第67話前半 新しい露天風呂
■■■■ 注意事項 ■■■■
本日掲載分は前半,後半の2部構成です。
後半はR15+指定ですので、15歳未満の方は飛ばして下さい。
読み飛ばしても話は続くようにはなっています。
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「ただいまー。思い切りよく買ってきたぞ」
「なら次は僕の番だね」
俺は再びゼノアへ逆戻りという訳か。
今度はフィオナと2人で。
「場所は昨日の木材屋の近くでいいのか?」
「一般向けに売ってくれて仕事が早いのはあそこだね、やっぱり」
そういう訳でゼノアの漁港側、昨日木材を抱えて入った路地へと移動。
店は荷物が無ければ歩いてすぐだ。
「いらっしゃい。あれ、お客さん昨日も来なかったかい?」
気付かれたか。
「ええ。それで今日は追加注文です」
「昨日に比べると短い材料が多い分手間をおかけします」
フィオナがメモを渡す。
店のおっさんはメモを一瞥して頷いた。
「やっぱり良く分かっているじゃないか。これを書いたのは兄ちゃんかい?」
「俺じゃなくてそっち、フィオナです。昨日も彼女にメモを書いてもらいました」
「おっと、お嬢ちゃんの方だったか。こっちの手間がかからないよう良く考えてあるよな。最近の造船屋に爪の垢煎じて飲ませたいくらいだ。全部の注文がこうだったらどれだけ助かるか。お嬢ちゃんは何か木材関係の経験でもあるのかい?」
「父の趣味の関係で材木規格表とか標準材工表が家にあるんです」
「それでも読み込んでなくちゃここまできっちり出せないぞ……ちょっと待ってくれ、今用意してくるからな」
おっさんは奥の倉庫か作業所の方へ入っていく。
もう向こうには声が聞こえないと判断してフィオナに質問。
「それで実際は何故木材の規格とか種類とか知っているんだ?」
「特に意味は無いかな。少しでも使えそうな文献は全部読んでいるだけだよ」
「それって相当な数の文献を収集して読み込まなきゃならないんじゃないか?」
「ある程度読んで覚えたらあとは簡単、増補表なんかを随時確認すればいいだけだからね。週に2回、合計5~6時間図書館にいれば充分かな。それに完全に暗記する必要は無いんだよ。最低限こんなものがあるとわかってさえいれば。必要なら確認すればいいからね」
「でも木材でこれって事は、どうせ他の素材も覚えているんだろ?」
「標準化されている材料は木材に金属に石炭に木炭、大麦と小麦と乾燥トウモロコシ、布地の一部といったところかな。全部あわせてもせいぜい百数十種類ってところだよ」
それを把握しているという訳か。凄すぎる。
何故にそんなものを調べたり覚えたりしているのだろう。
それを聞こうとして、聞く前に答を思い出した。
「確かどんな事をやりたくなっても困らないように、だっけか」
「そういう事。僕の能力には限界があるけれどさ。せめて準備出来る部分に関しては万全にしておきたいよね。でもこれってアシュに言ったっけ?」
「あの生徒自治会室で聞いた気がするな。状況はちょっと思い出せないけれど」
そんな話をしているとおっさんが奥から木材を抱えてやってきた。
「毎度、全部カット済みだ」
「ありがとうございます。おいくらですか」
「今回は正銀貨5枚だな」
「ではこれで」
「まいどあり。またよろしくな」
昨日同様身体強化した俺が材木を抱えて外へ。
「そういえば帆布はいらないのか」
「今回は木組みだけで水が漏れないように工夫してあるよ。寝た時の肌触りを考えてね。だから板材も内側はちょっといいのを使ったし」
「そういう設計とかも何処かで勉強したのか?」
「本を読んでだね。でもお金がかかるから実際に作ったりしたのは独立してゼノアに来てからだね。僕の部屋にはいくつか試作品があるよ。椅子とかテーブルとか」
なるほど。
先程の路地に入って誰もいないのを確認して移動。
露天風呂横に到着して板材をおく。
「寒い寒い。そうだ僕の分のテイクアウト、まだ買っていないよね」
魔法でゼノアの自宅に戻り、歩いて『
フィオナはテディ達ほど選ぶ時間をかけなかった。
「迷ったときはよく見てみて、他とかぶる部分が無ければ基本的に買いだよね」
そのせいで量はとんでもなかったけれど。
俺までトレーを持たされた位に。
◇◇◇
食事して作業して2時間経過。
皆さん露天風呂を楽しんでいる。
今日は普通の露天風呂だけではない。
寝湯3人分と座湯2人分が加わった。
寝湯はその名前の通り寝て楽しむお湯。
頭のところが少し高くなっていて、あおむけに寝れば顔部分以外がいい感じにお湯に包まれる。
座湯は椅子が湯につかったような形だ。
つまりゆっくり背もたれにもたれた形でお湯に浸かる風呂。
座り方と背もたれの調整次第で湯に浸かる高さを調整可能。
新しい露天風呂はフル回転状態だ。
ただ健全な男子の目には優しくはない。
座湯はまだいいけれど、寝湯はちょっと流石に……
結果として俺は今までの露天風呂の隅で地蔵と化している。
なら露天風呂ではなく内湯に居ればいいじゃないかと言われそうだが、この快適さには抗しきれないのだ。
「この露天風呂、あの家に持ち帰れないでしょうか。大きい浴槽は無理としても、3階のベランダなら寝湯と座湯と普通の浴槽サイズなら置けますわ」
「でも家のベランダ、そこまで重いものを置ける設計じゃないと思うな。調べていないけれど普通はそんな設計しないしね」
「残念だな」
「でもアシュにここに連れてきてもらえばいいだけだよね。移動魔法があるし少なくともこの冬の間はここは他に使う人もいない筈だしさ」
「そうですわ!」
つまり俺は冬の間、この空間に耐えなければならないという訳か。
俺は他のみなさんに気づかれないよう、小さくだが深いため息をついた。
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