第210話スチュアートとカイル

「まさか…ジュリアとのデートを見られていたとかないよな?」


「えーと…」


兵士の戸惑う姿はまさに見ていたと言っているようなものだった…


「なんで一番見られたくない相手に…」


ロイはガックリと肩を落とすと


「ジュリア嬢に嘘を付いた罰かもしれませんね…」


「人に薬を盛るような人間だぞ、しかもカーバンクルの皮を欲しいあまりに王宮にハンターを放つような奴だ、それだけでも幽閉するには十分だと思うけどな…」


「ごもっともです」


兵士が苦笑する。


「それで?ローズの様子はどうだった?」


「すみません…そこまでは私はその場にいたと言う報告しか聞いていませんので」


「ああ、カイルが向かったんだもんな…まぁ帰ってきたら報告と一緒に聞いてみるか…」


ロイはどっと疲れが押し寄せて来ると…


「とりあえず今は休みたい…部屋に戻ろう」


ロイの言葉に兵士は苦笑する。


「はい、ローズ様から頂いたお茶をご用意させますね」


兵士の気遣いにロイは少し疲れが取れた気がした。



少し遡って、不審者を追っていたカイル達は…


「なんか様子がおかしくありませんか?」


カイルは男を追いかけながらスチュアートに話しかける。


「ええ、逃げる…と言うよりはなんだか誘導されているようなきが致します」


スチュアートが頷く。


カイル達は城下を抜けて治安の悪い町外れの方に来ていた…


コソコソと先を急いでいた男が1軒のオンボロの小屋に入ると…


「うーん…なんだか嫌な予感が致します」


スチュアートが眉を顰める。


「こんなところなのに人の気配が数人いますよね…待ち伏せでしょうか?」


「そうでしょう…私達はまんまとここに連れてこられてしまったようですね…これだから、年をとるのは嫌ですね」


スチュアートがはぁとため息をつく。


「どうしますか?一度戻って応援を呼びますか?」


カイルが伺うように聞くと


「いえ…まぁ何とかなる人数でしょう。このまま手ぶらで帰る訳にはいきませんからね、とりあえずここにいる方たちは一人残らず捕まえましょう。何かしら情報を持っている事を期待して…」


「はい」


カイルは頷くと


「私が行きましょうか?」


スチュアートがカイルに聞くと


「いえ、私からサポートの方をよろしくお願いします!」


「はい」


スチュアートは微笑んで頷く。


カイルはスチュアートと顔を合わせると小屋に飛び込んで行った!


ドカッ!


扉を蹴破って中に入ると、数人の男達が顔を隠して武器を手に待ち構えていた。


「あはは!まんまと着いてきやがった!」


男達のうっすらと見えている口元がニヤニヤと笑うと


「お前達に聞きたいことがある、大人しく捕まれば手加減してやるぞ」


カイルが剣を構えると…


「はぁ?この人数が見えねぇのか?どう見ても手加減してやるのはこっちだろうが!」


「全く顔も甘けりゃ考えも甘いのかよ!こんな優男が俺達にかなうと思ってるのか?」


男の言葉に周りにいたヤツらも笑い出す。


「相手は優男にジジイ一人だ…死なない程度に痛めつけろ!」


一人の男が叫ぶと男達は一斉に襲いかかってきた!

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