第19話 ネイル検定 これはまぎれもない真実の愛だ! 内田
「内田ー チョット 頼ミガ アルンヤケド。」
彼女のエマが僕を呼んでいる。
何故かいつも苗字で呼び捨て。
エマはドイツ人で、小学校の頃、父親の仕事の関係で何年か日本に住んでいた。
近所にドイツ人学校もインターナショナルスクールも無かったので、公立の小学校に通っていた。
その頃の楽しかった思い出が忘れられなくて、ドイツに帰った後も、いつかまた日本に来ようと思っていたそうだ。
そして念願叶って大学の時に日本に留学し、そのまま日本で就職して現在に至っている。
小学校の時に住んでいたのが福岡だったので、よくその方言が出る。
しかもいかにも外人がしゃべってます風で。
ほんとは日本人並みにぺらぺらのくせに。
「私、ネイル検定受ケルカラ、内田モデルニナレ!」
ネイル?
モデル?
突然の申し出に戸惑っていると、エマが面倒くさそうに説明した。
「ネイル検定受ケルノニ モデルガ イルンヨ。練習ニモ付き合ッテモラワナ イケンシ、試験ノ時モ一緒ニ来テモラワナ イケンケ、ソンナニ長時間タダデ拘束デキルノ内田シカ オランヤロ! オマエ暇ヤロ!」
内田シカ オランヤロって…どうせ言うなら「あなたしかいないの!」とか、可愛く言えないもんかね、まったく。
とにかくマニキュアなんぞ塗られるなんてまっぴらごめんと、全身で拒絶の態度を見せたが、エマは僕の前に普段の三倍くらいの大きさで仁王立ちにそびえ立って言い放った。
「嫌トハ 言ワセンバイ。」
目の中が白くなっている…。
「ま、俺でよかったら。」
理解のあるスマートな彼氏を装い言ったのだが、エマにはそんなことはどうでもいいようで、吐き捨てるように言われた。
「初メカラ ソウ言エ!」
やれやれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます