第67話




「キャーッ! (ホラー特有の悲鳴)」



「てけりちゃんってなんか色々器用ね……」



「いや、ショゴスなんで好きに声帯を弄れるんですよ」



「少しは心配してくれませんかねぇ!?」



「「あ、はい」」



痛覚設定を低めに設定しているのか、王首領さんに痛がる様子はあまりありません。しかし、絵面が壊滅的に悪いです。



「これはとんだ地雷少女ね」



「地雷女(物理)」



「誰か我の目を治してはくれないだろうか?」



「お母さん、大丈夫?」



おっとクラリスニアンちゃんよ、実行犯の君がそれを言うのかい?


っと、それよりも王首領さんの目ですね。残念ながら私は回復手段を持っていません。



「ミラさん、私は回復手段無いんですが……」



「私も無いわよ。王首領、諦めて盲目でいくか、デスヒールして頂戴」



「いえ、リアル1時間も待ちたく無いのでデスはやめてください」



「お2人ともなんか私に厳しく無いですかねぇ!?」



いやだってロールプレイで隠しきれない弄られキャラの素質が滲み出てるんですもん。



「ゲーム内ならリアルみたいに弄られずに済むと思っていたのであるが」



「無理ですね」



「無理ね」



「で、あるか……」



さて、王首領さんは放っておいてクラリスニアンの方にかかりましょう。


まずは突然目を抉った理由の考察ですね。



「やっぱり目を抉ったのはサングラスを外したのがトリガーですかね?」



「うーん、そうとしか思えないけど……それじゃあ目を隠していないてけりちゃんが抉られてないのが引っかかるのよね」



「あ、それは装備効果です。この子達に目が認識されなくなるって効果の。」



「そ、そう。随分ピンポイントな効果ね……」



取り敢えずのところはクラリスニアンの前で目を晒すのはやめておくべきでしょうね。現実ほど痛く無いとは言え、痛いことには痛いですし。


ちなみに王首領さんの痛覚設定は5%、私とミラさんはデフォルトの50%です。王首領さんチキンか。


痛覚設定の仕様としては、痛覚を抑えれば抑えるほど代わりに痺れが走って行動を阻害するというものです。任意に100〜1%で弄ることができ、初期は50%に設定されています。



「なんで目を見ると抉るのかしら?」



「さあ、趣味じゃ無いですか?」



「だとしたらとんでもないサイコパスであるな」



抉り出され捨てられた眼球は暫くの間残っていましたが、やがて光になって消えてしまいました。いや、残ってたら怖いのでそれでいいんですけどね?



「お母さん、私あっち行きたい!」



「お母さん、私も!」



「連れてって!」



3人で話し込んでいると、突然クラリスニアン達が同じ方向を指差しながらら口を揃えてあっちへ行きたいと言い出しました。

あっちは……腐敗した聖域跡地の方角ですね。いえ、この場合はおそらく妄執の朽ちた果ての方を指差しているのでしょう。



「……どうします?」



「どうするって……行くしかないんじゃないかしら?」



「で、あるな。」



ということで、私たちは妄執の朽ちた果てへと歩き出しました。









こちらをじっと見る視線のことを忘れたまま。



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