第240話あさましい女

ジュリアは重々しい雰囲気の中、王の間に連れていかれた。


そしてそこで国王様やロイ王子、カイル様を見つけると…


「あっ!もしかして…」


ジュリアは口元を隠してニヤリと笑う。


王の間にみんなが集まり私が呼ばれたということは…


「ジュリア…」


ジュリアのほくそ笑む姿にレスターが悲しそうに名を呼んだ。


「あれ?お父様もいたんだ…って事はやっぱり…」


レスターの表情には目もくれず、笑みをこぼす。

自分の事ばかり考えているジュリアにはレスターの思いなど届かなかった…


「何故笑っている?」


レスターは哀れな子を見つめると


「だってこれってあれですよね?婚約者候補決めの結果じゃないんですか?」


ジュリアはロイに目配せをするとロイはあからさまに嫌そうな顔をする。


「そんな事ではない、今お前の出生に関わる話をしていたんだ」


「出生?」


ジュリアが顔を顰めると


「私はお前の母親と離縁した…もうあの女は妻では無い」


「あっそうなんですか?なら私は?伯爵の娘は捨てがたいですがお父様と住むのは無理です。やっぱりお母様について行こうかな」


悲しんだ様子も見せずに頷いていると


「お前は…私の娘ではなかったんだ」


「知ってました、だって全然似てないもの」


ジュリアはあっけらかんと答える。


「そんな事はどうでもいいです、それよりも婚約者候補の結果はどうなったのですか!?」


キョロキョロと周りを見ると…ボロボロのボストンにも気がついた…


「やだ…あれなんですか?」


汚い物を見るようにボストンを指さす。


「あれはボストン、元大臣だ。そしてお前の本当の父親だ」


「あ、あれが父親?ん?ボストン大臣?」


ジュリアは信じられないものを見るようにボストンを見つめる。


「ジュ、ジュリア…」


ボストンが名前を呼ぶと


「違います。私の父親があんなに不細工なわけないです。ちゃんと調べ直して下さい」


ジュリアはボストンを睨むと違うと顔を顰めた。


「いや、本当だ。先程それを証言する者がいたんだ」


レスターが答えると


「誰!?そんな嘘を言う奴は…絶対に許さない」


ジュリアの顔が歪むと


「許さないってのはなんだ?何かするのか?」


レスターが聞くと


「だって伯爵の娘の私に嘘を言ったんですよ!許される事じゃないわ!今すぐそいつを捕まえて下さい!」


ジュリアの発言にここにいるもの達はみんな呆れた…


「まず第一にもう君は、伯爵令嬢ではない」


ロイはたまらずにジュリアに声をかけた。


「それって…私は婚約者候補から外れるってことですか?」


「お前の頭にはそれしかないのか…」


レスターがため息をついた。


「いいか、はっきりと言っておく。俺は君がもし伯爵令嬢だったとしても、君を婚約者に迎える事は断じてない!」


ロイがそう答えるとさすがのジュリアも顔を険しくする。


「何故ですか!ロイ様はあの時私の事を気に入ってくださったじゃないですか!」


婚約者候補達とのデートを思い出しロイにすがる。


「ああ、あれか。あれは君から話を聞く為だよ、まぁべらべらと色んな事を教えてくれたね。あまりに不快でそれを顔に出さないようにするのに苦労したよ」


ロイがため息をつくと


「酷い…」


ジュリアの瞳に涙が浮かぶ。


「酷い?俺が?」


ロイが驚くと


「じゃあ君は?自分の為に平気で人を使って邪魔をしたり、相手の事も考えずに辞めさせたり、男を落とす為に薬を使ったり…」


じろっとジュリアを睨みつける。


「な、なんの事でしょうか…どれも身に覚えはございませんわ」


先程泣いていた顔はどこへやら…ジュリアは顔を顰めた。

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