第347話

「どうした?そんなため息なんてついて…」


チャートがいつもとは様子の違う息子を心配して声をかけた。


「父さんは…母さんに…触りたいって思った事あった?」


「は?なんだいきなり?」


チャートはクリスの問いに顔を顰めた。


「ああ…いいや。やっぱり忘れて」


クリスはチャートの脇を抜けようとすると


「まぁ待て待て」


チャートにガシッと肩を組まれて捕まった。


「何があったのかな?このお父様に相談してみなさい」


ニコニコと笑ってクリスを見ると


「べ、別になんでもないよ…たださっき…ハルジオンがさ…」


「ハルジオンがどうした?」


「い、いや…なんか急に可愛く見えて…いや元から可愛いとは思ってたけど…なんか笑う顔を見てたら無性に触りたく…って何こんな事…」


クリスは真っ赤になり恥ずかしさのあまり腕で顔を隠した。


「なるほどな…とうとうクリスもか…」


チャートは寂しそうな顔でクリスをみつめる。


「な、何がとうとうなのさ!?」


「いや、これはお前がちゃんと気付くべきだ!ハルジオンの為にもな」


「は?」


クリスが顔を顰めていると…


「クリス様」


スチュアートさんが声をかけてきた。


「あっ、スチュアートさん」


二人で振り返ると…


「あっ!チャート様もお帰りなさいませ…いつお戻りに?」


スチュアートがチャートに気がつくと


「さっきな、ロイ王子にキャシー嬢が来てるんだって?」


「はい、それと…今クリス様にお客様が…」


「僕に?」


「はい、イブさんとおっしゃっておりました…覚えが無いようなら帰っていただきますか?」


「あー…そうか、約束してたっけ…すっかり忘れてた」


「約束?」


チャートがクリスを見ると


「いや、話せば長くなるから…詳しい話は王子に聞いて下さい!僕は用事すませて来ちゃうので…あとスチュアートさん」


「はい」


「ハルジオンを…部屋に寝かせて来たから後で様子見てきてあげてくれるかな?」


「はい、承りました」


スチュアートさんがニッコリ笑って了承してくれるとクリスはほっとする。


「では、行ってきますね」


「あ、ああ」


チャートとスチュアートに軽く会釈して廊下を小走りにかけて行った。


「イブ…って誰?」


チャートはわけがわからずにスチュアートを見ると


「さぁ?しかし向こうはクリス様に気があるようでしたね」


「なんだって!だってクリスは…スチュアートさん聞いてるか?」


チャートは話していいものかスチュアートの様子を伺うと


「はい、クリス様はハルジオン様が気になっているようですね」


「だよな…まぁ人から言われてもクリスだと否定しそうだし…まぁ自分で気がつくしかないよな」


「まぁあの様子でしたらすぐに自覚するでしょう」


二人は顔を見合わせると…


「はぁ…クリスまでなんか大人になってきちゃったなぁ…あんなに小さかったのに、そりゃ俺も歳をとるわけだ」


チャートが寂しそうに呟く。


「こればかりは仕方ありませんね、お茶でもお入れ致します。説明はゆっくりとあちらで…」


スチュアートは笑うと寂しそうなチャートの背中を押した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る