第195話朗報

隣国からの侵入者のおかげで王宮は物々しい雰囲気に包まれていた…


兵士達はギラギラと気を張って警備を強化している。


案の定婚約者候補達のお出かけは中止となってしまった。



「なんでなのよ!このまま無くなるなんて事はないでしょうね!」


ジュリアは自分の番、手前でお預けをくらい気が立っていた!


ローズを馬鹿にしたのにそれが自分にも回ってくるとわ…ジュリアは母親に愚痴をこぼす。


「このままなくなったらどうしよう…せっかくのこの日の為に合わせて色々と仕上げてきたのに!」


ジュリアが怒っていると


「確かにこのまま解決しない事には先に進まないわね…」


マデリンは窓際に立つと大木を見つめる。


「全く…あれのおかげでえらい騒ぎだわ。あの森に本当にまだいるのかしら…」


マデリンが森を見つめると


「犯人が見つからない限り…先には進まないわね…」


ボソッと呟いた…



捜索を開始して一日も経たずに犯人が捕まったと朗報が入った…


ボストン大臣がしたり顔で報告にやってきたのだ。


「ボストン大臣、隣国の斥候を捕まえたと聞いたが?」


レイン国王が話しかける。


「はい!勝手に私の私兵を動かした事は申し訳なく思いますが…国のピンチにじっとなどしておれず…」


ボストンが恭しく頭を下げると…


「それで?その斥候はどうした?どうも姿は見えないが?」


「それが…捕まえる際に大変抵抗致しまして…無傷…というのは難しく…」


困った顔をしている。


「なんだ、手足の一本でもとったのか?」


「いえ…弓で射ったところ運悪く崖から落ちてしまい…その拍子に首の骨を折りまして…」


「まさか死んだのか?」


レインが目を見開く!


「申し訳ございません…ですが!斥候と言うのは確かです!証拠にコレを…」


ボストンが合図すると兵士が薄汚れた服を持ってくる。


「かの者が身につけていた服にございます」


レインがそばに持ってこさせると確かに隣国の斥候が着る服だった…


「これを身にまとっていたのだな」


「はい!」


「それで遺体は?」


「損傷が激しく…ですが死体置き場に持ってきております」


「確認に!」


レインが指示を出すと側近と兵士達が死体置き場に向かった。


「尋問出来ないのはいたいな…」


レインがつぶやくと


「ですが、いつまでも捕まらないよりかはましかと…」


ボストン大臣が探し回っていた兵士達を見下すように見ている。


すると数人の足音と共に扉が勢いよく開き、斥候を探していたロイやカイル達が現れた。


「父上!斥候が捕まったと聞きましたが!」


入るなりそう聞くと


「ロイ、落ち着け。ボストン大臣の私兵が斥候を見つけてくれたそうだ、今遺体の確認に行っておる」


「遺体?なぜ生け捕りにしなかったのですか?」


ロイはボストンを睨む!しかしボストンは涼しい顔で経緯を話した。


「ですので捕まえられないよりは良いかと…」


頭を下げながらニヤリと笑う。


「それは何処で追い詰めたのですか?」


後ろからカイルが質問する。


「あれは確か…南東の湖畔が広がる奥の崖のところでしたかな…」


ボストンが説明すると


「それはおかしい…我らはあそこは探しましたよね」


カイルの言葉に兵士達が無言でコクコクと頷く。


「それはあなた達の目が節穴だったのでは?」


「それは無い、あそこは隠れる場所も無い。高台から指示を出して端から端まで移動しながら確認をしたはずだ」


譲る気のないカイルが淡々と説明すると…


「知るか…見つけられなかったのはお前らだろう…」


ボストンがボソッとつぶやいた…

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