はっはー」
俺は高笑いした。今までなんやかんや面倒なことばかりだったが、これでこの戦いは完全勝利で、討伐ミッションコンプリートか。やったぜ。
と、思ったわけだったが……直後、
「……グ、グオオオオ!」
といううなり声とともに、氷の塊がゆっくりと動き出したではないか!
「ウソ!
シャラは愕然としている。やはりこいつ、とんでもねえ化け物みたいだ。
「ちっ、まだ終わらねえのかよ!」
めんどくせえなあ、もう! 俺は再びゴミ魔剣を強く握りしめた。
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