第309話 ご馳走様
「はい!これお土産の分です!これも是非とも食べさせあって下さいね!」
店員さんが笑顔でそういうが…
「すみません、これはお土産なので…でもあげる人にそう伝えておきますね!」
ローズがありがたく受け取る。
「あっ!大丈夫です!いいモノ見せてもらったお礼に多めに入れてありますので必ずまたお二人で食べてください」
店員さんが目を見開いて真剣な顔でローズの手を掴んだ。
「え!そ、そんなの駄目ですよ」
ローズが返そうかとすると
「ありがとう、これはお土産の分も…またよろしくね」
カイル様が後ろからお金を店員さんに渡した。
店員さんがそれを受け取ると確認して驚いた顔を見せる。
「こ、こんなに貰えません!」
「凄くいい接客だったよ、ありがとう。これはそのお礼だと思って受け取って」
カイル様がウインクすると…
「ああぁ……」
店員さんのお姉さんがよろっと後ろに倒れた。
「だ、大丈夫ですか!?」
ローズが心配して声をかけた。
「大丈夫です!この子の発作なのでお気になさらずに~では良いデートを!」
後ろで支えた先輩の店員さんが笑顔で手を振る。
「そ、そうですか?じゃあご馳走様でした…」
ローズは戸惑いながらもカイルと店を後にした。
「美味しかったね、お土産もたくさん貰えたし。また行こうか?」
カイルがニコニコと笑いながらローズの荷物を受け取った。
しかしローズの顔は少し曇っている。
「どうしたの?何か嫌だった?」
ローズの様子にカイルが心配になって顔を覗き込む。
するとローズは眉を顰めカイルを見つめると…
「あんまり店員さんに笑顔を振りまかないでください…」
さすがのローズもあれはカイル様のウインクで倒れたのだとわかった。
ローズの少し不機嫌そうな顔にカイルの顔はさらににやけてしまった。
「くっ…」
慌てて顔を隠すと
「カイル様?」
ローズが覗き込んできた。
「うん、大丈夫…これからはローズにしか笑いかけないから安心して」
「ち、違います!そういう事では無くて、そのもうちょっとかっこいい事を自覚して欲しいと言うか…なんと言うか…」
ローズが顔を赤くして言い訳をする。
「うん、わかってる」
カイルは堪らずにローズのよく動く可愛い口に触れるだけのキスをした。
「……!」
ローズは驚いて口を隠すと慌てて周りを確認する。
見ると町の人達はこちらに気が付かないのかみんな外に出て町を掃除していた。
ローズは誰とも目が合わないことにほっとするとカイル様をグイッと引き寄せる。
「カイル様!こんな町中でそんな事しないでください!」
顔を近づけて文句を言う!
「そんな事って?」
カイルがとぼけると
「キ、キ、キ、キ ス です…」
さらに声を落として顔を真っ赤にすると顔を逸らした。
「わかった、ごめんね。でも誰も見てないから大丈夫だよ」
カイルは顔を近づけて話すローズの耳にそっと近づいて囁いた。
ローズは耳に触れられた気がしてカイル様をバッと見ると…カイルは何?と首を傾げた。
「あれ?…私に勘違いかな…」
ローズはさらに熱くなった耳をそっと撫でた。
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