第79話 再戦、アオスVSカイラ
再び行われる〝クラス代表戦〟まで残り三分を切った。
俺は控室から会場へと向かうべく、座っていたベンチから立ち上がる。
そこへ……。
「アオス、頼んだぜ!」
「アオスさんならきっと勝てますから!」
「……ま、適当に頑張りなさい」
シン助、九々夜、トトリがそれぞれ檄を送ってきた。
「結果よりも悔いのないような戦いをするように」
またアリア先生も、変にプレッシャーをかけないように言ってくる。
「じゃあ、行ってくる」
みんなが見送ってくれる中、俺は会場へと突き進んでいく。
長い廊下の先からは、眩い光と観客たちのざわつく声が聞こえてくる。
そして俺が会場に姿を見せた直後、堰を切ったかのような歓声が大気を震わせた。
「待ってたぞー、アオスーッ!」
「エリート貴族なんてぶっ飛ばせーっ!」
「頑張ってぇ、フェアリードくぅぅんっ!」
俺を応援する声とともに、対面にある入口からもカイラが姿を見せ、
「リベンジだぜ、カイラーッ!」
「貴族の恐ろしさと強さを見せつけてやれ!」
「きゃー! カイラ様ぁぁぁ!」
こんな感じで両者それぞれに声援が送られている。
俺とカイラは中央にいる審判役の教師のもとへ辿り着く。
そこで再びカイラと真正面から向き合う。
……なるほど。今度は油断なんてないって顔だな。
カイラからは、前回とは違ってただならぬオーラを感じる。まるでこれから戦争にでも赴く兵士のようだ。
気合と緊張が良い具合に混在している。
それに前と同じような軽口も、試合前に言ってこない。ただただこちらを睨みつけているだけだ。
俺たちは教師に身体を向ける。
「二人とも、二度目だから要領は分かっていると思う。自分の持てるすべてを出し切って戦うように」
「「はい」」
「よし、では離れて」
俺とカイラは、その場から少し距離を離すように歩いたあと、踵を返してまた対面する。
大体十メートルくらい離れているだろうか。
教師が観客席にいる校長に目配せをすると、校長は許可を出すように頷きを見せた。
「……ではこれから〝ダンジョン攻略戦代行・クラス代表戦〟を行う!」
以前とは違い、俺は身体にかけている弓を手に取り、いつでも扱えるように準備を整える。
カイラもまた自慢の槍を手放すことなく、両手でしっかり握り身構えた。
両者の気迫が迸り、空気がピリつく。
そして始まるその瞬間を、観客たちも息を飲みながら待っている。
静寂が周囲を支配する中、ようやくその時が訪れる。
「――始めっ!」
教師の合図で、まず先に動いたのはカイラだった。
凄まじい魔力を身体から放出した直後に、大地に穴が開くほどの踏み込みで俺に接近してくる。
その速度は、俺が放つ矢のように鋭く速い。
「でやぁぁぁぁぁぁぁっ!」
向かってくる勢いそのままに、俺に向かって放たれる一閃。
俺は回避のために跳躍し、すぐさま攻撃を放ったあとの隙を狙い矢を放つ。
しかしカイラは俺の行動を予測していたかのように、上を見ることもなくバックステップをしてかわすと、今度は右手を上空に向けて火球を放ってきた。
「――《万物操転》!」
実体のある矢ではなく、大気の矢を放ち、向かってきた火球を弾き飛ばす。
そのまま地上に降り立つ俺に、カイラがまら勢いよく攻め込んできて、槍による連撃を繰り出してくる。
打ち下ろし、薙ぎ払い、突き、それらを、常人には目にも止まらないスピードで打ち出してくるのだ。
だがそれを俺は軽やかに身を翻しながら回避し、カイラが槍を引く一瞬の間を狙って矢を放つ。
しかしカイラもまた矢を肉眼でハッキリ捉えながらかわし、そのあとすぐにカウンターの一撃が俺を襲う。
――ギギギギギギィッ!
俺が奴の攻撃を弓で受け、互いに一歩も引かない形で睨み合う。
「「「「「お、おおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」」」」
その息も吐かせぬ攻防に、半ば唖然となっていた観客たちも一気に震え上がる。
そんな状況の中、俺はようやくカイラと対話することになった。
「……やはり気に食わないな、フェアリード」
「そんなもの、俺が生まれてからずっとじゃなかったか、ジェーダン?」
いまだに力比べをしているが、カイラが魔力でさらに身体強化をして俺を押し込むように優勢を取ってくる。
「君は常に僕の下にいればいいんだ。表に出てくるな!」
「悪いが、俺にもやりたいことがある。その注文には応えられないな!」
今度は俺が力任せに弓を振り、カイラは抵抗せずに後ろへ飛んで距離を取った。
「フェアリード、今日ここで、僕とお前の実力をハッキリさせる。もうマグレは起こらない。正真正銘、この勝負に勝った者が強者だ!」
「……望むところだ。たまにはこういう感情的なバトルも良い。……勝たせてもらうぞ!」
俺が矢を放つと、カイラが槍で切り払ったあとに火球を放ってくる。それを俺が大気の矢で弾き飛ばし、さらにはそのまま大気の矢をカイラへと放つ。
「それはもう見た!」
カイラがサイドステップで矢をかわしニヤリと笑みを浮かべる。
「見えない矢は確かに脅威だが、しょせんは真っ直ぐしか飛ばせない代物だ。放ってくると分かれば避けるのは容易い」
言ってくれる。確かに言っていることは合っているが、それでも簡単にかわせるものではないから受験の時に、誰一人としてまともに回避できずに沈んだのだ。
性格はともかく、やはり実力があるからこその次席なのである。油断をしない天才は、さすがに仕留めるのも一苦労してしまう。
「さあフェアリード、今度は僕の技でお前の顔色を変えてやるよ」
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