第70話 皇都大教会 リーブス司教

■皇都大教会 司教の部屋 

~第6次派遣3日目~


小役人の壁を突破したタケル達は、やっと司教の部屋へ通された。


部屋の中で銀髪をオールバックにした、いかにも気難しそうな60絡みの男が迎えてくれた。


「ようこそ、勇者殿。私がリーブスです、どうぞお掛けください」


「はじめまして、リーブス司教。スタートスの勇者 タケルです」


「副司教が手間取らせたようで、気を悪くされないように願います」


(あれ? 意外と良い人?)


「いえ、こちらこそ。突然押しかけて申し訳ありませんでした」


「それで、私に魔法を習いたいとは?」


「ええ、司教なら『雷』の魔法が使えると、サイオンさんから推薦されまして」


「『雷』?サイオン殿が? 私を推薦? ですか?」


「何か、違っていましたか?」


「いえ、サイオン殿が私を推薦すると言うのはかなりの驚きですな。サイオン殿は私の兄弟子にあたりますが、あまり親しくはしておりません。率直に言って、考え方が合わないと言った方が良いかもしれません」


(西條が兄弟子? 遅くに入門したのかな?)


「そうだったんですか。ですが、サイオンさんは教皇かあなたしか、『雷』は使えないだろうと言っていました」


「ふむ。そんな風に考えているから・・・。いえ、お話は判りました。ですが、『雷』の魔法は私とて、自由に使えるものではありません。使うためには環境が整っている必要があります」


「環境? ですか?」


「ええ、具体的に言うと。雲がないと雷は出せないと言うことです」


「なるほど、雷雲のようなものがあれば、そこから稲光を出すことは出来ると」


「そのとおりです。天候によるものなのです。それに、使えたとしても特に役に立つものではありません」


(それじゃあ、全然使えない)


「ですから、サイオン殿は『雷』の魔法を研究していた私達をあまり良いようには思ってなかったはずです。あの人は現実的ですから」


(そのあたりが感情のしこりになっているのか?)


「雲から落とす稲光は、実際の雷のように、木を倒したり焦がしたりするのですか?」


「ええ、それは実際の雷が落ちたときと同じ状態になります」


(破壊力は間違いないな)


「勇者殿は誰に『雷』の魔法があると聞いたのですか? 教会でも知っている人間はごく僅かなのですが」


「聞いたと言うか、ある筈だと・・・」


「ある筈・・・、なるほどご自身で想像されたわけですか・・・」


「それが、どうかしましたか?」


「いえ、何でもありません。お知りになりたいことはそれだけですか?」


「教会にある転移の間ですけど、大教会以外には無いのでしょうか?」


「はい、教会では各州都にだけ用意しています」


「北方州都と東方州都にも行きたいんですが、一度だけ連れて行ってもらえませんか?」


「それは、構いませんが一度だけと言うのは?」


「一度行けば、次からは自分で行けるようになりますから」


「エッ!・・・、 すでに転移魔法が使えると言うのですか!?」


「はい、ですからスタートスへの帰りは転移魔法で戻ります」


「・・・そうですか。でしたら、私が後でそれぞれの大司教までお連れします。ですが、その前に、枢機卿へ会っていただきましょう」


(西條さんの話と違って、随分と協力的だな)

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