第1話 サザン攻略作戦
暗殺者との1件を終え、カイ達一行はギフテルからキリアに戻ってきた。
「よくご無事で。本国から知らせがあったときは、カイ様の身に何かが起きたのではないかと心配でした」
城門でカイを出迎えたマグナスが一礼した。
マグナスはサイラスとの戦争で左腕を持っていかれて、今は右腕だけで生活している。
「心配をかけた。エドはどうした?」
エドはキリア軍の副団長に位置する。
エドとマグナス。
カイが離れている間は、2人にキリアのことは任せている。
マグナスは両目をつぶり困ったように、こめかみを指で押さえる。
「いつも通り……、いえエドは今朝から寝込んでおります」
「倒れたのか、あのエドが?」
「ええ…………。エドはカイ様が離れている間に復興を終わらせて、驚かせようとしていたらしく、
「あとで酒でも持っててやるか」
「それなら私がやりますが」
「いや、エドには伝えなきゃいけないことがあるんだ。マグナスも休んでくれ」
マグナスが苦笑いを浮かべる。
「実は暗殺者の1件が片付いたことをギフテルの使者から聞いた際、大量の書類がきまして、今はその整理に追われているのです。休んでいる暇なんかありませんよ」
※
ラミア、クロ、ミネルバ達と別れたカイは
そんなカイを待ち受けていたのは、
「ナッ……」
「中身を
視線の先には床を埋め尽くすほどの書類が積もっており、中には
「ちょっと前にサイラスの一件の書類が片付いたばかりだったのに」
「申し訳ありません。エドが倒れてから、復興の現場に顔を出さなくてはいけず、書類の整理が進みませんでした」
マグナスの銀色の前髪に隠れたエメラルドグリーンの瞳はくすんでおり、目の
「いや、むしろ無理をさせた。この書類は俺が片付けておくから、マグナスは休んでくれ」
「あ、ありがとうございます」
いつも女性を
※
書類が片付いたときには、帰国してから数日が経過していた。
一日休んで回復したマグナスも加わり、作業が
「やっと寝られる……。あれ?」
自室に戻ってもクロとラミアの姿はなかった。
「エルの所か……。アイツらも頑張ってるんだな」
ラミアとクロが向かったのはおそらくエルメローゼの所だ。
自室に戻ったカイはベッドに身を投げる。
そして自身に言い聞かせるように独り言を
「今回は一番精神に応えたな……。けど、ここからが本当の戦いだ。気は抜けないな」
久しぶりの休息にカイはゆっくり両眼を閉じていくのだった。
※
『……が……。 ……が……』
カイが目を覚ました。
目の前には1人の影があった。
しかしその影からは異常なほどの
「君は?」
カイの質問を無視して、影から声がもれる。
その声は女性の落ち着いた物であり、そうであるが故に殺気や憎悪がより際立って聞こえる。
『あの人が…… あの人が……』
その影がカイに大きな声で
『ママがあの国に…… 獣の国にいる……』
「獣の国? サザンの事か?」
カイと影の会話は全く成立しない。
『絶対、助ける……!』
影の言葉を最後にカイの意識が遠のいたのだった。
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