第269話怪我

ローズ達はカイルとバルトの帰りを待っていると…


「あっ!降りてきました!」


上を眺めていた兵士がカイルの姿を捉えた。


その声にローズは上を見上げると、カイルが慌てた様子で降りてきた!


「どうだった」


ロイがカイルとバルトが無事に帰ってきてホッしていると…カイルの顔が曇った。


「ど、どうした?何かあったのか?」


ロイが心配すると


「すまない、実は一つしか手に入らなかったんだ」


カイルはバルトが取った大きな実をロイに渡すと


「おお…凄いこれなら十分だろ」


気にするとは無いと笑う。


「それともう一つ…こっちの小さい実は…」


食べかけの実を見せる。


「どうしたんだ?もう食われていたのか?」


ロイが聞くと


「いや…バルトが怪我をして…」


「嘘!」


ローズが叫ぶとバルトが心配無いとローズの元に飛んだ。


ローズは両手でバルトを受け止めるとその体を確認する。


「大丈夫?」


心配そうにバルトを見ると


「すまない…しくった…」


済まなそうに耳を伏せる。


「すみません…バルトの傷が酷くて、俺の判断でバルトに実を食わせました」


カイルがロイに謝ると


「それでいい、実と同じようにバルトも貴重で大事な存在だ」


ロイが気にするなと笑うと


「しかし実が一つしか取れなかった…」


「そんなのいいよ!バルトの方が大事だよ…そんな怪我をされてまで治して欲しくないよ!」


ローズが怒ると


「だが…その怪我、俺のせいだから」


バルトはローズの足を見つめる。


「俺を逃がす為に怪我をしたじゃないか」


「それは違うよ!この怪我はバルトのせいじゃなくてあの大臣のせいでしょ!それにバルトの魔法のおかげでだいぶ楽になったし…何も気にすることなんて無いよ」


「でもやはりローズが怪我をしたまま何て嫌だ…」


バルトが顔を伏せた。


「バルト、何を気にする?こうやって実をとって来てくれたじゃないか。約束通り一つはお前とローズの為に使うぞ」


ロイが実をローズに渡す。


「いいんですか?」


ローズが受け取ると


「ああ、約束だからな…その代わりあの約束も頼む」


「はい、皆さんの前で食べるんですね」


ローズが頷くと


「よし、じゃあ早速戻ろう!」


ロイが馬を用意させると…


「ローズ…」


カイルがローズのそばに行くと…これをとバルトの食べかけの実を渡す。


「これは?」


「まだ実があるからバルトにあげてくれ。多分バルト本調子じゃないだろ?」


カイルがバルトを見るとそっと顔を逸らした。


「バルト、無理してるの?」


「いや…普通に歩く分には問題ない」


「それって私と同じじゃない!ほら食べて!」


バルトに実を近づけると


「もうローズもこれから城に戻れば食べられるんだから問題ないだろ、バルト自分を許してやれ…じゃないとローズに怒られるぞ」


カイルが苦笑する。


バルトはローズを見ると眉をあげて怒った顔をしながら実を握りしめて見つめていた。


バルトはわかったと頷くと残りの実をありがたく頂いた。

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