第70話 恵とゲーム
イチレイの海老ピラフを食べ終えた俺は、ソファで寝そべる恵さんを見下ろした。
うつ伏せで足をパタパタさせてゲームに熱中している。膝丈ほどのプリーツスカートも、太もも辺りまで
……胸は夏凛が上だが、お尻の大きさは恵さんに軍配が挙がる、か? てか、裾を詰まんで少し上に引っ張れば見えるんじゃないか? そんな邪悪な考えが
「俺もソファでゲームしたいからさ。端に寄ってくんない?」
「あ、ごめんごめん! ──んしょっと、ほら、どうぞ」
空いたスペースに座る。俺と恵さんはソファの両端に肘を掛けてゲームを始めた。
「今日はドラゴクルガの討伐にチャレンジだったよね?」
「そうだ。このモンスターを倒せるかで初心者か中級者かに分けられる。それにさ、初ドラゴン種だぜ? 胸踊るだろ!?」
「そっか! ドラゴンだ! うん、踊る踊る!」
ドラゴンに興味を持ってくれたのか、恵さんは少しはしゃいでいる。うん、本当の意味でも胸が踊ってるな……全く、目のやり場に困るじゃないか。
ポスンと再度ソファに座り、恵さんはゲームに没頭していく。
ゲーム内では恵さんのキャラクターであるメグがドラゴクルガと戦闘を始めた。
「わぁ~!」とか「きゃー!」とか表情豊かに叫んでいる。
そんな恵さんを見ていたら、こちらをチラチラと見て言った。
「ちょ、ちょっとー。あたし見てなんで笑ってるの? なんか変なこと言った?」
「布教活動ってわけじゃないけどさ。俺の好きなものを恵さんがするってさ。なんか良いなって思ったんだよ」
「そりゃあ、最初は不純な動機だったけどさ。面白いんだから仕方ないじゃん……」
「不純?」
「べ、別にいいから! ほら、黒谷、サポート止まってる! 動いて動いて!」
俺は銃での支援を再開する。恵さんに当たってもダメージは無いが、動きは止まる。その瞬間にモンスターからの大ダメージを受けたら、間接的なプレイヤーキルになるから気を付けないといけない。
足に炸裂弾を当ててドラゴクルガを転倒させる。その隙にメグが頭部に大剣を振り下ろす。
ドラゴクルガはそのまま動かなくなった。つまりは討伐成功というわけだ。
「やったね! いえいっ☆」
──パシンッ!
ハイタッチして、テーブルに置いてあるジュースを口にする。その間、恵さんはゲーム画面を操作しながらモジモジしていた。
「黒谷……画面見て」
「ん? わかった」
画面に目を向けると、メグが俺のキャラに抱き付いていた。しかも2人の頭上にはハートのエフェクトまで出ている。
なんだこの機能、俺は知らないぞ?
「これ、どうやった?」
「黒谷って戦いにしか興味ないんだね。これは、ほら! 課金ってやつですよ! 色々調べてたらこういうのもあったからさ、買っちゃった」
ゲーム内ではキャラ同士が今もイチャイチャしてて、キャラが恵さん寄りに作られてるからちょっと気恥ずかしさを感じてしまう。
「さて、あたしもポテチを食べよーっと。──キャッ!」
恵さんが立ち上がろうとして、何故かこちらへ倒れ込んできた。
「……」
「……」
至近距離に顔があって思考が停止してしまう。瞳はじーっとこちらを見据えていて、流れるようなゆるふら茶髪から漂う、シトラスの香りが鼻腔をくすぐる。
何か声を出さないと。俺はなんとか言葉を振り絞った。
「剥ぎ取り……しないと」
「そうだね。制限時間、あるもんね」
恵さんは踏ん張っていた両腕を少しずつ曲げ始めた。それと同時に距離が近付いていく。
「ごめん、足が痺れちゃったから……ね?」
先に胸と胸が触れ合う。夏凛に匹敵するその胸部は潰れ、視界のほとんどは恵さんになってしまう。
唇が触れる寸前、恵さんが急に上体を上げた。
「痛ッ! ──イタタタタタタタッ!」
何事かと辺りを見渡すと、黒髪ロングな巨乳美少女が恵さんの足を掴んでジト目を向けていた。
「か、夏凛?」
「はい、夏凛です。部活が中止になって戻って来てみれば、こんなことをしていたとは……」
「あたたたたたっ!」
足が痺れてるのは本当らしく、恵さんはソファの下で今もなお悶絶している。
「兄さんは不純です!」
プイッと夏凛がそっぽを向く。
「夏凛、違うんだよ。俺たちは純粋にゲームをしていただけなんだ。ほら、恵さん足が痺れてちょっと転けちゃったんだよ。夏凛と俺もよくあるだろ?」
俺は夏凛の肩を掴んで必死に
事故とはいえ、恵さんレベルの女の子に至近距離で見詰められたら、いかに俺でもクラっとする。
恵さんだってきっと、本気でキスするつもりはなかったさ。
「この反応見る限り、嘘じゃなさそうですね」
夏凛のジト目も段々と
「夏凛~~! あんたね、あたしの足を思いっきり掴んだわね!」
状態異常・麻痺から回復した恵さんが夏凛に抗議する。
「恵先輩、ごめんなさい。事故とは知らずに掴んでしまって。我が家ではエッチなのは禁止なものでして……」
「あんたと黒谷の日常を色々と聞いてるんだけど?」
「あれは事故ですから。それに兄妹であればスキンシップの範囲です」
「転倒と揉みがセットでスキンシップって、そんなのありえないわ」
「いえ、ですから──」
俺、何故か置いてきぼりにされてる。この後も【どこまでがスキンシップなのか?】という舌戦は続いていた。
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