第29話 俺と彼女の大成長 後編

 さて、ロナのステータスの確認を再開するか。



-----

ロナ・ドシランテ

☆☆ Lv.33

適正:剣士・武闘家・パラディン

<無所属/-ランク>

魔力量:365/365

攻撃:186 防御:139 速さ:93 魔力強度:46

魔法:[フレアータ][トルネーチ][ライト][ハドル]

 ◆:[ハドルオン=バイゼン]

術技:<魔力斬り><波動斬り><火炎斬><疾風斬・改>

   <風波斬><光白斬><光波斬>

 ◆:<月光風斬>

能力:『剣術・3』『武術・1』『風属性強化・Ⅰ』

   『風属性節約・Ⅰ』『食魔補給・Ⅲ』『魔貯蓄・Ⅰ』

   『嗅ぎ上手』『食料見分』

称号:【竜の血筋】【竜の誇り】【ジャイアントキリング】

   【攻略者】【究極魔法習得者】【究極術技習得者】

   【大食嬢】【究極大器晩成】

-----



 パッと見で気になるところは、魔法と術技の項目についている黒い菱形の印だ。


 ただ、だいたい予想はつく。これは称号に書かれていたり、あの猪の戦士が言っていたような、『究極』と呼ばれる特別な技を他と分けて表記したものだろう。

 ステータスカードはその当人の持つ力を誇示するためにあるようなものだ。強い力を分かりやすくしていると考えたら納得がいく。


 次はステータスの数値だ。全体的に前の何倍にも膨れ上がっているが、特に攻撃が186、防御は139とその二つが抜きん出ており、実に前衛職らしいと言えるだろう。


 さらに、さっき手に入れた新装備『リキオウ』の効果で攻撃の値が半数も上げられるとなると凄まじい。正直、ロナのこんな可憐な見た目からは想像もできないが……。



「あむあむ、はむはむ」

「お、お客様、お……お待たせしました、ホーターシェルのバター焼きでご、ございます……」

「ありがとうございます! んふー……さいこう♡」

「はやっ……。あ、こちらおさげしますね……」



 ……うーん、いや、やっぱり剛力なのも頷けるかもしれない。

 もし俺達が出会った時みたいに本気で腹を殴られたら、俺の身体は冗談抜きで、爆散しそうだ。


 次に魔法の欄だ。俺が認知していたもの以外に[ハドル]というのが新しく増えている。これは俺でも知っている。補助魔法の基礎中の基礎の一つだ。

 <月光風斬>を使って<風波斬>などがオマケで覚えられたように、[ハドルオン=バイゼン]を使ったから覚えられたんだろう。


 術技の欄にも一つ、<光波斬>という光属性の衝撃波を飛ばす技が増えている。これは猪の戦士との戦いで、二回目の<月光風斬>の使用した時に習得できたと考えるのが自然かもしれない。


 そしてようやくというべきか、俺はその<月光風斬>の詳細を目にすることができた。


-----

<月光風斬>


 魔力を120以上消費して発動することができる。


 消費した魔力を体外から放出し、光属性と風属性の魔法として武器に付与する。また、夜の場合は自然にある光と風も力の一部として巻き込むことができる。


 付与された魔法の強さは、消費した魔力量、術者の魔力強度、取り込んだ自然現象の量によって変化する。


 その後、武器を振ることで、纏った魔法を風属性と光属性の衝撃波の術技として放てる。放たれた衝撃波の威力は術者の攻撃の数値を参照して上昇する。


 また、使用者本人が決まった動作をとることにより衝撃波を特殊な形状のものに変えることができる。

 

 そして衝撃波が通過した物体と、衝撃波の消滅地点に、魔法扱いの爆発を起こすことができる。爆発の威力は武器に付与されていた魔法の強さを参照にする。

-----



 この技が、<波動斬り>や<風波斬><光波斬>といった並の衝撃波を撃つ技と違う点は、属性が二つあること、魔力を決められた量より多く注ぎ込めること、自然の力を取り込めること、衝撃波の形状を特殊なものに変えられること、最後に爆発することの五つだろうか。なんというか、てんこ盛りだ。


 今、魔力の量で言えばロナはこれを三発は連続して撃てることになる。無理させるのは嫌だが、いざという時は心強いな。改めて全容をしっかり把握できてよかった。


 さて、今度は現在色々と変化が起きている能力の一覧に目を移そう。

 認知していなかったもののうち……まず『剣術』が『2』から『3』に進化している。そして『風属性節約・Ⅰ』なんてものが新たに増えていた。これらも<月光風斬>を二度放った影響だろうか。


 『風属性節約』の効果は、風属性を含む魔法や術技を使用する際、消費する魔力の量が軽減されるというもの。

 となると、ロナが二度目の<月光風斬>で多量の魔力喪失による不調に耐えられたのは、慣れたからではなく、この能力を直前に習得していたからという可能性も出てくる。


 ついでにロナが俺と出会う前もとから習得していた『嗅ぎ上手』と『食料見分』という能力も、詳細を知らなかったためこの際に調べてみた。

 前者がニオイによる判別や詮索が上手くできるようになるというもの、後者は目の前の物体が食べらるかどうか鑑定できるもののようだ。



「フッ……」

「……? どしたの、ザン」

「あ、いやちょっと。思い出し笑いさ」

「そっかー。もぐもぐ」



 この二つの能力を得たのがいつかは知らないが、昔からロナが今現在のようたご飯をたっぷり食べてきた証拠だと言えるかもしれない。幼いロナが嬉しそうにご馳走を頬張っている姿が安易に想像できて思わず吹いてしまった。


 そして、より明らかにその食べることが関係してそうな能力が、ついさっき手に入れた『食魔補給』か。さらにそのあとすぐ入手した『魔貯蓄』と一緒に見てみよう。



-----

『食魔補給・Ⅲ』


 食事による魔力の回復効率が上昇し、回復量が増幅する。

-----


-----

『魔貯蓄・Ⅰ』


 回復し過ぎてしまった余分な魔力を蓄えておくことができるようになる。本来の魔力が減少した際、即座にこの蓄えからその回復にあてられる。

 現在の貯蓄量:183

-----


 

 魔力というのは、ポーションや食べものから直接取り込む他、瞑想や睡眠、入浴など、主に精神的に安らぐことでも回復することができるというのは、本で読んだことがあるので知っていた。


 その物体的な摂取と精神的な癒し、両方を満たせる手段である「食事」という行為で、より魔力を回復しやすくさせる効果を持つのが『食魔補給』でというわけだ。そしてその補給で大量に生み出した魔力を貯めておける保存庫が『魔貯蓄』なわけだな。


 まさにロナのためにある能力だと言える。実際、今現在既にロナの魔力が全回復しているしな。今まで手に入れてなかったのが逆に疑問に思うぜ。


 まあ、おおかた、大食いしててもそれを魔力の回復に活かすことがステータスが低過ぎてできなかったから、今まで能力として獲得はできなかった……ってな感じなんだろうが。



「ね、ザン」

「おお、どうしたんだいレディ」



 ロナが話しかけてきたので、目線を彼女の方に移した。ナプキンで顔を拭きながら幸せそうにニコニコしてる。すっごくかわいい。……ああ、空の皿がテーブルの上に山を作っているなぁ。



「お腹いっぱいになったよ、待っててくれてありがと! あと、ご馳走してくれて」

「ああ、どういたしまして。俺もちょうどロナのステータスを覚え終えたところだったんだ。サンキュ、カードを返すぜ」

「そっか!」



 俺がロナにステータスカードを手渡そうとしたちょうどその時、その一覧の一部の文字が変化を起こした。当の本人も驚きの表情を再び浮かべている。



「ザ……ザン……私……」

「ああ、何て言いたいかわかるぜ。悪いがもう一回ステータスを確認させてくれ」


 

 ロナのステータスを改めて見ると『食魔補給・Ⅲ』が進化して『Ⅳ』に、『過分魔増・Ⅰ』も『Ⅱ』になっていた。えっと、コレはつまり、今回の食事が満足できたという解釈でいいののかな?










=====


非常に励みになりますので、もし良ければ感想やレビューやコメント、フォローなどをよろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る