第68話



私たちはクラリスニアン達に連れられて、妄執の朽ちた果てへとやってきました。


ちなみに、目の潰れた王首領さんのことはクラリスニアンが手を引いて歩いています。それだけ見ると微笑ましいですが、手を引いているのが潰した本人なのが何とも……。



「そう言えば、私ここ来るの初めてですね」



「あら、エイブラハムを倒したのに来たことなかったの?」



「考察材料の山だといって検証班や考察班が狂喜乱舞していたのである」



あー、確かにあのラボとか探索してればいろいろ見つかったかも知れませんね。BYV抑制剤とかも提供した方がいいのでしょうか?いえ、考察班の知り合いは今の所いないので考えても意味のないことではありますが。



「そういえばてけりちゃん、エイブラハムのドロップはどうだったのであるか?」



「ちょっと王首領、不躾でしょ」



「あ、いえ別に構いませんよ? 特に秘匿しているわけでも無いですし、ドロップ品の名前くらいなら教えられます」



まあ、流石に詳しくは隠しますけどね。VRMMOにおける情報の価値は計り知れませんから。


ということで、ドロップ品の名前だけサラッと教えます。



「クラリス・ドートドーター、ねぇ……」



「やはりそれが気になるのである。」



うーん、これは今回のシナリオに関係ありそうですしもう少し細かく教えておいた方が良いですかね。



「クラリスさんはエイブラハムさんが死ぬ直前に私たちに預けてきた、10歳くらいの女の子です。今は植物状態? で寝ています。あと、エイブラハムさんの娘ですね」



「ちょっと待って頂戴、情報量が多すぎるわ」



「エイブラハムって人間だったのであるか」



「ええっと、元人間と言った方が正しいかと」



部分ごとに切り分ければ人間かもしれませんが、あれを人間とは呼べないでしょう。



「えーっと、取り敢えずこれを渡しておくわね」



「では我からはこれを」



「?」



突然、お2人がアイテムを手渡してきます。ミラさんからは種のようなものを、王首領さんからは水晶を渡されました。



「えっと、これはどういう……?」



「情報料である。」



「そんなの要らないなんてナシよ? いくらシナリオクリアのためとはいえ、受け取った側からしたら受け取るだけじゃ悪いもの」



普通そういうものなんでしょうか? 私が貰えるものは貰う浅ましい人間性をしているだけ?


……いえ、これ以上考えるのは止しておきましょう。そういうことなら受け取っておきます。貰えるものは貰う主義なので。



「では遠慮なく」



「ええ、そうしてくれると助かるわ」



「で、あるな」



さて、期せずして情報の共有もできましたしフィールドに入っていくとしましょうか。


妄執の朽ちた果て付近にはそこそこの人がいます。やはり新フィールドだからでしょうか?



「ところで、何でここに来たかったんでしょう?」



「さぁ、ここで見つけたから特に違和感も感じずについてきたのだけれど……」



「ふむ、聞いてみるのである。どうしてここに来たかったのであるか?」



王首領さんが自身の手を引くクラリスニアンに声をかけると、クラリスニアンはキョトンとした顔をした後、こう言いました。



「お母さんの所に帰るため……あれ?でもお母さんはお母さんで……違う、違うの! お母さんは、お母さんは……!!!」



「な、ど、どういうことであるか?」



その時



「一体何が……あら、何か臭わないかしら?」



腐臭とともに



「ホントですね、これは……軟泥の臭い?」



ゴボゴボゴボッ



「「「!?」」」



大量の軟泥が溢れ出し、周囲のPLを襲い始めた。












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