第208話二人っきり

「さぁロイ王子お茶を飲んでお話しましょう」


ジュリアがロイの前にお茶を置くと


「私がロイ王子の為にお茶を習いましたの…これ私が入れてみました…飲んで頂けますか?」


「ジュリア嬢が?」


ロイは眉を顰めると


「ええ、ローズ様がみんなにお茶を入れてチヤホヤとされてますでしょ?あんな事誰にも出来ますからね」


ジュリアはニコッと笑うと…


「ふーん…」


ロイはカップを掴むと…


「蜂蜜はないかい?少し甘いのが飲みたくて…」


ロイが笑って聞くと


「そのまま飲んで下さらないの…」


ジュリアが不満そうに頬を膨らませると


「君の入れてくれたお茶をそのまま飲むなんて…僕には嬉しすぎて耐えられないよ…」


そっとジュリアの手を掴むと


「わ、わかりましたわ!ねぇロイ王子に蜂蜜を持ってきて差し上げて…」


「いや…君の手から欲しいな」


ロイがジュリアに頼むと


「は、はい…」


ジュリアはぽーっとなりながら蜂蜜を取りに向かった…


ロイはほっとするとおもむろに立ち上がり植木に向かうとお茶を捨てる。


ビクッ!


ジュリアのメイド達が驚いてその行動を見ていると…


「ジュリア嬢に言ってもいいけど信じないと思うよ」


彼女達ににっこりと笑いかけた。


ロイは何事も無いように座っていると…


「お待たせしました」


ジュリアが満面の笑みで蜂蜜を手に戻ってくる。


しかし空になったカップを見ると


「あらロイ王子、お茶は?」


「すみません、あまりのいい香りに我慢出来ずに飲んでしまいました…やはり蜂蜜など必要ないほどに甘かった…」


ロイはジュリアを見つめるとその手をそっと掴んで蜂蜜をテーブルに置く。


ジュリアをそのままソファーに座らせると…


「いや…こんなおもてなしは初めてだよ、ありがとう」


ロイが微笑んでジュリアを見つめる。


「本当ですか?ローズさんより?」


「なぜローズ嬢の名前が?今いるのは君と私だけだよ…出来れば二人きりになれるといいけどね、そうもいかないからな」


ロイが苦笑すると…


「だ、大丈夫です!あなた達!今すぐ部屋から出ていきなさい!」


ローズが部屋にいたメイド達に声をかけると…


「お嬢様…いけません…」


メイドが怯えながらも注意すると


「あなた…名前は?」


唐突に名前を聞きだす。


「す、すみません!今すぐ出ていきます!」


メイド達ジュリアの顔を見ると真っ青になって、サーっと音もなく部屋から出て行った…


ロイは兵士達の顔をちらっとみて頷くと…


コクッ…


兵士達も何も言わずに扉の奥に消えて行った。


「二人きりですね…」


ジュリアがそっとロイに寄りかかろうとすると、ロイがサッと避けながらジュリアに聞く。


「その前に少し話をしよう…君の事を教えて欲しいな」


「私の事ですか?」


「ああ、あの時のダンスをした時のドレスも素敵だったが今日も素敵だね…カーバンクルの毛皮に似てるね…私もあの色は好きなんだ」


「ロイ様もですか!私もです!でもローズさんのせいでカーバンクル狩りが出来なくなってしまいましたからね…」


ジュリアが不満そうに顔をしかめると


「しかし君みたいなか弱い子にカーバンクル狩りは難しくないかい?」


「いえ!それ専用の狩人がいるんですよ」


「へー…そんなのがいるんだ…」


「はい!」


ジュリアはロイの顔色が変わった事にも気づかずにベラベラと話し出した…

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