第15話 鈍感系ヒロイン
ティアラのいないキリア城の
その日もカイは机に向かっていた。
「カイ様、いかがなさいましたか、そんなに難しい顔をして」
「そんな顔してたか?」
「はい、体調でも
「いや、別に平気だ」
カイは机の上に巻物をひろげていた。
それはとある出来事で手に入れた
「確か、ティアラ様の故郷での事件で手に入れられた物でしたか? 魔神と神について書かれていたっていう」
「ああ。かなり
その巻物に書かれていた内容は7柱の魔神と7柱の天使、そしてそれに対応する神器について書かれていた。
「魔神に対応する神器が『魔神器』、天使に対応するのが『天神器』でしたか? どうして神に対応する神器はないのでしょうか?」
「神ってこの世界を
「そんなとこまで
カイはマグナスにも巻物を見せる。
マグナスはその巻物に視線を落とし、
「『魔神教』は何がしたかったのでしょうか? 単に力を
「『邪神教』が全ての原因だ。今なら分かる。アイツらもアイツらなりに
「カイ様は何かいい方法がありますか?」
「それを聞くか? あります、なんて答えられたら苦労はないな」
マグナスも肩を落としながら苦笑する。
「まったくです。ですが、
かなり重要な案件だが、今のカイにはこれといってやる気がしなかった。
というのも、魔神や天使が記された貴重な書物でさえ、書類整理の
「外が騒がしいですね。何かあったのでしょうか?」
「どうせ、ワイルドボアの大群が出たとかだろ。久しぶりに外にでも行くかな」
机に突っ伏し、顔だけ外に向けるカイは上空にいる少女の存在に気付いた。
遠目だからシルエットしか分からなかったが、今のキリアに空を飛ぶ少女など一人しかいなかった。
「ティアラが帰ってきたのか」
「ティアラはキリア国民から絶大の支持を受けてるようですね。最近では私の
「そういう意味なら一番影薄いのってエドじゃね?」
今、キリアにおいて一番有名なのは王子であるカイなのは言わずもがな。
それに続いて二番目、三番目にミーシャ、ティアラと続く。
キリアには女性騎士がいない
そしてマグナス、エドと続いた。
「いえ、アイツは
年下であるにもかかわらず、『アイツ』・『奴』呼ばわりして
「そうだなーー」
と答えたのだった。
※
その日の夜。
夜風が肌をなであげ、鳥肌が立ってしまうほどだった。
そんな時間にカイはキリア城の中の特別な空間に来ていた。そこはカイが各地から集めた花が植えられた花畑だった。
100人近く入れるようなベランダの景色は
「ここに来ると
この
あの日の光を受けて七色に
もちろん国の予算には手を付けなかった。
「……ここの星も……
その空間に足を踏み入れた者がいた。
「ティアラか。
「……ただいま……」
ティアラはキリア城に部屋が与えられていた。
今、ティアラは厚手の寝巻に身を包み、目元にはクマができていた。
「もう子供は寝る時間だぞ」
「……子供扱い……しないで……カイだって……」
「これは仕方ないだろ。夜に水やらないといけない変わり者がいるんだから」
身体がウトウトと上下するティアラを見かねたカイは話を切り出した。
「ここに何の用だ?」
「……確かめたい……事があって……」
「確かめたい事?」
何度か言おうとするが
それだけ彼女にとっては重要な事なのだろう。
カイもせかさずに次の言葉を待ち続けた。
「……私は……役に……立ってる?……」
「……」
カイは返答に困った。
ティアラが欲しい言葉を知っていたカイだったが、それを言ってもティアラはお
星空が見守る中、カイはティアラの望んでいる言葉とは真逆の言葉をぶつけた。
「……お前は役に立ってない」
「!?」
「お前をマリアートから連れてきたのは魔術師として役立つと思ったからだ。それがどうだ。サイラスとの戦いじゃ、ドラゴンを一頭も倒せず、ギフテルで暗躍してた暗殺者も捕まえられず、サザンのときはオーガに大敗した。
「…………」
ティアラは何も言い返さない。
それを事実として受け入れているからだ。
「もし一般兵だったら、すぐにでも故郷に送り返しているところだ」
ティアラは
カイとしても心苦しい物があった。
「戦闘面での
カイはある部分を強調して言った。
「だけど、ティアラはキリアにないといけない存在だ。それはお前も分かっているんだろ?」
ティアラが帰ってきたキリア。
彼女を待っていたのは
それが一番ティアラの存在を認めていた。
カイは分かっていた。
ティアラという少女は自己評価が低く、カイにその評価をゆだねている
「ティアラがドラゴンからキリアを守ってくれなかったら、キリアの国民は多く死んでいた。スーさんじゃそんなことはできなかった」
キリアを
「ティアラがいたから影も形も掴ませなかった暗殺者の正体に近づけた」
影に
「ティアラがいなかったら、サザンのときも獣人の
獣人の
「そして何より……、お前がいなかったら、キリアに活気は取り戻せなかったかもしれない」
カイ達も知らなかったが、実はキリアの復興に
数十人分の働きをしてくれて助かっていると、国民からお礼の手紙が大量にきて、カイ達は初めてそのことを知ったのだ。
「ティアラがいてくれて俺達も助かってる。それに……」
カイは言葉を一度区切る。
「さっき言ったことと矛盾してるけど、『役立つ』とか『役立たない』でお前を連れてきたわけじゃない。ティアラが故郷を出てまで本気でやろうとしてることがどんなものか知りたかったってのもあるし、フェルダさんにも言われたからな」
先程まで
「え、ええと、つまりだな。ティアラはもう少しだけ自分のことを好きになっても良いと思う。……結局何がいいたんだろうな、ハハハ」
ティアラは肩を
それが何を示すのかカイには分からなかった。
帽子の縁が
「ティ、ティアラ? な、何か言ってくれないか? 気まずい……」
※
私はカイの
いつも他人からの評価ばかり気にして、カイにそれを
カイの言葉に返答ができなかった。
「戦闘面での
カイはある部分を強調して言った。
私は身体が固まった。
「だけど、ティアラはキリアにないといけない存在だ。それはお前も分かっているんだろ?」
カイから出てきた言葉に今度こそ返答に困ってしまう。
私が必要とされてる?
(
レヴィがそんなことをぼやいていたが、私には全く分からなかった。
「ティアラがドラゴンからキリアを守ってくれなかったら、キリアの国民は多く死んでいた。スーさんじゃそんなことはできなかった」
だけど一匹も倒せなかった。
「ティアラがいたから影も形も掴ませなかった暗殺者の正体に近づけた」
だけど捕まえるどころか、返り討ちにあった。
「ティアラがいなかったら、サザンのときも獣人の猛攻に耐えられなかった」
その後出てきたオーガには手も足も出なかった。
「そして何より……、お前がいなかったら、キリアに活気は取り戻せなかったかもしれない」
いや、キリアに活気が戻ったのはカイがキリアのために
レヴィは私の考えを感じとったのか。
(ティアラがいなかったら、
周囲の評価に私は気付くことすらできなかった。
「ティアラがいてくれて俺達も助かってる。それに……」
カイは言葉を一度区切る。
「さっき言ったことと矛盾してるけど、『役立つ』とか『役立たない』でお前を連れてきたわけじゃない。ティアラが故郷を出てまで本気でやろうとしてることがどんなものか知りたかったってのもあるし、フェルダさんにも言われたからな」
カイの言葉に胸から温かい物がこみあげてくる。
私って泣いてばかりだな。
「え、ええと、つまりだな。ティアラはもう少しだけ自分のことを好きになっても良いと思う。……結局何が言いたいんだろうな、ハハハ」
今度こそ言葉が出なかった。
口を開けば、それと一緒に他のものも流れ出てしまいそうだった。
代わりに私は帽子の縁をギュッと握る。
「ティ、ティアラ? な、何か言ってくれないか? 気まずい……」
言えるわけない。
だから、私は帽子を取って顔を見せるのだった。
きっと喜びが
「え、え、や、ヤバい。な、泣かないで。今のは俺が全面的に悪かった。言い方がダメだったよな。子供に言っていい事じゃなかった」
「な、泣いてない。子供でもない!」
レヴィは
(鈍感系同士をかけ合わせたら、感動のシーンも
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