第70話

更新ミスって67話飛ばしてたので捩じ込みました。







更に10分ほどクラリスニアンの後をついて行った私達でしたが、途中で奇妙なことに気付きます。



「……全っ然モンスターがいませんね」



「そうね、まだ1匹も見てないわ」



「時々ドロップだけ落ちてるのである」



そう、これだけの時間をフィールド内で過ごしているというのにモンスターに遭遇しないどころか視界に入りすらしません。


最初のうちは誰かが通った道だからかと思っていましたが、流石に10分も歩いてずっと同じ道を歩いているなんてことはないでしょう。それに、ドロップが放置されているのも不自然です。



「そもそも彼女達はどこに向かってるのかしら?」



「お母さんの所って言ってましたね」



「ここに来てお母さん追加であるか……」



親権争いでしょうか? だったら即座に手放すんですが。


と、そうこうしているうちに少し開けたところに着きました。座標は……おや?



「今、私達って地下に潜って来ましたよね?」



「そうよ、てけりちゃんも付いて来てたでしょう?」



「であるな」



「確認したら、地下に潜ってるはずなのに座標的には上に登ってるんですが」



「座標……?」



「知らないのであるか? メニュー画面の下の方にあるのである。そしててけりちゃん、そのことは少し前に掲示板で話題になってるのである」



ありゃ、既出でしたか。やっぱり掲示板をもっと確認した方がいいんですかね? ネタバレみたいであんまり好きじゃないんですが。できることなら自分で調べたいところです。



「すみません、掲示板はあんまり確認しないんです。それこそ、今回みたいにシナリオ参加者との合流の時とかしか使わないですね」



「うむ、構わないのである。まぁ、結局理由は分からずじまいなのであるが」



ふむ、理由は未だ不明と。時空が歪んでるとかでしょうか? それとももっと他の理由? 実は上と下が逆転しているとか? そもそも惑星ごとデータがあるなら裏まで行けば座標も反転しますし……。


……いえ、考えていても仕方ないですね。置いておきましょう。



「まあ、シナリオと関係ないなら今は置いておきましょうか」



「であるな。取り敢えず開けたとこに出たことであるし、何がイベントがあると思うのであるが」



この空間は学校の教室を3×3×3で並べたくらいの大きさがあります。探しても他に出入り口は無いようなのでおそらくここが最深部ということでしょう。


ちなみに先程から黙っているミラさんは座標確認中です。


と、王首領さんの言葉に反応したというわけではないでしょうがイベントらしきものが開始しました。



「お母さーん!」



「どこ?」



「私、帰って来たよー!」



突然、クラリスニアン達が口々に叫び出します。ここでの「お母さん」はおそらく、というより間違いなく私達のことではないでしょう。



「お母さん、来るのかしら?」



「なんだか碌でもない予感しかしないのである」



「来たら育児放棄を理由に弾劾してやりましょう」



あと、ついでにその子供を保護したということで謝礼金もふんだくろうと思います。


未だ叫び続けるクラリスニアン達でしたが、何かに気づいたのか叫ぶのをやめ、喜色に満ちた声でこう言いました。



「「「お母さん!!」」」



それと同時に、私たちの耳に何かが聞こえて来ます。



「これは……呪文、かしら?」



「少なくとも日本語ではないのである」



「うわぁ、やっぱりですか……」



それは私がクトーニアンについて調べた際にも目にしたことのある一節でした。



『け・はいいえ ふたぐん んぐふ しゆど・める』



地下の主が、その姿を現した。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る