第四章 風雲、銀華城!

プロローグ ~誰にする?~

「決めなきゃいけないことがあると思うんだけど」


 そう、仲間たちが集う部屋の中で話を切り出したやよいへと全員の視線が集中していく。


 本日は武士団を設立してから初めて行う会議の日。今後の活動方針を決める、大事な話し合いを行う場面だ。


 結成した武士団はあくまで弟子たちのものという天元三刀匠の意見の下、燈たちは師匠抜きでの武士団の運営を任されていた。

 なので、当然ながらここにいるのは宗正たちの弟子である五人に裏方の業務を一手に引き受けるこころを加えた六名だけである。


 一応、こうして集まったからには話し合うべき内容も決まっていた。

 そのことについて話そうとした面々がそれとは全く関係の無さそうな話を急に切り出そうとしているやよいに訝し気な視線を向けると、彼女は一息ついてから決めるべき重要な事項について話し始める。


「あのさ、武士団を結成してから放置してたけど、肝心の武士団の名前ってどうするの? 最強の武士団、なんて安直で恐れ知らずな名前を堂々と名乗るわけにもいかないでしょ?」


「……言われてみればそうだな。俺たち、武士団を結成したはいいけど、そういうことについて全く話してなかったわ」


「まあ、確かにやよいさんの意見は尤もだ。体裁が整ってない状態で動くのもみっともないし、名前くらいは決めておこうか」


 武士団の名前、という自分たちの顔にもなる重要な事柄を今まで決めていなかったことに気が付いた一同は、そこで初めて頭を捻り始めた。

 取り合えず武士団を結成したまではいいが、そこから先のことは何も決めていなかった自分たちがそれなりに浮ついていたということを自省する中、再びやよいが手を挙げると更に意見を口にする。


「名前についてもそうだけどさ。もっと大事なことがあるでしょ? というか、そっちを決めれば自ずと武士団の名前も決まると思うんだけど」


 何か意味深なその言葉に燈は眉を顰めるが、仲間たちの中にはやよいが何を言わんとしているか判っている素振りを見せるものもいた。

 蒼と涼音という、勘の鋭そうな面々が何処か納得したような表情を浮かべる中、自分同様に鈍い側に入る栞桜はもったいぶったようなやよいの態度に痺れを切らせ、直球の言葉で彼女へと尋ねる。


「おい、なんなんだ? その決めなければならないことというのは? お前がそこまで言うのなら、本当に必要なことなんだろう。さっさと議題として取り上げて、決めてしまえばいいじゃないか」


 親友からの言葉に、軽く頬を搔いてからタイミングを見計らったやよいは、仲間たちの視線が集う部屋の中で、自分たちが真っ先に決めるべき重要な事柄について、全員に問いかけるようにしてこう口にした。


、誰にする?」

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