五章の登場人物紹介

主人公とその周りの人物



虎藤 燈とらふじ あかり


四章で蒼に譲っていた主役の座を取り戻して返り咲いた我らが主人公。

蒼天武士団に舞い込んだ初の依頼である百合姫の護衛をこなすべく、仲間たちと共に鷺宮領へと向かう。


まだ幼い身でありながら没落気味の家のために顔も名も知らぬ男の下に嫁入りする百合姫に親身になって接し、良い関係を築くことに成功。

彼女からも絶大な信頼を預けられ、東平京までの彼女の護衛を請け負った。


その後、自分たちを囮に鷺宮家の呪いの元凶である八岐大蛇を討伐した匡史たちと再会した際、王毅の尽力で拘束されていたはずの元下働き組の生徒たちが解放され、何事もなかったかのようにどんちゃん騒ぎを繰り広げている様を見て激高してしまう。


タクトから売られた喧嘩を買い、彼を叩きのめした結果、百合姫の結婚相手であるタクトの機嫌を気にする鷺宮家の人々との関係性を悪化させてしまった。


蒼天武士団全体が冷遇される中、それでも自分を慕ってくれる百合姫と共に過ごしていた際、真の呪いの元凶である煙々羅の襲撃を受け、彼女を守るために尽力する。


全ての真相を探るためにこころ、やよい、そして鷺宮家の人々と守り神が祀られていた祠へ向かった彼が目にしたのは、死を目前とした守り神、玄武であった。


玄武(明里)から五百年前の真相を伝えられ、煙々羅の正体が英雄として祀られていた黛龍興であることや、彼と鷺宮真白の死をきっかけにした数々の苦しみを知った燈は、神の力を授けられ、玄武から龍興と真白の魂に安息を与える役目を引き継ぐ。


神器『黒炎龍皇』を用いた戦いの末、圧倒的な力で煙々羅となった龍興を撃破。

彼を迎えに来た真白と共に昇天する二人の魂を見送り、五百年続いた悲しい呪いに終止符を打った。


翌日には神器を使った消耗も回復し、暫しの間、妖の被害を受けた鷺宮領の復興に手を貸した後、未来に向けて進む決意を見せた百合姫たちからの感謝の言葉を背に、昇陽へと凱旋していった。




神器『黒炎龍皇こくえんりゅうおう


鷺宮領の守り神であった玄武こと明里から与えられた神の力の一端。

発動することで左腕に装着される籠手となり、燈に驚異的な力を与える。


純粋に引き出せる火力が跳ね上がった他、明里が有していた神の炎(一度火が付いたら最後、対象を燃やし尽くすまで決して消えない)の力も行使出来るようになっている。


この炎は自然現象を越えた超常的なものであり、物質的なものだけでなく、概念すら焼き尽くすことが出来る。

本来は燃えるはずのない煙や様々なものに宿る呪詛すらも、その効力を無視して焼却が可能。


こういった強力な能力を有してはいるが、最大の弱点としてこれを扱う者に多大なる負担がかかるという点が挙げられる。

超人的な気力と体力を持つ燈をもってしても、最大稼働時間は現時点では五分が精一杯。それ以上の使用は燈自身の命を危険に晒すこととなる。


また、一介の武士である燈が神の力を有してしまったことは、彼の今後に大きな影響を与えることも予想されるだろう。


その強大な力に見合ったデメリットと、責任が伴う能力だ。





【守の型・玄武炎壁げんぶえんへき


黒炎龍皇を用いての守りの技。

左腕の籠手を中心に炎を噴射し、敵の攻撃を防ぐ炎の壁を生成する。


どんなものでも焼き尽くす黒炎の壁の防御力は凄まじく、また、この炎に触れること=焼死を意味するため、防御でありながら勝負を決定付ける攻撃ともなり得る。


単純ながらも能力が強力過ぎる故にチート染みた技になっている。




【攻の型・黒蛇炎葬こくじゃえんそう


黒炎龍皇を用いての攻撃技。

獲物を仕留める蛇の如く、黒炎を纏っての神速の斬撃を繰り出す。


一度燃え移ったら対象を焼き尽くすまで消えない黒炎の特性上、大振りな一撃を見舞う必要は存在しておらず、確実に炎を相手に着火させるための素早さと鋭さを極限まで追求している。


燈自身の剣技+神器によって更に強化された身体能力+触れたら即終了の炎という、相手からしてみればどう足掻いても絶望というほかないチート技その二。





炎皇龍・天地灰刃えんりゅうおう・てんちかいじん


神器の力を借り、燈自身が編み出した秘奥義。


以前から用いていた、『紅龍』へとがむしゃらに気力を注いで大炎を放っての広範囲への薙ぎ払いor振り下ろし攻撃を更に強化したもの。

攻撃範囲は更に広く、刀を振るう速度は限界まで速く、そして技の威力も神の炎を用いて究極まで跳ね上がっている。


気力を注ぎ、刀を振るう。やっていることは非常に単純。

だが、燈ほどの気力の持ち主が、そこに更に神の力を上乗せして放つことで、その単純な一撃が奥義と呼ばれる域にまで達する。


大量の敵を一気に倒す際、あるいは、こそこそと隠れて逃亡しようとする敵を確実に仕留める際に重宝する技であり、燈のこれまでの剣術の結晶ともいえる技。






そう


主役の座を燈に返上し、今回は蒼天武士団の団長として、初めての依頼に仲間たちと共に全力で臨む。


依頼を受けた段階で既にこの裏に何かが隠されていることに感付いていたようで、そのことを考え過ぎることや秘密主義が祟って、副長のやよいから叱られる(お尻どーんされる)こともしばしば。

しかして、何でも一人で抱え込もうとする癖は改善されてきており、自分の責務を全うしつつも仲間たちを頼ることも増えた。


自分たちを頼ってくれた玄白たちが、蒼天武士団だけではなく実の娘である百合姫までもを利用した策を実行していることにもいち早く気付くと共に、彼らのその行いに少なからずショックを受ける。

しかして、そこで挫けたり、玄白たちを見捨てたりもせず、団長としての振る舞いを徹底し、匡史との格の違いを見せつけながら数々の事態に対処、最終的に鷺宮家の呪いの真の元凶が八岐大蛇ではないという事実に誰よりも早く辿り着く。


その後は燈たちが煙々羅の対処法を持ち帰るまでの時間稼ぎを行い、『黒炎龍皇』を手にした燈の壮絶な戦いを見守り、龍興たちの昇天を見届けた。


暴走したタクトを止める際に彼の右腕を斬り落としてしまったことを気に病んでいるようで、事件の終息後に彼が幕府から手厚い治療を受けられるようにと祈っていたが、残念ながらその願いが届くことはなかった。






椿つばきこころ


燈のクラスメイトであり、現在は蒼天武士団の一員として活動中の穏やか正統派美少女。

非戦闘要員ながらも、妖に付け狙われる百合姫の傍で彼女の心のケアを行い、燈たちとの架け橋となるべく奮闘する。


戦いに出ることはなかったが、彼女の発した一言が蒼に気付きの切っ掛けを与えることになったりと、重要な役割を果たしたりもしていた。


百合姫のことは幼いながらも一生懸命に頑張る女の子として尊敬しつつ、妹が出来たみたいだとこっそりお姉ちゃん気分を味わっていたようだ。

強面の燈に怖れを抱かず、大いに懐いて信頼を寄せる彼女のことを、微笑ましく見守り続けた。


……が、最終的に大胆な行動を取った百合姫に対して、若干の焦燥感を抱いていることも確かである。





栞桜しお


猪突猛進。直線番長。暴走上等の巨乳娘。

五章では何だかんだで出番が多く、燈との絡みも三人娘の中では一番多い。


護衛の旅路の際には『比叡』を活かした援護射撃で防衛の要を担いつつ、仲間たちとの連携で見事に百合姫を守り切ってみせた。


また、元下働き組と邂逅した際には燈や親友であるこころを陥れた彼らに対して最も憤慨しており、彼女にとって仲間が如何に大事な存在となっているかがうかがい知れる。


百合姫たちを連れて祠へと向かう際には窮地を燈に救われると共に、暴れ馬の制御が出来なくなった彼の拙い乗馬技術に振り回される。

その際にも気力を使い果たして脱力した自分を燈に支えさせるなど、彼に対する全幅の信頼と純粋な好意を垣間見せた。


なお、やっぱり頭脳労働は苦手。恐らくは蒼天武士団で一番の馬鹿。





やよい


四章の終わりに蒼に指名され、めでたく蒼天武士団の副団長に就任したロリ巨乳。

ああだこうだと頭を抱え、悩んだり立ち止まったりする蒼を尻に敷きつつ、今日も元気にお尻どーんをぶちかます。


五章では武士団随一の陰陽術の知識を用いて蒼と燈をサポート。

守り神の玄武こと、明里を発見出来たのも彼女のお陰。

他にも蒼の推理に必要な情報を提供したり、こころと共に彼に最後の気付きを与える役目も担った。


元は温和だった黛龍興が戦いの中で性格を歪ませていったという話を聞き、思うところがあったようで、少し悩んだりもしている。

が、最終的には「あたしがお尻に敷いとけば大丈夫でしょ!」という結論に達したようだ。


もう暫く、蒼の受難は続く模様。





鬼灯 涼音ほおずき すずね


百年に一人の天才。クール系女流剣士。

今回はポンコツ成分が薄く、戦いでも煙々羅との相性が良かったお陰か前線を張って戦いの中核を担うことも多かった。


その他にもお菓子を好む普通の女の子らしい部分や馬の操縦が出来る器用さ、ちゃっかり燈の正妻を名乗るお茶目さなども披露し、要所要所で影(とキャラ)の濃さを見せつけてくれた。


蒼と同じく、『黒炎龍皇』を発動した燈の動きを視認出来た数少ない人物であり、その点からしても彼女の才覚が再認識出来たであろう。

地頭も良く、勘も冴えているため、鷺宮領で何か妙なことが起きている、ということも蒼に言われる前から何となくは感じ取れてもいた。

幕間ではポンコツだけど、やっぱり彼女は凄いのだ。


大事なことなのでここで述べるが、百合姫よりは大きい。

何がとは言わないが、察してほしい。






学校の仲間たちとその関係者



聖川 匡史ひじりかわ ただし


燈たちが通う学校の生徒会長であり、一つ上の先輩。

前章に引き続いて登場した頭はいいが性格の悪い無能。


銀華城奪還戦で華々しいデビューを飾るはずが、拙い指揮のせいで多くの将兵を無駄死にさせたという汚名を得てしまい、実質的に幕府からも見捨てられてしまう。

悲嘆に暮れていたところにとある人物から助言を受け、新たな武神刀を得たタクト

と新生した大和国聖徒会を結成。

かつて燈を陥れた罪で幽閉されていた元下働き組の生徒たちを解放し、自身の配下として引き込む。


その後、協力者の手引きによって呪いについて相談しに来ていた玄白と邂逅し、八岐大蛇の討伐と引き換えに百合姫をタクトの側室として迎え入れる約束を取り付け、その依頼の裏で蒼天武士団への復讐を目論み、暗躍。


百合姫と玄白を彼らに護衛させ、それを囮として八岐大蛇の意識を向けさせている間に奇襲を仕掛け、見事に討伐を成功させる。


だが、彼が倒したのは玄武の半身である四体の蛇の部分だけであり、亀の部分は息も絶え絶えになりながら生き延びていた。

更にその玄武が呪いの元凶ではなく、鷺宮領を守護していた存在であったため、真の元凶である煙々羅の暴走を招く事態となってしまう。


有頂天になっていたところを自分たちが玄武にしたように煙々羅に奇襲され、大和国聖徒会はほぼ壊滅状態になり、タクトも妖に精神を乗っ取られ、蒼によって鎮圧される事態に。

またしても自分の不始末を蒼に尻拭いしてもらう羽目になった屈辱に耐えつつ、その後は生き残った聖徒会メンバーと共に自身の命だけを優先した行動を取ったことが仇となり、領民たちからの不況を買ってしまった。


蒼天武士団の手で事態が解決した際には、その責任を追及されることを恐れてそそくさと夜逃げをするかのように領地を脱走。

タクトの腕を斬り落とした蒼へバッシングを行うことを目論みつつ、東平京へと帰還しようとするが――?





黒岩くろいわタクト


燈の元クラスメイト。冴えない風貌のオタク男子。

三章にて、チート能力を得たことによる高揚感のままに好き勝手に行動していたところをやよいに叩きのめされ、自信を喪失して引き籠りになっていた。

再編された王毅軍にも加わらず、無為に時間を過ごしていたところをとある人物によって匡史と巡り合わされ、更に強力な武神刀『黒雷』を譲られたことで再起する。


折られた心が復活したせいか、性格は更に図太く女性に対する欲望を隠さないようになっているが……実はこれ、『黒雷』による精神の干渉を受けた結果である。

この事件の裏で真に暗躍していた人物の目的を達成するための駒として扱われていたことも露知らず、異世界転生ものの醍醐味であるハーレムの設立という欲望を引き出された彼は、手始めとして百合姫をその一因にしようと目論み、行動を開始した。


匡史の策に乗り、自身に苦渋を味わわせた蒼天武士団を囮として八岐大蛇を討伐するが、そこが彼の絶頂期。

戻ってきた百合姫からは自身の行動の悪辣さのせいでドン引かれ、クソヤンキーとして見下していた燈に叩きのめされたことで精神が不安定な状況になってしまう。


まんまと黒幕の思い通りに動かされた結果、燈や蒼に対する嫉妬心に反応した煙々羅からの精神感応を受け、暴走。

自身の肉体や生命力を無視して暴れた末に蒼によって右腕を落とされることで鎮圧され、意識を失う。


その末に、剣士としては再起不能になるレベルの肉体へのダメージを受け、自身の思い描いていた異世界生活どころかまともな生活を失ったことによる絶望で精神が崩壊。

最終的にはぶつぶつと独り言を繰り返すだけの状態に陥ってしまった。




依頼人


鷺宮家の人々


今章の依頼人。当主である玄白とその妻、菊姫。長男の雪之丞と長女百合姫の四人家族。

元はそこそこの繁栄を誇った貴族であったが、八岐大蛇の呪いのせいで徐々にその栄華も薄れ、今では立派な没落貴族と化してしまっている。


その現状を打破すべく、玄白が幕府に事態の打破を相談しに行ったことが事の始まり。


引き合わされた匡史とタクトに自身の娘である百合姫を差し出すことで八岐大蛇の討伐を請け負ってもらい、更に異世界の英雄と深い関わりを作ることで家の再興を図る。

が、しかし、タクトと匡史の性格を目の当たりにしたことで、玄白は彼らに百合姫を差し出したことを後悔してもいた。


妻の菊姫と長男の雪之丞もまた、タクトたちの機嫌を取りながらも本当にこれでいいのかと疑問を抱いていた模様。


最終的に全ての真相を知り、五百年前から続く悲しい呪いが正しい形で潰える様を目撃したことでこれまでの自分たちの思い込みと行動を恥じ、改心。

タクトたちからの婚約破棄もあり、自分たちの力だけで鷺宮領を復興させると決意を新たにして再出発を果たした。




百合姫


鷺宮家の長女にして、今回の護衛対象。

五百年前に鷺宮家の初代当主となった鷺宮真白と瓜二つの容姿を持つ少女。


真白を付け狙う八岐大蛇によって、領地を出ると襲い掛かられるという呪いを受けており、それを承知で自身と婚約した男性への挨拶へと赴く。

まだ小学生ほどの子供だが、貴族の娘として自身に与えられた役目を理解し、それを全うしようとする責任感を持ち合わせている。


彼女の性格が非常にまとも(というより聖人レベル)であることを見れば、親や兄の教育が誤っていないことが理解出来るだろう。

今回の事件では悪い面が目立ったが、玄白たちも普段はまともな人間だという証明である。


強面だが心優しい燈の性格に気付き、自分を気遣ってくれる彼に信頼を置き、その信頼は危機を救ってもらうごとに大きくなっていった。

タクトと邂逅し、その悪辣な性格を目の当たりにしても妻として彼を立てようとする辺り、やはり自身の立場や役目を理解し、それを果たそうとする責任感はかなりのものであるといえる。


彼女の持っていた御神体と鷺宮真白からの呼びかけが蒼の推理の後押しをする材料となったことから考えても、今回のキーマンは間違いなく彼女であろう。


事件の解決後は鷺宮領の復興と今度こそ正しい歴史を後世に伝えるという目標を胸に、新たな歴史書の作成を開始。

灯火伝記あかりでんきと名付けられたそれを執筆し始め、同じ名を持つ武士と守り神の活躍を記した。


なお、燈との婚約を望む気持ちは決して冗談ではないらしく、将来的には三人娘の大きなライバルとなる可能性がある。





その他の人物


鷺宮 真白さぎみや ましろ


五百年前、鷺宮領を作り上げ、初代当主となった女傑。

幼馴染である黛龍興との婚姻の日に嫉妬に狂った八岐大蛇に連れ去られ、その封印と引き換えに龍興共々命を落とした……。


……と、言い伝えられていたが、真相は真逆。

戦いに駆り立てられてしまった龍興との結婚を怖れ、その相談をしに守り神の下に向かった際、自身を追ってきた龍興と遭遇し、行き違いの末に龍興の暴走を招いてしまう。


守り神である玄武に斬りかかった龍興を止めようと間に入った結果、彼の凶刃に貫かれ、死亡。

以降は魂だけの存在となり、怨念となって守り神への復讐に固執する龍興のことを五百年間ずっと待ち続けていた。


自分のために変わっていった龍興のことを支えることも止めることも出来なかったことを悔いており、その後悔と彼への愛を胸に、妖へと堕ちた龍興を止めてくれる誰かを待ち侘び続け、五百年目にして遂にその日が訪れる。

燈との戦いに敗れ、彼の計らいによって死にゆく龍興とようやく対面出来た真白は、後悔に泣きじゃくる彼を抱き締め、共に天へと還っていった。




黛 龍興まゆずみ たつおき


五百年前、真白の片腕として働き続けた男性。

彼女の幼馴染にして、想い人である。


想いを通じ合わせた真白と婚姻を結び、夫婦となるが、その日に行き違いの末に誤って彼女を殺害してしまう。


そして、彼もまた愕然としていたところを激高した玄武によって殺害され、嫉妬と憎悪の感情が自らの肉体を焼いて出た煙に憑依した結果、神の炎の力を持つ煙々羅として復活してしまった。


以降、五百年間もの間、真白とそっくりの容姿を持つ鷺宮家の女性たちへの執着と守り神への復讐の機会を伺い続け、襲撃を繰り返した……というのが、八岐大蛇の呪いの真相である。


元々は心優しく、真に真白の理念を理解していた人物でもあったのだが、度重なる戦いの末に弱い者は全てを奪われるという強迫観念に駆られてしまうようになり、真白や大切な仲間たちを守るためには強くなるしかないという過激な思想に支配されてしまった。


歯向かう者への処断や、専守防衛ではなく自ら敵を粉砕するための軍力を求めるようになった彼と平和を望む真白の間には徐々に溝が出来上がっており、それを認知出来なかったことが後々の悲劇を生み出す結果となった。


百合姫と燈の呼びかけによって一時的に正気を取り戻した際、自分の行動が間違っていたことやそのことに対する後悔の弁を述べている。

しかして、憎しみと嫉妬に突き動かされる妖と堕ちた宿命を止めることは出来ず、その感情のままに自身を止めようとする燈に襲い掛かった。


最終的には、玄武の力を授かった燈の前に敗れ去り、全身を炎に焼かれる中、五百年ぶりに真白と再会。

これまでの行動を彼女に謝罪し、彼女もまた自身の罪の告白を行い、互いを許し合い、愛を確認し合ったことで憎しみの感情から解き放たれ、魂の安寧を得ると共に、彼女と一緒に天国へと旅立っていった。





明里あかり


鷺宮の里を守護し続けた守り神。その正体は四神として名高い玄武。

跡目争いに負け、僻地の守護を担当するという役目を与えられて腐っていたが、幼少期の真白と出会い、彼女の夢を聞いたことと彼女から明里の名を与えられたことで個を得た。


以降は真白を見守りつつ、必要に応じて人の手ではどうしようもない災害から鷺宮領を守り続け、守り神・明里としての自分を認識するようになる。


自分自身に生きる目的を与えてくれた真白には深い感謝を抱いており、同じく与えられた名前も心の底から大事に思っている。

だが、しかし……そうやって得た感情が、愛が、真白と龍興の命を奪う切っ掛けにもなってしまった。


怒りのままに龍興を殺めてしまったことに責任を感じ、彼が煙々羅となって蘇った原因は自分に在ると考え、以降は彼を倒し、その魂に安息を与えるべく、また、彼の魔の手から真白と龍興自身が愛した鷺宮領を守るために、煙々羅との戦いに身を投じる。

しかし、誤った伝承が広まった結果、自身の正しい姿すらも理解していない領民たちから妖であると思い込まれてしまったため、守り神としての力を発揮するための信仰心を得られずに弱体化してしまう。


それでも五百年もの間、龍興を止めるべく戦い続けたが、力が弱まったところを大和国聖徒会によって襲撃され、半身を象る四体の蛇を斬り殺されてしまう。

何とか亀の部分は生き延びたが、その命は風前の灯。

最後の力を振り絞り、燈たちに五百年前の真実を伝え、その力を託した後、光の粒となって消滅した。


自身の力の後継者として燈を選んだ理由は、彼と魂の在り方がよく似ているから。


仲間たちから爪弾きにされたアウトローであったり、人との関わりが苦手な不器用な性格であったりと、類似点が多く見受けられる。

その中でも最大の共通点は、自身の名前を大事に思っていること。

同じ『あかり』の名前と、そこに込められた想いや経緯を深く理解し、大切なものとして胸の内に抱いている彼の魂を見初め、その正しさを判別した上で自らの力を託した。


自らの力を受け継いだ燈が龍興と真白の魂を浄化したことも感じ取っており、彼もまた長年の苦痛から解き放たれ、ようやく安息を得た。

こうして、三者の魂が救われたことで、五百年もの長きに渡って続いた呪いは終焉を迎えたのである。





















最凶の武士団


エピローグに登場。

東平京へと帰還しようとする大和国聖徒会の生き残りの前に姿を現し、煙々羅の力を吸った『黒雷』を回収した上で彼らに自分たちの目的を告げ、用済みとなった匡史たちを始末した。


今回、登場したメンバーは……

三章でも登場した謎の女、瑠璃るり


登場した中では唯一の男性にして、好戦的な性格をしている永人えいと


大鎌を振るう京都弁の少女、屍姫しきとどこかギャルっぽい口調の薙刀使い亡姫なき


の四名。

この名前が本名であるかどうかは不明であり、異空間に続く入り口を生成出来る能力を持つ瑠璃以外のメンバーの武神刀の力も不明。


幽仙の指示で大和国聖徒会を屠り、妖刀の材料として回収した彼らの口からはなる人物の存在も示唆されており、また新たな計画が動いていることが予想される。


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