No.2 ゲンブ
「来たか、」
『あなたは……』
ラヴェイラに言われて来たところは、バトルルームという所らしい。
そこで待っていたのは、リザードマンのようなヒトケタだった。
「自己紹介が、まだじゃったな。ワシの名はゲンブ。お前の戦闘強化を担当する。」
『俺、いや私の名はフェルゴールです。よろしくお願いします、ゲンブ。』
「そんなに固くならんでもええわい。名前をちゃんと呼ぶのは、感心するのう。地球人の記憶が戻った当初は、レブキーのことをレブキー 『さん』と、訳の分からん呼び方をしておったからな。」
『そうですね。あとで、レブキーに謝ろうと思います。』
「……そうか、地球人らしい行動じゃの。」
「さて、御託はこれくらいにして……」
ごうっと、ゲンブから気迫が溢れ出す。
「始めようか、の……!」
『はは……』
(これは……すげえ……!)
思わず笑ってしまうほどに、すごい。
それほどまでに彼の気迫は凄まじかった。
「なに笑っとる。言っとくが、能力は使うんじゃないぞ。」
『……はい!』
(来るっ!)
ひゅっ……
ドンッ!!!
音なく消えたと思ったその瞬間(とき)には、もう目の前で一撃を与えようとしていた。
(速すぎる……!一瞬で……!)
「よく、防いだ……!」
『ぎ……!ぐううううう!』
笑みを浮かべるゲンブに対し、既に余裕が無いフェルゴール。
(なんて……力、だ……!)
「ま、防げて当然か……!」
『うお、おおおお!!!』
「ワシ相手に力で競り勝とうなんざ…ふん!!」
ぶっ
ぱぱぱぱぱぱっぱぱぱぱぱっっっっっ!!!!!
目にも留まらぬラッシュがゲンブから放たれる。
『が……!!』
「百年早いわっ!!!!」
(競り負けた上に、何発も……!)
『ぐあっ!……くっ……!』
一瞬意識が飛んだ……
死ぬかも、本当に……
「はよう立て、休むな。」
『っ!』
「どんどん、行くぞい。」
(寝てちゃダメだ……!蹴りが、飛んでくる!!)
そう思い攻撃を仕掛けるも、既に限界が近い。
『あああああああ!!!!』
「ふん!」
(ガードが……)
「はあ!」
ドン!!
ガードが甘くなったところを、ガードごと砕かれた。
『くそっ……!』
「どうしたあ!!」
(考えろ……冷静になれ!俺は何を学んだ、ラヴェイラと戦って!あの時、俺は……!)
戦闘の中で、思考を巡らす。
この状況を、少しでも優位に進めるために。
この無謀な状況な中で、ゲンブに認めてもらうために。
『すぅー……ふうううう……』
「せりゃあ!」
『シッ……』
(無駄な叫びは……)
ぱシィっ!
ばギィっ!
お互いの拳のぶつかる音がする。
『スキを生む、だけぇぇぇええ!』
「む……!」
『ぐぅ……!』
クルクル……とすっ
ドサッ……
相打ちになったが、しっかりと見切ったゲンブは弧を描いて着地した一方で、フェルゴールの膝が落ちた。
「ふむ、相打ちに持ち込んだか。悪くない。」
『はあ、はあ……』
「まだまだ、行くぞ!」
がっ!
ギリギリ……!!
また鍔迫り合いのようにぶつかり、お互いに油断せず様子を見る。
『すーっ、ふーっ、すーっ、ふーっ……』
(競りで息を整えるか……)
「……!」
(腹が、空いとる)
がきっ!
「ぬ……」
(膝で……!)
『そこまで、油断して……ないですよ!』
ひゅっ
その瞬間、フェルゴールの体が宙に浮いた。
ドサッ!!
『がはっ!』
(強すぎる……ラヴェイラの比じゃない……。ここまでの差があるのか……くそっ)
強いのはわかっていた。
だが、ここまでとは。圧倒的だった。
悔しい。
ギリギリと拳を強く握りしめる。
すん……
遠い間合いを一瞬で詰められた
そして
「フン!」
ドッ--!
『が……!』
「立つんじゃ。」
『ぐ……』
すん……
(また……)
ドゴッ……!
「……!」
ドサッ……!
「やめじゃ。このままでは、主が壊れる。」
『はぁ……はぁ……』
何度も放たれる強い一撃に耐えられず、なにもできず食らい、とうとうストップがかかった。
「弱すぎる。」
なにも、できなかった。
「パワーが、足りん。」
ゲンブが俺を見据えて言った。
『はぁ……はぁ…!』
「鍛えるぞい。」
『はい……』
「スピードもじゃ。』
『はい……』
「技術も、実戦経験も、気迫も……」
『要する、に……全部ってことですね……』
「そういうことじゃ。」
『はい、頑張ります……師匠……』
「師匠……か。」
『す、すいません!なんでだろう、思わず…つい……』
「ふぁは!悪くない、響きじゃ。悪くない。」
顎を触りながら、ゲンブはその言葉を噛み締めていた。
「休憩は終わりじゃ!ついて来い!弟子よ!」
『はい……!』
「特訓は……これからじゃ。」
(デベルクがどこまで耐えられるか分からんが、せいぜい鍛えてやるとするかの。)
ゲンブが楽しそうに笑うのだった。
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