滝川木工店

作者 ☆涼月☆

93

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★★★ Excellent!!!

物語は行く当てもなく、路頭に迷っているところから始まる。
身も心も疲れ、眠っていたところを青年に助けられる。この出会いが変わるきっかけとなる――

出会いは人を変えるといいます。言葉通り、物語の登場人物たちに変化が表れますが、それだけではありませんでした。

人のやさしさと強さにふれる温かい物語を読んでいるうちに、私自身にも変化が起きていて、出会う人にやさしくありたいという気持ちがわいていました。

ココロのエネルギーが足りないと感じていたら、ぜひ読んでみてください。人のやさしさにふれることができて、とても癒されます。

★★★ Excellent!!!

孤独な身となった主人公・陽人くんはさながら放り出された植物の種子のようです。
木工店を営む滝川さんの元へ導かれ、雨風に晒され流されてしまうことなく、静かに着生してゆきます。

だからといって、陽人くんは決してただ甘えるだけの寄生をするわけではなく、地に足をつけて自らの軸を立てようとする。
その過程で滝川さんが抱える影の正体を見つけ、向き合うべきものと対峙する勇気を与えてします。(影ができるのは太陽のせいですね)

陽人くんが滝川さんのようなどっしりとした大樹になってゆくのか、美しい花を咲かせる草木になるのか、それは読んだ方だけが想像することのできる未来なのでしょう。

特に太陽が恋しいこの時期、サンルームのようなこちらの作品にお邪魔してはいかがでしょうか。

★★★ Excellent!!!

会社が倒産。
路頭に迷う主人公は木工店の滝川と出逢います。

滝川は忘れられない恋を引きずっていましたが、
他人をいたわる心を持つ優しい男でした。

主人公は滝川木工店のお世話になりながら
優しい人達との縁に恵まれ変わっていきます。
主人公は元々優しかったので皆に愛されます。

滝川木工店が取り扱う仕事には
いつも“優しさ”が詰まっています。

楽しいばかりではなく、切ない場面もあるのですが、
読んでいて爽快感があります。

読むと他人に優しくなれる作品です。

★★★ Excellent!!!

職場が倒産して行き場のなくなった陽人。
彼は偶然出会った滝川に拾われお世話になることに。

彼らを取り巻く人間関係が秀逸。
滝川は悲しい過去を抱えたまま。
陽人は陽人で自分の道がわからず。
しかしそれを支えてくれる人たちの有り難さ。
やがて陽人も滝川も変わっていきます。

滝川が修理するオルゴール、机、ヒンメリなども作品のテーマとなっています。
最後まで読めば太陽と青空を感じることでしょう。

★★★ Excellent!!!

職を失い、路頭に迷っていた牧瀬陽人が出会った滝川葵は、太陽の光のような温かさを持つ人だった。人生どん底だった陽人は滝川さんの家で共同生活をしながら、彼を取り巻く人たちの大切な思い出の品に滝川さんとともに触れていくことで生きる力を取り戻していく。

滝川さんのキャラクターがしっかり掘り下げられており、とても魅力的です。陽人の気持ちで彼に寄り添いながら読んでいました。
依頼主の気持ちを汲んで彼らの思い出の品を再生する滝川さんの心の大きさや豊かさに感心しました。もっと読んでみたいなと思わせてくれる作品です。

★★★ Excellent!!!

背景設定が!丁寧です!
登場人物の生い立ちとか心情が、とても。

はじめましての人と出会う時も、まずは外見の印象、ひとことふたこと話した印象から始まり
徐々にその人のことを知っていきますよね。
少しずつ知っていく中で「あぁ、素敵な人だな」と思う。これは恋にも似た思い。

登場人物の、人のことを思いやる心。
作者様の人柄が表れているようです。

★★★ Excellent!!!

職を失い路頭に迷っていた青年・陽人は、ぶっきらぼうだけれど不思議な魅力を持つ一人の男に拾われて、一緒に暮らすことになります。
そこで少しずつわかってくる、滝川という青年の人となり。考え方、生き方。
物を安易に捨てずに、大切に使い続けていく姿。

二人で進めていく日常の一コマ一コマは、どこをとっても穏やかで温かい。
木の温もりと、人との思い出、大切な繋がりをいつまでも大事にし続ける。
今の若者たちには珍しいんじゃないかとさえ思えるようなシーンがあふれています。

彼らと一緒にいれば、私たちも、いつでも優しい気持ちで毎日を過ごせそうです。
忙しい日々に見落としがちな、大切なものを失わないために。
滝川や陽人と一緒に、色んなものに目を向けて見ませんか。
きっと、心穏やかな時間をゆったりと過ごせるはずです。
しばらく会っていなかった誰かに、会いたくなるかもしれませんね。

★★★ Excellent!!!

読むと元気を貰える現代ドラマ。とにかく主人公の周囲が暖かく、まるで彼が光を集めているよう。陰鬱な描写も悲しい描写もあるけれど、それにより物語の光度が上がっているのが綺麗。

構成も分かりやすく、主人公の行動も素直。ハマってほしいところに、きちんとパーツがハマる感覚は癖になりそうです。抜きんでて『コレ!』というものをフィーチャーしているわけではありませんが、等分に分散された魅力が、それぞれにしっかり存在し、胸の奥がむずむずしました。過去より未来を見据えることが大切だと教えてくれる作品。

綺麗な心を思い出すためのアイテムを、皆さんも是非使ってください。

★★★ Excellent!!!

大切な人を亡くした心の深い傷をどう癒していくか。これは心の再生の物語です。

最愛の彼女を失った若者が、今度は彼女が教えてくれた優しさを、より若い男の子に与えられるようになる。絶望の中にいた男の子は彼に救われ、そして男の子を救うことで、心に痛みを抱えていた彼もまた立ち直っていく。

人は人に傷付くけれど、やはり人を助けるものは人を思う優しい気持ち。一つ一つのエピソードが温かくて、読者は自然と物語に自分も溶け込み、登場人物の気持ちに寄り添い共感します。

最後はとても明るいキラキラした光に包まれた終わり方で、作者様のお人柄がにじみでている素敵な物語です。

★★★ Excellent!!!

とても良質なドラマを読ませていただきました。
真っ先に浮ぶのはそんな感想でしょうか。

主人公はもともと天涯孤独の上に、突然職を失ってしまった『陽人(はると)』君。
偶然に彼と出会い、一宿一飯の恩義をかけたのがぶっきらぼうな感じの大工『滝川』さん。
といっても滝川さんもかなり若く、二人は兄弟みたいな感じでしょうか。

この滝川さん、口数も少なく、ちょっととっつきにくいところもあるけれど、きちんと人のことを見て、人の心を思いやれる優しい人。
そんな滝川さんとの生活の中で、陽人君にもようやく心に余裕が生まれ、平穏な日々が訪れます。
序盤のこの二人の心の交流がなんとも穏やかでいいエピソードが連なります。

そして中盤から滝川さんに関わるキャラクター達が次々に登場し、二人の世界をさらに彩っていきます。
同時に滝川さんにまつわる悲しい過去が明らかにされていきます。

助けたはずの陽人君がまたいい人なんです。
つらい過去にも関わらず真面目で、人の気持ちをちゃんと考えられる優しい青年です。
滝川さんは助けたはずの陽人君にやがて助けられていきます。

タイトルにも書いた傷ついた魂の再生。
これがこの物語の大事なテーマだと思うのですが、その表現やエピソードが見事でした。
さらに滝川さんが大工の腕前でいろんな古いモノ、壊れたものを直していくのですが、それがこのテーマと重なり合い、深みのあるストーリーになっているところも素晴らしい。

描かれていくのは淡々とした日常の光景。
それでもそんな光景がだんだんと太陽に照らされて輝いてゆく。
止まっていた時が流れ出し、音や光景がはっきりと照らし出されてゆく。
読みながらそんな感覚が心に浮かびました。

文章も読みやすく、多彩なキャラクターがとにかく魅力的です。
とにかく心が温まるような素晴らしい作品です。
是非読んでみて下さい!

★★★ Excellent!!!

働いていた場所が倒産し、寮を追い出されてしまった主人公、牧瀬陽人。
路頭に迷った彼が倒れ込んでいると、降ってくる一つの声が。
目を開け、飛び込んできたのは、鍛え上げられた筋肉と、鋭い目つき。
え、ヤクザかな。俺死ぬかも、などと頭の中で失礼なことを並べていたのだが、話してみると……

男性との出会いが陽人の人生を変えていく。
彼の手を取り、歩き出した先に広がる景色は、どんな色をしているだろう。

読んでいると、胸の中にポカポカした感情が流れ込みます。作者様が丁寧に物語を綴り、登場人物たちが心を通わせながら歩いているからでしょう。

大人になるにつれて、どこかに置き忘れてしまった何かを、そっと差し出してくれる。そんな優しく温かい物語です。
ぜひ、みなさんもご一読を。