第310話 思い出の丘
ローズとカイルは町を少し散策した後、また馬に乗ってハルジオンから教えてもらった丘へと向かった。
「あっ…ここは…」
カイルには初めての場所だったがローズは知ってる場所のようだった。
「来た事あったかな?」
カイルが聞くと…
「はい、父と母の思い出の場所です」
ローズは嬉しそうにカイルの方に振り返った。
「ローズのお母様ってどんな方だったんだい?」
カイルがローズを抱き寄せて優しく語りかけた。
「母は…強くて綺麗で優しくて…私の憧れです…私は母みたいになりたいです」
「俺からしたらローズは強くて、綺麗で優しくて…可愛くて…十分だけどな…」
カイルはローズを見ながら呟いた。
「えっ?なんですか?」
「いや…素敵なお母様だったんだね。チャート様が好きになる人だし」
「ふふ…父は母には本当に敵わないと言ってました」
「うん、気持ちはよくわかる」
カイルが納得と頷く。
「ここは二人でよく行ったと母が言ってました」
「そっか…そんな大切な場所に来てよかったかな?」
「はい!私もカイル様とここにこれて凄く嬉しいです」
ローズが嬉しいと笑う姿にカイルは愛しくてローズを抱き寄せた。
馬を降りて丘を二人で少し散歩する…ちょうど町を見渡せる所にまるで誰かが用意したかの様なベンチが置いてあった。
「あそこで少し休もうか…」
カイルがベンチを指さすとローズが頷く。
カイルはベンチ自分の上着を脱いで引くとその上にローズを座らせようとした。
「カイル様!大丈夫ですから」
ローズが上着を掴もうとすると
「せっかくハルジオンが用意してくれた服だよ、汚れたら大変だから」
「でも…上着をまだ肌寒いですよ、風邪でも引いたら」
心配そうにすると
「なら、ローズが俺にくっついて温めてくれないか?」
カイルがいい考えだと笑って言うと
「そ、そんな事…」
ローズが恥ずかしいそうに頬を染める。
カイルは冗談だよとローズを引き避けて椅子に座らせると…ローズがモゾモゾっとカイルに近づいて座った。
そして体をピッタリと寄せると…
「あったかい…ですか?」
カイルの顔を伺うように上目遣いで見つめてきた…
カイルはローズの攻撃に全身が熱くなる。
「うん…大丈夫…ホカホカだよ…」
カイルの言葉にローズはほっとしてまたピッタリと寄り添った。
カイルはそんな愛しい人をさらに抱き寄せた。
そんなラブラブチェアーに座る二人を遠くから眺める瞳が無数にあった…
ハルジオンさ二人の仲良さそうな姿に顔が緩むのが止められない。
「よかった…お二人共楽しそうで。皆さん本当に御協力ありがとうございました」
ハルジオンは後ろから見ていた町の人達に頭を下げた。
「いいのよ!本当に久しぶりにいいものを見たわ」
「ええ…なんか昔を思い出した。今日は旦那に優しくなれそうよ」
「じゃあそろそろ出歯亀はやめましょうね。どうもカイル様は視線に気がついてるみたいだし」
みんなは頷き合うとそっと丘を降りて行った…
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