第285話カイルとデート2

カイルはローズの笑顔に逆らえずいつも部下達と行く馴染みの店に向かった。


そこは女性が入るには勇気の入りそうな雰囲気の店で店主は顔に傷のある強面…客も男ばかりの食堂だった。


店の前に着くまでに何度もローズに問いかけた…そして店に着いてもう一度聞く。


「本当にここでいいのかい?」


「はい、ここがいいです!カイル様って結構執拗いですね…」


ローズがカイルをジロリと見つめると


「い、いや。ここは女性には向かない店だと思うから…」


カイルが渋っているのを無視してローズは店の扉に手をかけた。


カラン!


扉に付いたベルがなると低い声の店主が挨拶をする。


「いらっしゃい…」


チラッとローズを見て女性とわかると二度見した、そして後ろから来るカイルを見てさらに目を見開く。


「こりゃ珍しいお客だな」


可笑しそうに笑うがその顔は凶悪犯のようだった。


「えっと…二人なんだが席あるかい?何なら諦めるよ!」


カイルが聞くと


「奥が空いてるよ」


カイルの淡い期待も虚しくローズは笑ってお礼を言うと言われた奥へと向かった。


カイルがローズの後をついて行こうとすると…


「おいおい、カイル様…どういう事ですか!?」


店主とカウンターに座る常連客が声をかけてきた。


「どういうって?」


カイルが聞くと


「そりゃ女性が苦手でこの方女性と歩くなんて事なかったじゃないですか!」


「そうそう!しかもこんな汚ぇ店に女性連れてくるなんてなにかんがえてるんです?」


「おい!汚ぇ店とはなんだ!そんな店に毎日くるお前はなんなんだよ!」


客に汚ぇ店と言われて店主が怒っていると


「そりゃ男の俺達には居心地いいもんだからな!」


「そうだよ、この店は男同士で来るような店だよな!まさか…カイル様わざと嫌われようとこの店に?」


男達がカイルを見ると


「ち、違う!そんな事しない…彼女がここに来たいって行ったんだ」


カイルもなぜここを選んだのかわからずに首を傾げる。


「まぁそんなわけだからいつもより綺麗な盛り付けで頼むよ」


カイルは店主に手を合わせるとローズの元に向かった。


「はぁ…カイル様長年女性との付き合いがないからね…なんもわからずにこんな店に来ちまったのがねぇ…」


男達は可哀想にと首を振ると


「まぁ今度来た時は慰めてやろう」


だなと男達はチラチラと奥に座ったカイル達を見ていた。



ローズは席に座ると興味深げに店内を見回す。


「やっぱり違う店に変えようか?」


カイルが聞くと


「え?大丈夫ですよ…なんか懐かしい感じがして私は好きですよこの店」


ローズがにっこりと笑うとカイルはほっとしてローズに微笑み返した。


「よかった…」


「私の領地のタウンゼントにもこの店に似た感じの雰囲気のお店がありますから」


「へぇ…そ、それは誰と行ったんだ?」


カイルが気にならない振りをしながら聞くと


「お父さんやクリスとです!領地の様子の確認をしながら…でも絶対に一人で行くなって言われてたんですよね~あの店の料理大好きだったのに」


ローズが思い出したのか頬を押さえる。


チャート様!クリスくん!さすがだ!


カイルは心の中で二人にぐっと拳を合わせた。

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