第33話

「これ?微妙だろ?実はコレ、うちのレストランに来るお客さんが日常でよくしなきゃいけない格好なんだよ。


子持ちの主婦層が多くて、だいたい息子さんだと野球だったりサッカーだったりチームに入ってるんだ。


週末なんか、一日中子供たちに付き合って大変なんだよ。


日焼けも気になるしね。


このクラブを始めたのも、うちのお客さんの大半が女性客だから、女性の気持ちになりきろうと思った為なんだ。


がんばるお母さん、働くお母さん、そして全ての忙しい女性たちを癒してあげたい。


ストレスの多い日常を忘れて、しばし夢の時間を過ごさせてあげたい。


そんな気持ちから林檎の里グループは始まったんだ。


今日は内田君にとって、記念すべきデビュタントの日!


是非私の経営理念をわかってもらいたくて、分かりやすく体感できるようにこのような格好をしてみたんだ。


ま、初めは正直必要に迫られてしょうがなくやっていた感はあった。


しかぁ~し! 


女装し始めると最初の志を忘れるくらい没頭してしまってね、何コレ、化粧って楽し~! 


ネイル、何、何ぃ~自分の手が宝石みたいになるじゃぁ~ん!


女性の洋服って、コーディネイト無限だよなぁ~って…もうその魅力、いや、魔力のトリコになってしまった、という訳だよ。」



藤堂社長は、スポーツチームママの格好で遠い目をして言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る